ペルセポリス
バスは祈りの時間のため、止まり、乗客は全員降り、メッカの方向に向かって地面に平伏す。すべてがイスラム。ぼんやりバスで待ち続ける。
シラーズからバスで七十キロ。タクシーで数キロ。正面が壁になり、そこで降りる。紀元前三三一年、アレクサンダーに滅ぼされるまで、インドから小アジアから中央アジアから北アフリカまで支配したアケメネス朝ペルシアの総本山、ペルセポリスの宮殿跡の壁であった。チケットを買うために事務所に入る。質素な建物にただひとつ、そしてここにもあったホメイニ師の肖像。
貢ぎ物を納め易いようにしているためか、階段の蹴上げ部分が低い。全景を見渡し、無言になる。観光客といえば家族連れが二、三組。石柱の落書きに愕然とする。数百年前の落書き。
周りは民家の一つも無く、まっすぐ褪せた色の大地が続く。閑散さに、何とか取り残された宮殿跡は、夢、夢の後の後で、国敗れて何とか草がちょろちょろ生えているだけだった。
アレキサンダーが嫉妬で焼きつきしてしまった宮殿。夢のあと。
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