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テーマ:映画館で観た映画(8352)
カテゴリ:洋画(あ行)
監督:ホセ・ルイス・ゲリン natural TIFF 特別上映作品 第22回東京国際映画祭公式サイト 『イニスフリー』ページ はこちら。 <Story> ジョン・フォードの『静かなる男』の舞台、アイルランドのイニスフリーをめぐるドキュメンタリー。 緑豊かな村に今も変わらず息づく詩情豊かな自然と人々の表情を劇映画の手法も用いながら描く。 <感想> ようやく東京国際映画祭の記事に入りました(苦笑 とにかくいろいろ今週立て込んでおりまして。 今年は4本しか鑑賞できないと思うんですが、自分の予定がぎりぎりまでわからなくて、TIFFのスケジュールとチケット残席をにらめっこしながらの決定になりました。 この作品のあとに、観たいのがあって、その時間合わせで何かないかな・・・ と探して、これがたまたま空いていたので鑑賞、といった感じです。 20年ほど前のドキュメンタリーをここに引っ張ってきたというのも、考えてみるとなかなか乙なチョイスなのかなと。 「natural TIFF」というジャンルでの出品ですから。 そのジャンル名の通り、自然がとにかく美しい、イニスフリーです。 "I will arise and go now, and go to Innisfree, " という力強い出だしで始まる、ノーベル文学賞受賞の詩人、 William Butler Yeatsの作品である、"The Lake Isle of Innisfree" (「イニスフリーの孤島」)をベースに作っているようです。 実は英詩は学生時代に少しかじっていて、この詩もそういえば授業でやったなあ・・・ などと懐かしく思い出しました。 この最初のフレーズが印象的なんですよね。 さあ立ち上がって、イニスフリーへ行こう・・・・・ という書き出しの後に続く、イニスフリーの情景の数々の描写は、映画の中の様々な風景そのもの。 その美しい風景を見つめつつ、描写されていくことがらは、決して単に美しいと思うことばかりではない。 アイルランドの歴史をひも解いてみればわかると思うのだが、たどってきた道のりは艱難辛苦に満ちており、特にイギリスへの想いは実に複雑。 そこを知識として鑑賞前に知っておくと、この作品の読み方がわかってきます。 酒場で歌を歌いながら過去の栄光を振り返っているイニスフリーの老人たち。 彼らの胸中はそこへの虚しさから去来している。 そして、その小さな町にやってきた映画があった。 『静かなる男』は、イニスフリーを舞台に骨太な恋模様を描いたもので、もう50年以上前だというのにそのロケ風景などを思い起こしたり、貴重な町の観光収入源にもなっていたりする。 きっと今の老人たちが若かりし頃のロケだったのだろう、その頃のことを語る彼らの表情は生き生きとしている。 一言で言ってしまえば、イニスフリーの町の美しい風景の裏側にある悲喜交々を語る、といったところなのだろう。 ただし、ここに出てくるエピソードが地域限定、年代限定に近い要素も大いにあり、それに通じていないと映画に乗りにくい部分はある。 不思議だったのは、登場人物たちのほとんどが老人たちと子どもたちであったこと。 彼らの中間の、ミドルエイジ世代の姿をあまり見かけなかったのは気のせいか。 アイルランドを巡る様々な歴史や紛争の陰で、老人たちは最早自分たちのノスタルジーを子どもにしか託せなくなってしまったのかと思うと、何となくその理由が飲み込めるようにも思う。
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Last updated
2010.11.03 13:22:40
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