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映画ドラマ・千一夜

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October 22, 2005
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カテゴリ:韓国ドラマ
総合点:89 お勧め度:★★★★+ 
(シナリオ・セリフ)=9 (映像、画の出来)=9 (音楽)=8 (完結性)=9 (思い入れ+インプレッション)=9

●2003年KBS 韓国ドラマ ユン・ソクホ監督作品 出演:ソン・スンホン、ソン・イェジン、ハン・ジヘ、リュ・ジン
●例によって、ここではゆったりと時間が流れます。特に第二巻あたりまでの緑と雨のシーンが印象的で、素直に物語りに入って行ってしまいます。
●雨・・・。
 高校一年生の夏、休み前に四日間に亘る学校祭がありました。学校祭では各クラブの発表やクラス対抗の合唱コンクール、演劇会、映画の上映、卒業生の公演などが行われ、校庭では毎日夕方、フォークダンスが行われました。同時期に丘の上の女子高の学園祭も開催されるため、その時期は、その学校の高校生にとっては熱い夏です。また、最終日のフォークダンスの後にファイアーストームが行われるのですが、これがフィナーレを飾る大きな行事になっていました。
 ここで言うファイアーストームは、普通に言うキャンプファイアのような小さな火ではなく、直径10メートル高さ4メートルほどに積まれた木材の廃材に火を付け、其の周りで踊ったり騒いだりする火祭りのことです。僕の高校では各クラブがその象徴として幟を作っており、ファイアーストームのときにはそれを校庭に持ち込み、結果、ファイアの周りに高さ8メートルほどの高さの幟が数十本と立ち並ぶ。中にはこうした学校行事を嫌う生徒も居たのですが、ほとんどの生徒がこれに参加し、体操服や消防団の制服や、ぬいぐるみの格好や、思い思いの衣装でファイアを取り囲んで円陣を組む、無論、教務担任から体育の先生から教頭先生から校長先生に至るまで、先生方も体操着で参加しました。
 全員が集まったところでファイアに点火される。一旦火が燃え出すと火の勢いが強いので、町の消防署が待機していてホースで水を掛ける。最初は車座になって皆、静かに座っているのですが、学友会の執行部の面々が号令を掛けると、全員で炎の周りを駆け回り、古代人の情熱がそのまま乗り移ったような、そういう状態に入って行きます。
 始まった当初は綺麗な白い体操着もトレパンも、何度か走り回っているうちに放水された水と泥で真っ黒になってしまうし、泥の上に座るから下着まで泥だらけ。この時期、天文部に入っていた僕は、任かされた幟を同級生と二人で必死に支えながら、「泥がついて変なところに入ったりすると病気になりはしないか?」、なんてことを考えながら、少し覚めた眼でその世界を見ておりました。
 やがて時が経ち空が暗くなり、組まれた櫓の辺りに明かりが灯もされる頃になると、あちこちから怒号が出たり野次が飛んだり、執行部の人たちを先頭に酔ったような状態になる。校歌を歌ったり、東大に行くという噂の学友会長が演説をぶったり、執行部の役員が「学友会の沈滞」を非難する朗々とした声明が流れたりする。彼らは時に吼え、時に涙を流し、燃え盛る火の前で、少し妙な異空間に居るような感じがありました。
 そのうちに空から雨粒が落ち始め、20番もある長い校歌を歌い終わる頃になると、雨はかなりの勢いになって寒くさえなってきました。校長先生と学友会長の挨拶を最後にようやく解散が宣言されると、生徒達はそれを待っていたかのように、足早に校舎の中へと消えて行った・・・。
 こういうとき僕は、そういう場所から離れがたくなってしまうのです。校庭の片隅のバレーコートまでの階段の下で、燃え尽きて赤く光る小さなオキになったファイアを見つめながら、一人暫くぼんやりとしていました。
●小学校でも中学でも、好きな娘はおりました。でも、高校に入って初めて教室に入った時、一人の少女の姿がふっと眼に入った。幾分か小柄で、髪がオカッパ頭。真っ直ぐで柔らかくて、凄く綺麗な髪です。顔の真ん中で鼻筋が通り、卵形の頬が伸びた先、首筋が何とも言えない素直さで肩に伸びている。椅子に腰を掛けるとピンと背筋が伸びていて、これも大層美しいのです。着ている紺色の制服の仕立てが良く、一見して裕福な家の子ということが分かりました。
 田舎の中学のように、小学校からずっとメンバーが変らないような世界とは違って、高校にはその地方から様々な子がやってきます。校風が自由なこともあって、きちんと学生服を着ているものもあれば、ジーパンの子もあれば、上級生などのようにTシャツだったりする勝手バラバラな。
 二重瞼で笑顔が可愛く、大層利発な感じのする其の子が、隣町の中学から電車で通って来ていること、バスケ部のキャプテンで生徒会の副会長だったこと、暫くするうちに、彼女が好きだというような声が、同級生だけではなく同じ学年のクラスからも、上級生の中からも沢山聞こえてくるような状態になってしまいました・・・。
 最初の体育の授業のことです。その授業は体力測定で、名前も席も離れているような僕らが何故同じ班になったのかは記憶にありません。カードを貰って、50m走や幅跳びや砲丸投げや肺活量測定などを、互いに記録しながら進むことになりました。中学のとき、僕は20人のクラスで野球をやると、2つのチームに入れず補欠になるような非力の少年だった。一方、この学校の中には各中学の運動部のキャプテンや生徒会長など優れた少年がいっぱい居たし、中には県体3位のベレーボール部のキャプテンなんかも混じっていた。
 50m走のときです。彼女は両手を懸命に左右に振って首を少し傾けて走って行きました。その姿が「風の中を快活に走る少女」というような今まで見たことも無い姿で、白いトレパンの後ろ姿が妙に眩しく、僕はほとんど呆気に取られてしまいました。
 翌週から体育はバレーボールで、校庭の上に設けられたバレーコートです。バレーボールは9人制で、中学の時のように役割分担が決められ、非力でヘタな生徒は阻害されるような遣り方ではなく、味方が一本取るたびにポジションがローテーションする仕組みでした。ここでは誰でもがどのポジションも経験することが出来る、公平なルールだったのです。
 中学のとき、男子と女子は体育は別授業だった。けれど、ここでは女子生徒が1割しかいないから、一緒の授業で、すぐ横でプレイしたりする。授業の終わりにうさぎ跳びをしてコートを回るのですが、急に其の段になって、「恥ずかしいから先に行け」みたいなことを僕に言うのです。僕の心はそれだけで舞い上がってしまいました。
 其の頃、800人ほど居る生徒の大半は、始業の15分前ほどに学校に来ていました。が、僕はバスの関係で高原の駅を始発列車に乗り、始業40分ほど前に学校に着く。それからの時間は学校で勉強をすることに決めていました。
 列車の中の30分は英語を勉強し、学校では教室か図書館で数学を勉強する。始めは一人だったのですが、暫くして始発列車でその時間に来るのは、図書館を開ける2年生数名とテニス部の学生と、その少女と彼女の友達の女の子3人、それと僕の10名ほどになりました。
 駅から学校への道は途中から小路に入り、お寺さんの境内を通る。互いに付かず離れず、いつも「おはよう」の挨拶だけします。他の女の子も一緒にいるので大層気恥ずかしくて、それだけ言うのでも精一杯だったのです。
 僕はクラブは天文部に入り、彼女はクラシックギター部に入った。7月の学校祭に向けて僕は上級生に言われるとおり、プラネタリウムの準備をしたり太陽黒点の表を作ったり惑星軌道を作ったりし、彼女はその放課後は、教室で練習に明け暮れていた・・・。学校祭の演奏会のときは、周りに分からないように少し離れた場所に立って、その演奏をそっと聴きました。
 フォークダンスの時間・・・、クラスのカッコいい少年達から誘われて踊りの輪に入る彼女の姿がありました。しかも、ダンスが終わって戻った少年達は、テニスコート辺りで小躍りして空を舞ったりする。しかも彼女はそれを見て、気恥ずかしげに微笑んでいるのです。そういう立場の少女の想いが僕にはよく分かったけれど、僕が決して特別な存在でないのを知ったことは寂しかった・・・。
●ふと気がつくと身体が冷えているのを感じ、慌ててバレーコートまでの急な石段を登って天文部の部室に行きました。そこで着ているもの全てを脱いで着替え、体操着は部室脇の水道で洗い、それを白いカバンに突っ込んで、暗い廊下を歩いてロッカーまで出た。すると、水銀灯の下に二人の少女の姿が見えたのです。少女の髪は水に濡れて、どこか異様に美しく輝いていた。僕は自分のロッカーに行って傘を取り出すと、黙って彼女の所に行ってそれを差し出しました。
「N君はいいの?」と聞くので、「大丈夫だから」と答えました。二人は小さく礼を言って、雨の中に消えて行きました。
 暫くそのまま待っていたのですが、とても雨は止みそうになく、意を決して外に飛び出した。でも、途中から雷が鳴り出しピカゴロと凄い音を立て、ザーザーと雨が降って来た。途中のお店の軒先で休んでも、それはとても止みそうになく、結局懸命に走って駅に着いたときは、頭の先から足の先までびっしょりの状態でした。
 翌日、空はよく晴れて、高い青空の中に明るい太陽が輝きました。朝のロッカーで彼女は「ありがとう」と言って傘を返してくれましたが、僕は何も言いませんでした。あれから30年以上経った今も、彼女は僕が濡れて帰ったことを知らないのです。
●この作品の中でソン・スンホンは、逞しい身体を見せます。また、秋の童話とは違ってここでは髪を茶色に染め、表情に柔らかい印象を与えます。ソン・イェジンは時に可愛く時に美しく、全編通じて輝いています。特に腕を腰の辺りで組む仕草が、物凄く魅力的で素敵ですね。
 ストーリーの途中で心理的に分からないところがあって暫く悩んだりしましたが、終わりまで行って見ると、それもそれなりに納得が行った。あの頃の歳の3年とか5年とかは(10年だって)、その後どうにでも取り返せます・・・。若いっていうのは本当に羨ましい。
 せりふが終始旨く、言葉使いが非常に丁寧で美しさがある。付け加えますと、韓国語での俳優さんの生の声の方が、吹き替えよりずっとずっと素晴らしかった。(この頃、コマオヨー、とかチェサムニダとか、ケンチャナヨとか覚えました)
●いつもソクホ監督のドラマには参ってしまいます。他の韓流ドラマや他の映画では動かされない心の領域のところを、揺さぶられてしまいます。凄く切ない。
 人生で一番大切な時期に不健康だった僕は、それで希望しない道を歩くことになってしまいました。人生にはリカバーできる領域とそうでない領域とがあります。リカバーできない領域のことに関して考えるときほど、辛いことはない。物凄い焦燥感が身を包みます。
 恋愛は夏の香りのように結末できなければ嘘です・・・。



  





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Last updated  October 28, 2007 08:50:31 AM
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