立川談志『立川談志遺言大全集 1』その4
立川談志遺言大全集(1)<夢金>この噺は、CDで聴いた志ん朝師匠のが良かった。酒手をなかなか貰えず愚痴ってるドケチな船頭、やっと酒手が貰えると思ったら「人殺しに加担しないか」との誘い。ここで、空気はピリッとサスペンス風に変わってしまうのだ。この噺は演題の通り夢オチで、夢の中で握っていた小判の包みが現実では己の睾丸を握り締めていた、とサゲるから『夢“金”』。サゲがサゲだけに睾丸云々を入れずに「ああ、夢か」で済ませる噺家もいる。この『遺言大全集』の談志師匠版では、船頭の親方が「静かにしろ、熊公」の一言で済ませており、その台詞と仕種(活字では分からないが)で、夢オチであることを表現している。さらに解説では「『百両ォー」と熊に言わせ、階下から親方が無言で見上げてEND」と、さらに短く演ることもあるらしい。でも、『夢“金”』なんだからやっぱり睾丸を握っていて欲しいし「痛でェー!」と熊に言わせたい。<明烏>八代目桂文楽師匠の十八番だが、まだ聴いたことがない。甘納豆を食べる仕種も入っているこの噺、CDじゃなく是非とも映像で観てみたいが。お堅い若旦那の台詞、談志師匠が喋ってるところを想像するだけで楽しくなる。赤塚不二夫が漫画にするとこれもまた楽しそう。<短命>伊勢屋の娘さんの旦那がまた死んだ。これで3人目。八つぁんから事の次第を聞いた御隠居は、「娘の器量が良すぎて衰弱死」だということがピンとわかるが、八はさっぱりわからない。御隠居の説明でようやくわかった八は、さっそく自分の女房で試してみるが…。金持ちで、仕事はしなくていい、毎食のお給仕は娘さん自らがやり、お茶碗を渡すたびに手と手が触れて、顔を見れば十人並みの器量で、旦那さんはたまらず御飯をそっちのけで「励む」わけだから早死にしてしまう(楽天ブログだと、どのへんまで表現はOKなの?)つまり、ヤりすぎ、衰弱死、腹上死。八は鈍すぎるのか、これがわからない。御隠居の長い説明でなんとか理解するが、でも、成人男性、こんなことに鈍いかね?『明烏』の若旦那みたいに初心ならまだわかる。でも『短命』の八つぁんは所帯持ちだし、しかも昼間から自分の女房とヤることヤってんだ。そういう八が、伊勢屋の旦那の死因に疎いのは不自然だし、自分の女房に給仕させて「手と手が触れて、顔を見ると…、あー、俺は長命だ」って言うかなぁ?じゃぁ、なんで昼間から女房とヤってんだ、そういうエピソードを女房の口から語らせるんだ、という話になる。八つぁんのキャラ設定に疑問を感じる一席。