|
テーマ:映画館で観た映画(8350)
カテゴリ:洋画(た行)
原題: THE VISITOR 監督・脚本 : トム・マッカーシー 出演 : リチャード・ジェンキンス 、 ヒアム・アッバス 、 ハーズ・スレイマン 、 ダナイ・グリラ 鑑賞劇場 : 恵比寿ガーデンシネマ 公式サイトはこちら。 <Story> コネチカットで暮らす大学教授のウォルター(リチャード・ジェンキンス)は、妻と死に別れて以来本を書く事にも、教える事にも情熱を燃やせず憂鬱な日々を送っていた。 ある日、出張でニューヨークを訪れた彼は、マンハッタンにある自分のアパートで見知らぬ若いカップルに遭遇する。 知人に騙されて住んでいたというそのカップルは、シリアから移住してきたジャンベ奏者のタレク(ハーズ・スレイマン)と、彼の恋人でセネガル出身のゼイナブ(ダナイ・グリラ)だと名乗る。 扉をたたく人 - goo 映画 <感想> 今年のアカデミー賞主演男優賞に、リチャード・ジェンキンスがノミネートされたという、この作品。 上映館も少なく、早めに行かないと終わってしまうような気がして。映画の日で、混むのがわかってましたけど行ってみました。 初回は9割くらいの入りです。 『バーン・アフター・リーディング』とは全く違うリチャード・ジェンキンス。 出だしはちょっと、『グラン・トリノ』にも共通するようなところがあるような。 人生をずーっと決まり切ったように生きてきて、自分のスタイルが固まっちゃってて、人に心を開けない老人。 そう言えば2人とも奥様が先に他界してました。 それでも、『グラン・トリノ』のウォルトのほうがどっちかというと頑固かもしれません。 このウォルター(→ 名前もこの2人、ビミョーに似てる 笑)は、自分の住まいのはずなのにちゃっかりと住んでいたカップルとの出会いで、新しい世界を知っていくことになります。 最初は表情すら変えなかったウォルターが、カップルの1人、タレクが演奏するジャンベのリズムに徐々に惹かれていって、そこから彼の生きる楽しみが広がっていきます。
ジャンベを叩いている時のタレクは本当に生き生きとしていて、ウォルターは、何気ないタレクの誘いをきっかけに、ジャンベが織りなす世界を体験していく。 それは今までウォルターが生きてきた人生と全く異なる音色を持っていた。 仕事をしているふり、生きてきたふり。 "pretend" な行き方しかできていなかったウォルターは、ジャンベの、自然で心が弾むような音色に、いかに自分がやってきたことが意味のないことだったのかを悟り、素直に物事に飛び込んでみたくなってくる。 そして生きることそのものを楽しんで、喜びを得ていく。 その表情の変わり方がいい。 すごくうまい感じで物事が進んで行っていたのに、本当に本当に些細なきっかけで、 もしあれが日本だったならば、全く取るに足らないことで終わってしまうくらいのどうでもよいことが、タレクの運命を決めてしまっていく。 あんなところにああいう形で人がいるなんて。 日本では時々、朝や夕方にいますが、あんなに詰問したり連行したりはしない。 それだけ日本はまだ危機感がなくて過ごせるのかもしれないのだけど。 だけど皮肉にもその出来事が、ウォルターとモーナの出会いのきっかけにもなってしまう。 悲しいことですが。 9・11以降、世界中がギスギスしているような印象があって、それはもちろん今の日本でもそうなんだけど、やはり大元のアメリカでは「怪しい者は即排除」という志向が根付いてしまっているように思えてなりません。 ウォルターのセリフに、 「人を何だと思ってるんだ! こんな扱いをしていいのか?」 とありますが、 情というものが通わなくなってしまっているんでしょうね。 曖昧な部分を説明しても、それは「国家の秩序を保つ」名目の前では無残に壊されていく。 そういう世の中になって行ってしまうのは悲しいことです。
モーナ役の、ヒアム・アッバス。 彼女は直近で『シリアの花嫁』(→ 見逃しちゃったんです。。。涙)に出ていますが、とても素敵な女優さんですね。 待機作品も複数あるそうで、期待高まる。。。 タレク役のハーズ・スレイマン、まっすぐな眼差しと、生き生きとした笑顔がいい。魅力的です。 そしてゼイナブ役のダナイ・グリラも、冷静と情熱をうまく使い分けていました。いい女優さん。 もしかしたらたぶん一生逢えないかもしれない。 たぶんこれが最後になるだろう。 付き合っている時はそうそう思えないものですが、どんな恋にだって終わりはあるから。 それがいつ、どんな形でやってくるかなんて誰にも想像できない訳で。 自分で終わりを決めて、覚悟も決めて、振り切るように歩いて行って。 それをあざ笑うように見下す星条旗の冷たさも印象的でした。 何かを吹っ切って、本当に自分に必要な行き方が見えてきた。 ラストシーンのウォルターは「胆をくくった」んでしょうね。 一心不乱にジャンベに想いを込めている彼の表情は、とても「万年脇役」とは言わせないだけの迫力がありましたし、それが今回のオスカーノミネートにもつながったんだと感じました。 主演男優賞受賞作に劣らないほど、これも本当にいい作品でした。
今日の評価 : ★★★★☆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[洋画(た行)] カテゴリの最新記事
|