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カテゴリ:映画(その他)
『ディア・ドクター』試写終了後に、西川美和監督によるティーチ・インがありました。 こうして監督の生のお声を伺うのは大好きです。 監督は上映後に登場。 お写真では拝見しておりますが、そのイメージとはまた違って少女のような雰囲気で、なのですがより一層お美しくなられた感があります。 素敵な方ですよ。 映画自体は、ネタバレしないでお伝えすることは難しく、なるべくそうしないようにしていますが、勘のいい方はわかる場合があります。 ですので、これから書くティーチ・インの様子をお読みになる方は自己責任でお願いします。 Q 駅の場面では敢えてあのようにしたのか? 西 わざとあのようにしたとか、そこまでは考えて作ってはいないですね。映画は鑑賞するその人のものなので、そういう考えでもいいし、あるいは「偶然っていうのもあるんだなあ」という感じでもいいですし。 Q 斎門正芳の、とある場面がありますが、あれはどういう着想で作ったシーンですか? 西 映画を作っていく過程で、伊野がどういう了見でいたのかがわかりにくいという声が上がって、追加しました。 ある意味、伊野のブラックな部分も優しい部分もすべて知っている斎門に語らせました。 ただ予想外だったのは、椅子が頑丈過ぎたことですね(笑 Q ラストシーンは、駅のところでもよかったんじゃないかとも思ったのですが。 西 私もそこまで詳しく書くのがどうかとも思ったのですが、それだと観客が置き去りになってしまうのではという意見があり、あのラストになりました。 Q キャスティングについてお願いします。 西 基本的に自分が好きな役者さんを選んでいます。香川さん以外は今回初めてご一緒した方々で、初めての方というのはそれはそれでギャンブルだったりします(笑) ご一緒してわかってくる部分がありますから。 でも、「翳りを見せる役者さん」が好きというのはありますね。 Q ネタの核心について。 西 タネ明かしをラストに持ってきてもよかったんです。 でもあえてそのようにはしなかった。 気がつく人はもう初めの方から気が付いています。 でもそれも観る人によるんですよね。 気づくのが早いか遅いかは。 タネを明かされた上で伊野を見ていると、彼が抱えているものも分かってくると思います。 Q この映画の構想は、どういったところから来たのですか? 西 この映画のテーマは非常に身近なところから来ています。というかこれは私自身なんです。 『ゆれる』が、自分が思った以上にヒットしてしまって、そんなにみんなにワッショイワッショイ担ぎ出されるような映画じゃないのにな・・・と自分は思っていたんですが、思いもよらない評価を受けたのがとても意外でした。 そして周りからは「次を次を」という声が上がってきて。 自分は皆さんと違って、そんなにまだ監督としての器量もないし、当時は評価とは裏腹にとても不安になっていました。 自分は実力がない、そしてそんな偽物の自分にみんな騙されているんじゃないか。 そんな自分の感情、心の闇を冷静に描いてみました。 Q 小説にもしていらっしゃいますが、ストーリーが先ですか? それとも脚本が先ですか? 西 脚本が先です。 脚本は、いろんな制約の中で書かなくてはいけないんですが、小説はペン1本あれば書ける。 映画で溜まったいろんなフラストレーションを、ペンで書いているといったところです(笑 半年も1年も書いていると、自分で自分の話に飽きてきたりもするんです。 そんなときは「絶対に形にする」って粘りが最後には物を言います。 自分は、オリジナルの脚本、自分のジャンル・スタイルで映画を作っていきたいんですが、いろんな映画があっていいと思います。 こうして皆さんの質問を聞いていると、普段記者さんでは絶対に出てこないような質問が出てきたりして、ドキっとしてとても新鮮です(笑) 映画を観た人、個人個人が、違う感想になるような映画を作っていきたいと思っています。 終わった後、出口に監督がおられたので、思い切ってサインをお願いしたら快諾してくださいました。
家を出る前に慌てて気がついて、『ゆれる』のパンフレットとサインペンを入れておいてよかった。 ちょうどいい感じですよね。 ありがとうございます。 監督はご自分の状況にとても不安を感じておられたようですが、ここまでご自分の感情を見事に映画に昇華されておられるのですから、絶対に偽物なんかじゃないと自分は感じました。 「映画は、観たその人のもの」と監督は仰せで、この視点が常に映画制作にあるような気がしました。 常にどこか俯瞰的な目線。 誰が、どうとらえても、それをよしとする姿勢。 そんなところが自分はたまらなく好きです。 どこまでもご自身の信念を大事にされて、着眼点を表現できる素敵な監督。 これからのご活躍をお祈り申し上げます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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