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テーマ:山梨の山(179)
カテゴリ:山と文学
冬だ、冬だ、何処もかも冬だ
見わたすかぎり冬だ 再び僕に会ひに来た硬骨な冬 冬よ、冬よ... 躍れ、叫べ、僕の手を握れ 大きな公孫樹(いてふ)の木を丸坊主にした冬 きらきらと星の頭を削り出した冬 秩父、箱根、それよりもでかい富士の山を張り飛ばして来た冬 そして、関八州の野や山にひゆうひゆうと笛をならして騒ぎ廻る冬 貧血な神経衰弱の青年や 鼠賊(そぞく)のやうな小悪に知慧を絞る中年男や 温気(うんき)にはびこる蘚苔(こけ)のやうな雑輩や おいぼれ共や 懦弱で見栄坊(みえぼう)な令嬢たちや 甘つたるい恋人や 陰険な奥様や 皆ひとちぢみにちぢみあがらして 素手で大道を歩いて来た冬 葱の畠に粉をふかせ 青物市場に菜つぱの山をつみ上げる冬 万物の生(いのち)をさけび 人間の本心をゆすぶり返し 惨酷で、不公平で 憐愍を軽蔑し、感情の根を洗ひ出し 隅から隅へ畏(おそ)れを配り 弱者をますます弱者にし、又殺戮し 獰猛(どうまう)な人間に良心をよびさまし 前進を強ひて朗らかな喇叭(らつぱ)を吹き 気まぐれな生育を制(おさ)へて痛苦と豊穣とを与へる冬 冬は見上げた僕の友だ 僕の体力は冬と同盟して歓喜の声をあげる 冬よ、冬よ 躍れ、さけべ、腕を組まう お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.12.25 00:40:51
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