サイケである。ゴーゴーである。反体制である。アヴァンギャルドである。公害問題勃発のさなかである。まだ4大公害病の原因も定かでない1971年、ゴジラシリーズ最高傑作ヘドラである。
イントロから切り刻まれたグロなマネキンがヘドロの上に浮かぶ。ヘドロがまたサイケ~!
こいつがヘドロから生まれたヘドラちゃん。赤いつぶらな瞳が凛々しい。
そういうゴジラが水爆の落とし子なら、ヘドラは公害の落とし子だ。海のヘドロを食い、どんどん成長、地上に上がれば煙突からの煙をどんどん吸い込むみさらに成長。しまいには硫酸ミストなる毒ガスを撒き散らして飛び回るようにもなる。最早手がつけられない訳。不死身なの。
あらすじ:駿河湾沖でタンカーが巨大生物に襲われる事件が頻発していた。事件の犯人は、海のヘドロから生まれた怪獣へドラだった。ヘドラは最初はおたまじゃくし状の小さな生物だったが、仲間を見つけると合体し、あっという間に巨大怪獣へと成長したのだった。そして巨大化とともに進化したへドラは、陸に上がれるようになり、また空も飛べるようになった。工場のスモッグを吸い、ますますパワーアップするヘドラ。ヘドラが行くところ、硫酸ミストが撒き散らされ、人々は次々と倒れていった。またヘドラの肉片を浴びたものはその強烈な毒性で一瞬にして白骨化するのだった。ヘドラを追って(?)上陸したゴジラも、不死身のヘドラには手を焼いていた。自衛隊はヘドラの体に強力な電流を流し、焼き殺す作戦を準備していた。
その頃、自暴自棄になった若者(柴俊夫)たちは富士の裾野で100万人ゴーゴー大会を開催しようとしていた。実際は100人しか集まらなかったが、ゴーゴー大会は決行された。しかし、そこにヘドラが出現。ヘドラを追ってゴジラも登場。自衛隊も交えて、地球の存亡を賭けた最後の戦いがはじまろうとしていた…。
しかし、ヘドロとどう関係あるのか、ジャニスジョップリンのライブの後ろのぶっとび映像を流しながら、サイケな女性が踊る踊る!
バンドマンもやるやる、やりまくる~。
ディスコでゴーゴー踊ってる若者達も、踊っているうちに、汚染された魚に変身!変身しても、まだまだゴーゴーはやめないぜ!!
地下のディスコにヘドロが落ちてきて、館内はパニックに。ヘドロには猫が!水俣病で震えてこけるあの猫だ!ボーカリストとその彼氏は、ヘドロを見に行こう!と外に飛び出て、車に乗る!何故か、車にはアングラと書かれた文字が・・・時代だなあ。
映画の途中途中に、ピンクフロイドのアニメ、「ザウォール」のようなサイケなアニメが挿入され、場を盛り上げる。これは、近隣の草木を食べながら、それをエサにどんどん成長する工場建物。
隕石とともにやっってきたヘドラがヘドロと合体していくのだが、宇宙の説明を博士がする。
毒ガスマスクつけてあるきましょうというニュースがアニメで流れる。おしゃれ。
主人公の博士であるが、ヘドラに硫酸をかけられ顔が溶けた。病人もモロ60年代である。黒電話に、おぼんに乗せた薬に急須。やはり病人は畳で安静でね。
ニュースの解説である。しかしながら、作品全体的にやるせなさ、というか鬱屈した雰囲気が漂っている。明るい娯楽作ゴジラシリーズに反し、この作品はあくまで悲観的な色彩が色濃く退廃的なデカダンなのだ。
オカベアナウンサー、テレビが70年代!見たい番組をキープするには、チャンネルを外して隠しておけ!
俺たちの心の中にしかもう緑はないんだ!100万人集めて反対運動だ!と何故かウッドストックを彷彿させられるのであった。
しかし、富士裾野に集まったのは100人。百万員が集まるフジロックフェスティバルまでまだ30年を待たねばならなかった。地元農民が、なんだあいつらという顔をして覗いているシーンも挿入されていた。
火をくべて、皆、逆上!踊れ踊れツイギー、ゴーゴー!ほんとヒッピーの集会状態だぜ!
そこに、ヘドラが現れ、若者達は火を投げて応戦。(応戦にはならない。)硫酸ミストをかけられ、一瞬にして若者達は白骨となった。これほど一般人が生々しく殺されるシーンは子供向け怪獣映画といえるであろうか!子供が見たらトラウマになるかもしれない。
まるで、
バタシー発電所のようである。
本作品ではサイケデリックな風俗を反映して、麻里圭子のボディ スーツにはサイケデリックなペイントが施され、いたずらに危機感をあおるアナーキーなヴォーカルが合計三回も披露されるのだ。
水銀 コバルト カドミウム
鉛 硫酸 オキシダン
シアン マンガン バナジウム
クロム カリウム ストロンチュウム
汚れちまった海 汚れちまった空
生きもの皆 いなくなって
野も 山も 黙っちまった
地球の上に 誰も
誰もいなけりゃ 泣くこともできない
かえせ かえせ かえせ かえせ
みどりを 青空を かえせ
かえせ かえせ かえせ
青い海を かえせ かえせ かえせ
かえせ かえせ かえせ
命を 太陽を かえせ かえせ
DVD特典では、カラオケも用意されており、私はもう一回見て歌ったのであった。感動である。皆も一緒に歌おうぜ!