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カテゴリ:【エッセイ】パリの空の下で
テレビで報道される「計測された放射能は人体に影響はないそうです」という言葉を聞くと、「そうじゃない」と言いたくなります。
想像してください。 震度6度強の大地震に見舞われ、その後30分も経たないうち10メートルを超える津波に襲われました。そして、自宅や家族の安否の確認もできないまま、原発問題が発生が発生しました。 突然大地震が起きて、津波警報がでました。そして、早いところでは20分もしないうちに津波が到達したそうです。そして、当初3メートルと予定された津波は、到着直前に6メートル以上と変更されたと聞きました。普通の高さなら助かると思い、家の裏の高台へ向かった人々、地域の避難所である野球グランドへ逃げた人たち、地震後家族の安否を確認するために生徒を家に向かわせた小学校、すべてこの10メートルの大津波に飲みこまれました。 津波は、海からはるばる4キロ先の、私の実家のホントにぎりぎり目の前まで津波は到達しました。私の家に到達するには、海から連なる小さな小山と国道6号線を超えてこなければなりません。それでも易々と津波はやってきたのです。 しかも、海からずっとなだらかな田園が続く場所では、易々と国道6号線を超え、更に西へ1キロの友人宅前まで到達したと言うことです。 水が引いた泥の中からは、手や足が現れてきたそうです。1人や2人ではありません。私の自宅の近くまで流されてきていた人がいたと弟が言っていました。 そして、海から流されてきた重油のようななんとも言えない臭いが漂っていると言っています。 連絡のつかない、親戚、友人はもちろんいます。私が通った小学校で一番人数の多かった地域が沿岸部でした。その友人の家のほぼすべてがなくなり、公民館は2階まですべて波をかぶったそうです。 車で逃げられたひとだけが助かったと聞きました。海岸近くに、10メートルの波をかぶらないですむ高さの高台はありません。 海岸線を変えてしまうほどの大津波です。だれが想像できたでしょう。 すでにこの大津波だけでたくさんという状況のときに、原発問題が起きました。 「なんで?」という気持ち以外に何があるでしょうか。 大地震にあったうえ、津波に襲われ、家や家族を失い、その事実確認もできていない状況下での原発問題が発生したのです。 あいまいな会見、はっきりしない現状、そして次々と起こる爆発。 南相馬市は20~30キロに位置します。一言で言うなら中途半端な距離なのです。 体への影響云々ではありません。ここまでくると、被災者で、避難をよぎなくされている人たちの心境の問題なのです。 物資や食糧が不足する中、昨日から20~30キロに「屋内退避」勧告がでました。これ以上、精神的にキツイ仕打ちはありません。 「避難勧告」なら、みんな覚悟できます。避難する覚悟もできます。行政も、避難に向けて動きます。 もし、勧告がでなくても自力で避難すればいいではないかと思う人がいるならば、それは誤りです。福島県では、緊急車両以外へのガソリンの供給ができなくなっています。ガソリンがないので、逃げられません。なんとか、車の残っているガソリンで取り合えず県外までは行けそうだという人たちだけが避難できているのです。ガソリンの残りを心配しながらも東京へ向かった友人の両親もいます。 でも、避難所にいる被災者の方々にはそれができません。 行政に何かしろといいたいですか? そのような状況下で国や県の力を借りずに4500人の避難者をどうやって移動したらいいのでしょう? 南相馬市の職員は、自分たちになんらかの影響があってもと覚悟を決めて対応に当たっています。私の母は、職務を全うすると言い、鹿島区役所に残り、被災者の方々の対応に全力を尽くしています。 この微妙なグレーゾーンに置かれた南相馬市の住民は、今、かなり厳しい状況に置かれています。NHKに南相馬市長がコメントした内容は、本当につらい事実です。 放射線のレベルのことはいいのです。被災者の人たちに安心を与えてください。それだけです。 しかも、昨日の東京電力の発表は、今日明日に解決する問題ではないとの内容でした。 室内退避で閉じ込めておけば大丈夫と思っているのでしょうか。物資も食料も届かない状況で、どうやって明日、明後日を過ごせばいいのですか。しかも、先が見えないような状況で、「屋内退避」勧告のまま置かれることに政府は疑問はないのでしょうか。 母は、自分の体に何らかの影響があっても避難所の人たちへの対応をやめるわけにはいかない。覚悟はできてるとまで言っていました。 この南相馬市では、このような気持ちで職員やボランティアが避難所の対応に当たっているのです。 物資、食料を届けなければなりません。だれかに犠牲になれと言うことなのでしょうか。 何も起きていない日本で起きた原発問題ではありません。大地震、大津波のあとにおこった第3番目の災害です。 もし、このまま東京電力の事態が安定しないであれば、この「屋内退避」を「避難勧告」にすべきだと思います。 消防、警察、自治体すべてが必死で対応しているのです。 老人や病人も多い地方の過疎化の進む地方自治体です。 大地震と津波から生き残った人たち、しかも、このような想像もしていなかった第3の原発問題で厳しい状況下に置かれている日本国民を、不安だけがつのるような状況に置き、精神的に追い打ちをかけるその意図が私にはまったく理解できません。 他の被災地も大変です。それは十分にわかっています。でも、南相馬市をはじめ、原発の周辺のひとたちはまだ第3の災害にあっているのです。進行形なのです。何も終わっていません。それを理解していただければと思います。 その被災地の現場で、公務員として市民を守るために必死で働いている母に私ができることはこの現状を伝えることだけだと思いこの文章を書きました。 遠く離れた場所にいて、すぐにそばに行ってあげられない私が母のためにできることはこれだけです。 政府が、できるだけ早急に、南相馬市を始めとする20~30キロ圏内の人々に対する対応を決定することを願うだけです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.03.16 06:36:15
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