大学5年の頃(日本はいつから5年制になったのだったかなあ)の一時期、私の1日のスケジュールというのが、昼間は大雑把に学校かアルバイト、夜間は大雑把に酒かアルコールであった。
その日も、久し振りに中学生時代の友達2人と最終電車まで飲んでいた。ちなみに最終電車は、未だに忘れない、ジャスト午前1時であった。これには、ホトホト役立った。何故覚えているかと言うとご想像の通り、キリがよいからであった。
紛れもなく「次はワイの家で飲もうや」と私はのたまい、旧友2人も久し振りということもあって「そうしようそうしよう」と口々に叫んだ。しかし、告白するとワイの家は正確には親父の家であり、ワイ以外にも父母妹等の家族等も住んでいた。
私が、家に帰ると、不思議なことに、母親が出迎えてくれた。母は、毎朝登山をしている為、たいてい10時頃に眠るというのにだ。時計の針は推定2時であった。
母は、少し怪訝そうな顔で私に言った。
「ヨウ(私の本名を音読み)、あんたのベッドでパキスタン人が寝てるで」
背中に戦慄が走ったが、酔いは収まらなかった。労働というも文字が英語で浮かび、ワークという日本語が浮かんだ。オーバーステイ?スマッグラー?
私は2階の自分の部屋に上がる。ムクリとベッドから優雅にシナヤカに起き上がる彼。
「グッドイブニング」
「ハーイ」(っていうか君誰?)
私は、早速、一緒に帰ってきた中学校旧友二人に彼を紹介した。
「えーっと彼はパキスタンから来た、、、、、」
「Zです」と彼はにこやかにいい、私はつられて「ということです」とにこやかに言った。
「ところで、Zさんすみませんが我々はイスラム教徒でいうところの戒律を侵し、既にドランクツーマッチ状態なのですが、もしよろしければ、飲みませんか?」と私は軽くジョークをかました。
彼はエレガントに「勿論」と答えた。
その後で、「イエス、マイデカダンス」と聞こえたような気がした。
私のは少々自信があったのだ。それは中国からパキスタンに入るクジュラブ峠までのバスの中は、パキスタン人が時間を惜しんで酒を飲みまくっていることを思い出したからだ。また、沙漠で密造酒を飲む輩もインドのムスリムにはいたからだ。感覚としては、マリファナをやるようなものだ。
私にとって、西洋人から見て中国人も朝鮮人も日本人も一緒に見えるように、アラブ人はまあ同じに見えてしまうところがあって、名前もモハメッドやハッサンや、まあ同じ名前がいっぱいあってよく分らなかったのだが、(インド人のイメージの象徴といえばターバンだがターバン巻いたシク教徒はインドに数パーセントしかおらずなのだが、彼らの名前のほとんどがシン、(タイガージェットシンのシン)であったわなあ)話をつなげていくと、どうやら私を親戚一族紹介ひきづり回しの歓待の刑に処してくれたラホールで知り合ったZさんなのであった。
Zさんは、大阪空港から何とか私の住所を持ちながら聞きまわって、やってきたようである。まるで往年の私のようである。駅からは、英語の話せる会社員が自宅まで電話をしてくれて、家まで送り届けてくれたらしい。まあそんあことはどうでもいい、問題は、コレカラどうするのということであった。
Zさんはにこやかに、香港のお土産を私にくれた。で、これからどうするの?
Zさんは自分の着ていたセーターも私にお土産としてくれた。で、これからどうするの?
私たちこれからどうなるの?
2日後には、彼はバンコクに向かうとのことだった。彼は裕福だったんだなあ。
安心した私は、意を決してもうひとつ彼に提案した。
「Zさん、ビデオを借りにいきますが、ハードコアみませんか」
彼はエレガントに「勿論」と答えた。
その後で、「イエス、マイデカダンス」と聞こえたような気がした。
しかし、私は、まだビデオ屋でエロビデオを借りた経験がなかった。
しかし、意を決して、私はエロビデオを借りた。あれ以来、今まで借りたことはない。
「Zさん、日本ではこういうのも流行っています」もしかして私は間違った日本の紹介をしているかも知れないと思いつつ、翌日はちゃんとお寺等案内したのであった。
それから、そのとき、母親と10年ぶりぐらいに食品の買い物をしたのであった。
「よう、あんた、あの人は、何を食べるねん、買い物ついてきなさい」
「ムスリムだからブタは駄目。駄目な理由というのは特になく、コーランにそう書かれているからですよ。アルコールは駄目。でも昨晩しこたま飲んだ。パキスタンのラホールでは女性はチャドルかぶってて足首さえ見れませんから、日本の女性をみてびっくりしていると思うで」といった。
ビデオを借りたことは母には黙っていた。
来月、イギリス人がホームステイに来る。
「よう、あんたキリスト教は何食べるんや」とは多分もう離れて住んでいるから言われないと思う。っていうか、私の家にホームステイするらしい。母は、先日そんなことを言っていた。
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