ある日、バンコクのスクンビット通りの夜。トロトロと目的もなく歩いていた。
屋台に座っているオカマ3人に声をかけられた。
「ここに座って一緒に飲まない?」って。
私は、座って、シンハビールを注文した。いやもしかしたら輪ゴムのようなメコンウイスキーだったかも知れない。
我々は意気投合して、彼(彼女?)の誘いに乗って、住んでいる所に遊びに行くことにした。誰かについていく時はいつも来た道順を忘れないように、注意深く彼らの後ろをついていく。
彼らの住まいは、いわゆるラブホテルであった。入った瞬間から照明は薄暗く、何かタイ映画のビデオが流れていた。そして部屋には、まだオカマが2人いた。
私たちは、最初はまだ談笑を展開していたのであるが、やがて、悲しく予想された通り、そのうちの2人がキスを始めたのを皮切りに、あれよあれよという間に一つのダブルベッドの上で、乱闘騒ぎになり始めた。
ヤバイ、私の背中に戦慄が走った。このままでは巻き込まれてしまうと、ウジウジしている間に、既に、まさぐられ始めた。
「これは本格的にヤバイぞ」という間にも、彼らの猛攻は続き、私は猛烈に焦り始める。
私は、カミングアウトするが、ヘテロであり、おまけに、いくらタッチングされようと、当然愚息もヘナチョコのままであった。
しかし、私の脳裏に一瞬だけ妙な考えが3パーセントぐらい走り始めた。
「まあ、一回ぐらいいいか」と。
しかし、私は、正に、理性の人であった。私は、不意に立ち上がった。
彼らに水を差してしまったのは申し訳ないが、私は即座に言い訳をした。
「今、私の泊まっているホテルに気持ちよくなる媚薬(麻薬)を置いてるから取って来るよ、待っててよ」と嘘八百万を発声した。
何故か分からないが、そのうちの一人が、「じゃあ、戻ってくるまでお金を預かっておく」と訳の分からないことを言い出し、3パーセントあった私の世知辛い思いはマイナス300パーセントになった。
私は、逃げるように、ホテルのドアを開け、とにかく適当に逃げていったのであった。
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