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カテゴリ:読書感想
混沌が酩酊して混乱する。眩暈がする。
古川日出男の「サウンドトラック」は、まさしくカオスでした。 2009年・ヒートアイランド化した東京。神楽坂にはアザーンが流れ、 西荻窪ではガイコクジン排斥の嵐が吹き荒れていた。これは真実か夢か。 -ああ、神を信じることができるのならば- 読み進めていくうちに、何故か、「シャングリ・ラ」(感想はこちら)と「アラビアの夜の種族」が絡み合って、酩酊感に包まれる。2009年の東京のどこかで、國子が宙を舞い、アーダムが地下で哄笑する。 「シャングリ・ラ」の熱帯が、世界を席巻する病原菌が、「サウンドトラック」のそれと重なる。アーダムの作る地下迷宮が、「サウンドトラック」の傾斜人の棲む地下と重なる。 自分が今、何を読んでいるのか分からなくなる。 リズム感のある簡潔な文章に畳み掛けられて、視点が様々にぶれて、一体、誰が主人公なのか。 ともかく、読むのにエネルギーが要りました。 すごい!すごいよ古川日出男! 古川日出男作品は、1年に1作でいいと、本気で思いました。この溢れるエネルギーと疾走感は、多読できません。くらくらとした酩酊感は短期間では消化できない。 最初の数ページを読んだだけで、あ、この本は面白い、そんな予感が胸をよぎりました。そして、ページを捲る手が止まらなかった。作者の奔放な想像力が疾走する。 エピソードが多すぎて、まとまりがなくて、小説としての完成度は低いのかもしれない。満足すると同時に、不満も山ほどあります。 ヒツジコが何故東京を破壊しようとしたのかよく分からないし、聖の存在の是非も謎。トウタの孤独の描写が中途半端だし、レニの登場が唐突すぎる。 それでも、歌はここからはじまっている。短いセンテンスに、縦横無尽に詰め込まれたエネルギーにshootし尽くされてしまうのです。 あーもう、うだるような夏に読みたかった。クーラーじゃなく、扇風機に掻き回されたぬるい風に吹かれながら読みたかった。 そこには、破滅に向う東京と、カラスと、夏がありました。 決して読みやすい小説だとは思わないけど、嵌る人はとことん嵌ると思います。 そう、自分みたいに。 感想を読ませていただいた素敵サイトさま →本を読む女。改訂版 Hora de verdad rocketbooks 書館で本を借りよう!~小説・物語~ 本を読んだら・・・by ゆうき 本ある生活 書評風-読んだら軒並みブックレビュー お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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