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鳩山邦夫法相は2月5日の記者会見で、児童買春・児童ポルノ処罰法をめぐり、個人が児童ポルノ画像を所持するだけでも処罰する規定を議員立法で新設するよう与党に要請する考えを明らかにした。
(産経新聞) ●「単純所持」はえん罪の温床 児童ポルノ法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)は子供を守るための法律である(第一条)。 現在、児童ポルノ法には単純所持に対する規定はない。 しかし、ユニセフ、市民団体などから、単純所持も法規制の対象にすべきとの声が強まり、福田首相は鳩山法相に児童ポルノ法強化の指示をしたという。 結論から言えば、これはきわめて危険な法改正だと考える。 新聞等でいわれるように、憲法でいう内心の自由や警察権力の拡大も確かに問題だ。 しかし、なにより痴漢と同様、えん罪を大量に生み出す可能性が非常に大きい。 さらに過去の記事で紹介したような「児童ポルノ詐欺」などの被害も拡大するだろう。 所持しているだけで処罰されるものに麻薬、拳銃がある。 特に麻薬は海外渡航者で「単純所持」によるえん罪が多い。 なかでも有名なのがメルボルン事件である。 1992年、オーストラリアへ観光旅行をした日本人5人グループのケースが盗まれ、現地ガイドから貸されたスーツケースからヘロインが発見され逮捕。全員無罪を主張したにもかかわらず、2008年現在、未だ拘留中。 日本人らは前科も麻薬使用歴もない一般人で、現地ガイドらによって知らぬ間に「運び屋」にされていたという説が有力。 「単純所持」というのは、これぐらいえん罪を生み出しやすいのだ。 まず、「所持者」をでっち上げやすい。(CDやパソコンの画像を入れておけば済む) 次に、犯罪者でないことの証明が難しい。これはかろうじて繊維判定ができる痴漢えん罪以上に困難だ。 そして、メルボルン事件のように、真犯人が見つからない可能性が非常に高い。 <ケース1・ライバルを陥れるため> AさんとBは同期入社。 Aさんは仕事が良くでき、Bとは出世でかなり差が開いてしまった。Bはインターネットでダウンロードした児童ポルノ画像を、職場のAさんのパソコンにインストール。 数週間後、会社と警察に、Aさんが勤務中に児童ポルノ画像を見ていると匿名電話。Aさんは無罪を主張したが、「単純所持」で刑が確定した。 <ケース2・ダウンロード画像の中に> Cさんは、よくインターネットで(成人の)ポルノ画像を集めていた。 そんなサイトの中に、たまたま児童ポルノ画像が入っていたのか? 数年後、Cさんからオークションでパソコンを購入した女性が、児童ポルノ画像を発見し、警察に通報。 Cさんは無罪を主張したが、「単純所持」で刑が確定した。 <ケース3・いつの間にかCDが!?> Dさんは付き合っていた女性E子と別れた。 E子はDさん逆恨みし、児童ポルノ画像入りのCDをDさんのCDラックに忍び込ませて置いた。 E子の通報でCDが発見、Dさんは無罪を主張したが、「単純所持」で刑が確定した。 実はこの「単純所持」、既に奈良県の「子どもを犯罪の被害から守る条例」で規制されている。 実際、この条例のため、23歳の男性が、児童ポルノも扱っていたDVD販売店の購入者リストから浮かび上がり、家宅捜索を受けている。(審理中) 奈良県は条例の制定にあたってパブリックコメントを募集したが、当然えん罪を危惧する意見が多数寄せられた。 (意見)他人に送りつけられたり、インターネット上で図らずも所持した場合、冤罪となる。 (意見)密告の奨励である。気に入らない人を簡単に犯人扱いできる。 これに対する、奈良県側回頭の無責任さはあまりに酷かった。 (回答)捜査機関において、適正に捜査した上、判断することとします。 奈良県知事・いったい適正とはどういう事か!? 被疑者が地力で潔白の証明をしなければならないことが、どんなに大変なことか。 痴漢えん罪の裁判を見るまでもない。えん罪を作る方がはるかに簡単なのだ。 この条例案に、県議会で唯一抗議したのが、意外なことに共産党だった。 「単純に児童ポルノをもっているだけで、処罰することは、刑法の原則にも反する」などとして条例の撤回を求めたが、数の理論に負けた。 昔から警察権力とは犬猿の仲の共産党という背景もあるのかもしれないが、それにしても他の議員(特に福島瑞穂の社民!)が県民の安全を守るためになにもしなかったのには驚かさせられる。 単純所持を罰則の対象にしていないのは、先進国で日本ぐらいだ、とユニセフは批判する。 だが、ユニセフは単純所持を規制している国の方が性犯罪が多いことを隠している。 さらに、数々の痴漢えん罪と同様、今の日本司法がそれを裁くのだ。 アメリカでは、犯罪者逮捕時の手続に問題があっただけで(弁護士が来るまで待たなかったなど)無罪になってしまう。 今の日本司法レベルで児童ポルノ法を改正するのはあまりに危ない。 ●「単純所持」規制が性犯罪を増やす ユニセフは隠しているが、単純所持を規制している国のほうが性犯罪が多い(増えた)という事実がある。 児童ポルノ単純所持禁止国と日本の性犯罪(婦女暴行) ※10万人あたり 〔単純所持禁止国〕 カナダ 78.1件||||||||||||||||||||||||||||||~|||||||||||||||||||| アメリカ 32.1件|||||||||||||||||||||||||||||| イギリス 16.2件|||||||||||||||| フランス 14.3件|||||||||||||| ドイツ 9.1件||||||||| イタリア 4.1件|||| 〔単純所持非規制国〕 ロシア 4.9件||||| 日本 1.7件|| 日本人のモラルが高いことは世界中に知られているが(米タイムズ紙「尊敬する国」5年連続1位)、ロシアでも性犯罪が少ない意味は理解できるだろう。 個人的に児童ポルノ作品にいい気はしない。 だが、街角の男性100人にアンケートするまでもなく、ビデオや本、ひいては風俗産業が、犯罪抑止力を持つことは事実である。 有名な例では、ベルリンの壁が崩壊した後の西ドイツでは、ポルノ雑誌が解禁になったとたん性犯罪が減少した。 逆に(いまの日本のように)1999年に単純所持を禁止したスウェーデンは、規制した当年から性犯罪が急伸した。 スウェーデンはここ数年、犯罪件数全体が増えているが、それにしても殺人件数は1999年から2005年の6年間に23%増なのに対し、性犯罪は79%増で明らかに多い。 さらに殺人事件に、性犯罪と関連したものが少なからず含まれており、決して看過できない数字だ。 しかしながら、ユニセフはこの関連をスウェーデンの内情不安と片付けて、省みない。 非常に無責任な話だ。 現在、G8の中で一番低い性犯罪件数を、違憲すれすれの(実際、アメリカでは単純所持禁止について違憲判決が出ている)規制で増やす必要はどこにもない。 これはもはや児童ポルノ愛好者だけの問題ではない。 女性や児童を守る観点からも、単純所持規制は取り下げるべきである。 ●日本の落としどころは? 児童の人権を守り、さらにえん罪を増やさないため為にも、現行の刑罰対象 「販売」「頒布」「陳列」の法定刑をグッと引き上げて厳罰化するのが一番適切な方法だろう。 たとえば販売は10年以下の懲役などのように、銃刀法に準じるなどだ。 (実際、暴力団の拳銃所持は厳罰化でかなり減少している) 児童ポルノ法は総務省の所管である。 法改正の前にはパブリックコメントや総務省へのメールなど、えん罪の温床となる「単純所持・刑罰対象化」に意見を送るのがよいと思う。 ・政府への意見フォーム:https://www.e-gov.go.jp/policy/servlet/Propose ・総務省・パブリックコメント募集:http://www.soumu.go.jp/menu_06/iken_bosyu/index.html (児童ポルノ法改正に関する意見募集は国会提出以降) 参考:日弁連 - 「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」見直しに関する意見書」 (「児童ポルノの単純所持は処罰の対象とすべきでない。」と政府に意見) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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