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2004.12.23
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「歴史は繰り返す」とよく言われるが、思うに「歴史は一度しかない」というほうが当たっているんではないだろうか。ある偶然、ある失敗が、非常に重要な出来事の流れを決めてしまい、その結果を覆すことはできない。そして、その偶然、その失敗を生きなおすチャンスは二度と与えられない。つまり歴史は一度しかそのチャンスを与えてくれないのだ。

日本はゲノム解読の国際競争に負けた。2003年に発表された、主要国のゲノム解読の貢献度によると、日本はアメリカ、イギリスの次いで3位だが、その貢献度は僅か6%、アメリカの59%イギリスの31%に比べて余りにも見劣りする。

当初先行していたにも拘らず、その後日本はいくつか致命的なミスを犯し、時代の偶然も重なって、最終的には負けてしまった。

アメリカにおけるゲノム解読計画の官民競争については、依然書いた。DNAの二重らせん構造をフランシス・クリックとともに解明した、ジェームズ・ワトソンが中心になって進めてきたアメリカのヒトゲノム計画が、ヴェンターという風雲児の民間からの挑戦で、結果的にはその完成を早められた、という興味深いエピソードだった。

岸宣仁の「ゲノム敗北」には、この間の日本の役割が詳しくかかれてある。当初少なくとも二人の日本の学者が、ゲノム解読競争で先端的位置に立っていたことを明らかにしている。

まず、前理化学研究所ゲノム科学総合研究センター所長・和田昭允(あきよし)。木戸孝允の血を引く反骨の長州人・和田は、すでに1979年頃に、ロボットによるDNAの自動解読を提唱していたのだ。アメリカのヒトゲノム計画が発足したのは1990年、和田のアイデアがいかに時代を先取りしていたかわかる。

「これからのDNAの研究には、塩基配列の大量解読のための技術が欠かせない。コンピュータやロボットを得意とする日本ならば、装置開発で世界に先駆けることができるのでは」と和田は考えた。

このアイデアを元に、1981年からDNA高速自動解読の国家プロジェクト(いわゆる和田プロジェクト)が始まっている。1987年には、DNA高速自動解析についての国際会議を、日本で開催した。

和田プロジェクトは、形の上では10年近く国から予算をもらっていたのだが、90年代を目前にして潰されてしまった。学会内部の確執、そして構想を受け止め切れなかった官僚の理解のなさが、原因だった。和田プロジェクトに対する、当時の批判の例は「そんな装置を作るくらいなら、人間の手でやるから自分に予算をよこせ」、「人が手でやれるのに、何で機械にやらせるんだ」、「ロボットのような機械が、解析の名人にかなうはずがない」といったものだった。

和田の専門は物理・化学を中心にした理工学系、和田に対する批判は主として生物・医学系の研究者から強く出されたという。

今年の5月26日の衆議院文部科学委員会で、小柴昌俊の素粒子ニュートリノプロジェクトと和田プロジェクトを比較して、何が成功・失敗の分かれ道を決めたのか、分析された。

資金補助のメカニズムの違いが一つの要因として挙げられていた。成功した小柴プロジェクトは、旧文部省の予算で、資金は旧文部省から東大、技術協力する浜松ホトニクスに流れた。仕組みが比較的単純で、小柴が主導する体制ができていた。

失敗した和田プロジェクトの場合、旧科学技術庁の科学技術振興調整費でまかなわれ、和田は当時東大教授で、調整費は大学に直接流れなかった。理化学研究所を受け皿にしたため、理研の発言権が大きくなり、和田の主導から外れるようになった。(予算の出所はその後、がん特別研究費に移った。)

(詳しくは、質疑応答の全文かそのまとめを参考にしてください。)

しかし、和田プロジェクトが頓挫した一番大きな原因については、和田の次の言葉がすべてを語っている。「・・・私のプロジェクトが結果的に潰されたのは、彼らが(官僚が)物事の重要性を理解できなかったと言う一点に尽きると思う・・・日本人には独創性がないと言われるが、独創性がないのではなくて、予算一つとっても独創性の芽が摘まれてしまう仕組みに問題がある。」

(この稿続く)

参考
岸宣仁 「ゲノム敗北」(2004年 ダイヤモンド社)





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最終更新日  2004.12.25 02:01:30
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