Radio GA？ GA？

人間のいる土地はすべて嫌いだ
人間のいない土地を探していた
そういう土地が世界にはまだ残っているはずだし
俺はそこで人間をやめる

そう決めていた

（映画『黄金を抱いて翔べ』の冒頭より）




タイトルの響きと宣伝ポスターのモノクロ感から
『現金に体を張れ』、『現金に手を出すな』を連想してしまいました。
２つとも見てないんですけどね。。

両作品とも古いギャング映画で、
破滅的、閉塞的、退廃的な指向性で１９４０～５０年代、
主にモノクロームで制作されたフィルムノワールと言われる作品の代表作です

フィルムノワール作品の多くは
ファムファタール（悪女）が登場する事も特徴（らしいです）

この映画でのファムファタールは
中村ゆり演じる景子

浅野忠信演じる北川の良き妻に見えます。
キム・ベイシンガーとかレベッカ・ローミン・ステイモスあたりの
ブロンドにタイトなミニスカートという基本を抑えた危険な女、
的な感は少しも見受けられないのですが、
映画の割と早い段階で、妻夫木聡演じる幸田に
色目を使っているように見えるシーンが出てきます

さらに映画の中盤で問題のシーンが出てきます。
金塊強奪作戦の数日前、産婦人科からでてくる景子。
ばったり幸田とあってしまい、
はずかしそうに、
「実は二人目ができて・・・(旦那に)言うのが恥ずかしくて・・・」と。
この時点では何とも思わなかったのですが・・・。

映画のクライマックス

なんとか金塊を強奪する事に成功した幸田と北川。
あとは金塊をキャリーケースに詰めて逃げるだけ。
計画達成を目前にした安堵感漂う2人は、
学生時代の友人がおたふく風邪になったというとりとめもない話をする。

「あの二枚目タケちゃんがおたふくとは形無しだな」と笑い合うが
北川は言う。
「大人になってから初めておたふくやると男は精子が作れなくなるんだって。
笑い事じゃねーけどな。俺も去年やってんだよ。」

幸田の顔が一瞬硬直する。
幸田だけが知ってしまったふしだら景子ちゃん

幼い頃に教会に火をつけ神父を殺そうとした幸田だったが、
その神父は「自分が火をつけた」と幼い幸田を庇ってくれていた事を知り、
また、金塊強奪のミッションで集まった仲間と共にいるうちに
すさんでいた倖田の内面にも変化が出てきていた。

破滅的な人生を歩む北川の弟春樹に対して、
いろんなものを引きずってどう生きていくか、
どう自分を引きずっていくか。

「いらねーよこんな人生と言ったって、
捨てるところもないのが人生だろ」

と、今までの自分を諭すかのように言い
春樹の面倒をみるようにもなった幸田にとって、
退廃したこの世のさらに薄汚れた底に突き落とす事実だった。

再びこの世に絶望した幸田は、
「世界一幸せなウォッカだな」と金塊の入った金庫の上にビンを置き、
西田敏行演じる、皆からじいちゃんと呼ばれる元エレベーター技師の始末に行く。

「金貨は投げ捨てて首を吊る時が来る」

幸田は以前、「あんたと話していたら思い出した」と、
じいちゃんに対して聖書の一部をつぶやいていた。
仲間を売ったじいちゃんに対し
仕事が済んだらあんたを殺すという殺人予告であったと思う。

しかし幸田が向かったエレベーター管制室で目の前に現れた光景は
首を吊ったじいちゃんの死体と傍らの机に置かれた聖書。

聖書の中に一枚の写真が挟まっている。
手にとってみるとそこには神父姿のじいちゃんと幸田の母親、
そしてまだ幼い頃の幸田自身が。

じいちゃんは自分の父親であり、
父親が放火犯の自分を庇ってくれていた事を知る。

映画の予告を見た時は
クライムアクションムービーだと思いましたが、
そういう見方で見るとちょっと期待はずれな作品だと思います。

ただし、人間ドラマとして見ると厚みを感じる作品で、
すさんだこの世の中にも捨てたもんじゃないものがある。
捨てたもんじゃないものが１つあればいいんじゃないかという、
井筒流フィルムノワールなのかな～って感じました。

もう一度映画を見直してみると、
北川が幸田に対して「じいちゃんと同じ事言うなあ」と言うシーンがあるし、
幸田が金庫の上に置いたウォッカはじいちゃんが飲んでいたものと同じでした。





なあ幸田よ。
うまく言えないが、
俺はお前がやっと訪ねてきてくれたって気がするんだよ。
やっと互の顔が見えるところまで近づいた。
よく来てくれたな。
本当によく来てくれた。

俺はうれしいぞ。

なあ幸田よ。

（映画のラストシーン　北川の言葉）


Music Start

ゴールデンボンバーで『Dance My Generation』でした。