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テーマ:韓国!(16886)
カテゴリ:映画
京橋のフィルムセンターで
崔洋一監督自選シリーズ開催。 幻のWOWOW版短編「月はどっちに出ている」上映と上映後トークがあると聞いて訪れました。 階段を上って会場に着くと チケット売り場のすぐ横に 崔洋一監督が立っていらして 「ようこそ。いらっしゃいませ」とひとりひとりに声をかけてくださいました。 上映後のトーク前にお目にかかるとは... 心の準備も出来ていなかったのでかなりびっくり。 お客様ひとりひとりを迎えるところから監督自身が対応する、 あたたかさがじんわりと。 さて映画は... 久しぶりに見直して ディテールもいろいろおもしろいなぁとあらためて。 南と北が同席する結婚式で忠男(岸谷五朗)はナンパに余念がない。 女好きには南も北も分断もカンケーなし。 ひとりの女性はスーツを着て現代風なメイク、日本人と変わらない発想の在日コリアン。 もうひとりは民族衣装で結婚式へ参席、 外見だけでなく内面も古風?民族教育に携わる在日コリアン(金久美子)。 ふたつのタイプの在日コリアン女性に果敢にアタックするも どちらにも受け入れられそうにない忠男。 やがてフィリピンから出稼ぎに来ているコニー(ルビー・モレノ)と出会うが... 在日コリアンの男たちは 結婚式場を後にしながら 90年代初期の大型携帯電話で デカい儲け話を繰り広げる金世一(小木茂光)と朴光洙(遠藤憲一)。 騙される者利用される者と 騙す者利用する者のヒエラルキーとパワーゲーム。 そこから一歩距離を置いて冷めた目でいる のんしゃらんな忠男。 のんしゃらん、と言えば オタール・イオセリアーニ/Otar Iosseliani監督。 やはり異邦人は マイノリティの視線はのんしゃらんになるのか、という思いも... 閑話休題。 在日コリアンに偏見を持ち差別する、面と向かってではなく巧妙に差別する狡猾な日本人もいれば タクシーの整備から運転手に上昇したいと考えるイラン人もいる。 帰国事業で北に渡った親族への仕送り品を今日も段ボール箱に詰める忠男の母の日常の風景も。 なんの技能も取り柄もなく いい加減でちゃらんぽらんなだけのような忠男が 衣類と共に送る日本円が無事親族に届くよう 母親が箱の底に入れていた封筒を取り出して より入念に深く、よりわかりにくく隠して梱包しなおすシーンが印象的。 ちゃらんぽらんな忠男が見せる一瞬の誠実さと真剣な横顔には 母をこれ以上泣かせたくない悲しませたくないという親孝行な思いが込められている。 同時に忠男が備える生きる知恵、賢さが伝わる。 サラダボウルのように多民族多文化が入り乱れる、 無国籍な20年前の日本がSlapStickに/どたばたと描かれる。 アメリカにスパイク・リー監督『Do The Right Thing』があれば、 (だいすきな映画。音楽も好き) 日本には『月はどっちに出ている』も。 同じくスパイク・リー『Crooklyn』。 特に 『ドゥ・ザ・ライト・シング』で消火栓を開けて水を撒き散らすシーンが 『月はどっちに出ている』でオマージュされているかしら、と思えるのが クライマックスの火消しのシーン。 自分で火を点けておきながら 「早く火を消せ!」と大騒ぎする世一の自己中心ぶりは 笑わせながらも生に執着し続ける人間の本質、本性を戯画化して見せて卓越。 上映後の監督トークでくわしく聞いて あらためてステキと思ったのは音楽。 ジャズっぽいところ、落ち着いたトーンが Hip Hopな『ドゥ・ザ・ライト・シング』と対照的かも。 篠田昌已ユニットが発展したコンポステラの音楽は アルトサックスの音の背後にファンクやチンドンの陰翳も響かせて混沌としながら越境していく。 越境する映画『月はどっちに出ている』そのもののように。 公開20年でやっと!?DVD発売。 製作当初はプロデューサー氏の案で 『キムチライダー』というタイトルになりそうだったとか。 ...(-_-;) 絶対いや! 即物的すぎるし、ダサすぎる... 『月はどっちに出ている』というタイトルには 月の下を縦横無尽に走るタクシードライバーの情緒と 日本らしい観月の風情がないまぜになった趣があって 日本生まれの韓国人、 在日コリアンだからこその渾沌した情緒が秘められているから。 日本育ちなら 月はどっちに出ている、と夜空を見上げたり 月を看る(見る・観る)習慣や情緒は身についている、 風情は血となり肉となっている。 月観れば 与謝蕪村の句菜の花や月は東に日は西にを想起もし、 その本歌である柿本人麻呂の 東(ひむがしの)の野に炎(かぎろひ)の立つ見えて かえり見すれば月かたぶきぬにまで思いを馳せたりも。 あるいは紀貫之の やまと歌は 人の心を種として よろづの言の葉とぞなれりける も思い浮かぶ。 「タクシー狂操曲」で『キムチライダー』な種が やまとの地でやまと風に『月はどっちに出ている』と風雅な趣をも醸し出すのは 在日コリアンだからこそのミックス感。 WOWOW版は石橋凌が忠男。 ひとによって感じ方は違ってくるかもしれないけれど... 映画版はストーリーも長いし 忠男のしたたかさ・たくましさがじっくり伝わる感じ。 ドラマ版は7分×4回で コニーとのシーンがほとんどのせいか したたかさやたくましさはそれほど強くなく淡泊な印象。 buzz KOREA Click... にほんブログ村 韓国映画 にほんブログ村 映画 にほんブログ村 映画評論・レビュー にほんブログ村 韓国情報 にほんブログ村 K-POP にほんブログ村 Copyright 2003-2025 Dalnara, confuoco. All rights reserved. 本ブログ、サイトの全部或いは一部を引用、言及する際は 著作権法に基づき出典(ブログ名とURL)を明記してください。 無断で本ブログ、サイトの全部あるいは一部、 表現や 情報、意見、 解釈、考察、解説 ロジックや発想(アイデア)・ 視点(着眼点)、 写真・画像等も コピー・利用・流用することは禁止します。 剽窃厳禁。 悪質なキュレーション Curation 型剽窃、 つまみ食い剽窃もお断り。 複製のみならず、 ベース下敷きにし、語尾や文体などを変えた剽窃、 リライト、 切り刻んで翻案等も著作権侵害です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jan 13, 2024 05:50:08 PM
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