あちゃこちゃ徘徊。
出かけるなら今日。というか、どうせ出なければならない用事もあるので、ここぞとばかり、徘徊に。まずは、英一蝶リターンズ、という間抜けなタイトルをつけた板橋区美をめざす。何しろ行きづらい所である。結果早く行けそうなルート、小竹向原で折り返し、地下鉄赤塚駅で下車。あとはてくてく歩く。うーん、30分はかからないが、25分はかかった。駅からまっすぐなので迷いはしないが、これといって面白味はない。新座に似ている。リターンズ、というだけあって、展示品のキャプションもお間抜けにしつらえてある。おかげで、図のタイトルがまったく頭に入らず、字面の翻刻が見当たらないので物足りない。ま、読めってことか……区立だと子供向け、って考えるとこうなるものやら。微笑ましいのと薄くいらっとするのと紙一重。まぁともかく、一蝶には違いない。目当てのものは後期展示らしくまだ並んでいなかった。が、都会の猛烈な混雑とは違い、静かにじっくり眺められたのでよしとしよう。後期来られなかった時のことを考え、図録を買う。これからまだ徘徊するのに、お荷物なことである。さて成増へ出るバスもまだ時間が空くし、勿体ないからまた赤塚へ引き返す。かさねがさね……面白味に欠ける。そのまま副都心線で雑司ヶ谷へ。あぁ便利。雑司ヶ谷からはたまたてくてく歩き、永青文庫へ。こちらは、渋い。「黄庭堅・伏波神祠詩巻~中国大書家の気に触れる~」という渋いが壮大な展示である。書自体ももちろんだが、文房四宝にも目を瞠る。しかし何度来てもこちらは落ち着く。企画展の内容は実にさまざまで、それだけのものを組むだけのものをお持ちなところもさすが肥後の殿様、というしかないのだが、毎度しっかりした解説と共に得るものが多い。そして、どんな内容にもしっくり馴染むこの建物。蔵書を棚に収めて見せてくれているのも有り難い。往時の知識の蓄積のありようを一眼に知ることができる。で、胸突坂を下って、神田川沿いを江戸川橋へ抜ける。この時期に歩いたことはなかったが、失敗。この時期の桜の並木には、よからぬ生き物が居ることを忘れていた。行く先々に正体をなくしたやつらの痕跡もあり、びくびくしながら急ぎ足に行くと、ついには正体のあるやつまで目に入ってきて、とにかく急ぎ足……で、次には印刷博物館を目指す。こちらは近代の教科書展。東書文庫の蔵品、重文がずらり。てか、あれも重文やったんかいなこれも重文やったんかいなというのを初めて知る。明治のものは既にお馴染みの顔ぶれ、ではあるが、いい版揃い、保存状態いいもん揃いである。掛図も出ていたし、なかなか見応えあり。それにしてもこちらも相変わらず経済的に恵まれた博物館ぶり。そういえばお昼御飯を食べてなかった……がもう日暮れ時。江戸川橋に戻るのもつまらぬので、茗荷谷へ。金剛坂をえっちらおっちら登り、竹早へ抜けて、春日通りをゆく。初めての坂だったので、うきうき。前を、界隈のご老人がやはりえっちらおっちらゆく。車に下から追い立てられてもマイペースそりゃあ坂なんだから車が遠慮しろと思うのが人情。結果的に、音羽の谷へ下って上がったことに。よく歩いた一日。百貨店に寄り、ジアンのマグカップを買い求める。ウエッジウッドにしようかと思ったが、こちらのほうが賑やかで温かみがある。フランスの陶器で、磁器でないのでレンジはアウトらしい。が、磁器と違ってやわらかい地の色で、絵の色味ものどか。選んだヴィラ・メディチという柄は、葡萄と鳥達が明るく取り巻いている。これとヴィタメールのケーキで、家人の誕生日祝いとする。そしてようやく餌にありつくそして、即カンヅメ。