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2010年05月08日
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テーマ:銀魂(1187)



5月5日の土方さん誕生日によせて、ぽっぽさんからSSを頂きました!

相変わらずのクオリティっつか、原作の雰囲気ダダ漏れなSSに浸らせていただきました♪





【わかれ】


「江戸?」
土方が言った。
前に腰掛けている近藤が頷く。
「一旗上げてみようかと思ってな」
土方は無言で素振りを再開した。
竹刀が風を切るヒュッという音が規則正しく繰り返される。
腕を振り下ろすごとに、長い髪が背中の後ろで微かに揺れ動く。
「いいんじゃねぇのか?」
袖で汗を拭いながら、土方が言う。
その様子から目を離し、近藤の眼は青空にふわふわと浮かぶ雲を捉える。
「皆ついてきてくれると思うか?」
そう言いながらも、近藤の笑顔は期待と自身に満ち溢れている。
「さぁな」
「ええっ!?」
近藤の顔が途端に崩れ、情けない表情へと変わった。
五月晴れの下、新緑の芽吹きが自然を明るく彩る中に落ちる、二つの影。
「少なくとも、俺はついて行くさ」
手の動きを止め、土方は近藤の方を見やる。
「アンタが決めたのなら、何処へでもな」
僅かに間をおいた後、近藤は歯を見せて豪快に笑った。
そして立ち上がると上から土方の肩に己の手を掛け、ぐらぐらと揺すった。
「お前が来れば百人力だな!!」
心底嬉しい様子で近藤が言うと、土方も柔らかに微笑んだ。


出立も迫ってきたある日のこと。
日はとうに沈み、大きな月が夜を美しく照らす。
近藤は自宅の戸が乱暴に叩かれる音を聞いた。
こんな時間に何かと扉を開けると其処には誰も居らず、
代わりに少し離れた所で、家の前を横切らんとする土方が目に入った。
「トシ!」
呼ぶと、土方は近藤に気づき、こちらに向かって来る。
「何だ?」
「今誰か此処にいなかったか?」
土方は周りを軽く見回すと、首を左右に振った。
近藤は腑に落ちない様子で眉間に皺を寄せたが、
それ以上その事について何も言わなかった。
「夕飯食べていくか?」
近藤が言った。
土方の手にはまだ竹刀が握られており、
まだ何も食べていないのだろうと考えたからだ。
「…いいのか?」
土方が遠慮がちに尋ねると、近藤は笑いながら土方を家に招き入れた。


「こんな遅くまで剣を振っているとはなぁ」
共に夕飯をとりながら近藤が言う。
土方は味噌汁を啜るだけで、何も答えない。
近藤は特に気にしなかった。二人の間ではよくある事だ。
「ミツバ殿にも知らせにいかんとな」
不意に思い出したように、近藤が言った。
「ミツバ殿がどうしたいかも聞かないと…」
「来ねぇよ」
近藤の言葉を遮り、土方が言い放った。
近藤は少々面食らい、少しもたついた後口調を元に戻してから尋ねる。
「ミツバ殿がそう言ったのか?」
「いいや」
「ならまだ分からな…」
「来ねぇっつってんだろ!!」
土方は立ち上がり、強い口調で怒鳴った。
近藤の驚いた様子を前に土方はハッとして、
一度咳払いをすると座り直した。
「体に障る」
それだけ言うと、土方は再び箸を取り煮物を摘まんだ。
暫くの間、無言が空気を支配した。
衣擦れや食器がぶつかったりする音以外は、何も音を立てるものは無かった。


「…トシ」
「あ?」
「ミツバ殿とは何か話したか?」
「何も」
土方は近藤を見ることもせず、即答した。
黙々と食べ続け、全て平らげると丁寧に食器を重ね、箸をその上に置いた。
「美味かった。ありがとな」
土方はそう言うと立ち上がり、
早くその場を離れたいと言わんばかりに玄関へと向かった。
竹刀を手に取り草履を履き、戸に手を掛けたところで近藤が言った。
「トシ、いいのか…?」
「何が?」
振り返った土方の顔に、夕餉の時に見せた険しさは何処にも無く、
その時の近藤にとっては些か不気味に思える程、いつも通りだった。


「…いや、何でも無い」
ただ、そう言うことしか出来なかった。












「…いや、何でも無い」
『じゃぁ聞くな』




『もう何も言うな』




玄関に立って見送る近藤の脳裏に、
夜道を歩く土方の後ろ姿から
聴こえる筈のない声が、聴こえた気がした。





【完】





実はここだけの話、ぽっぽさんからのメールで、SSの前書きとして

「SSです。土方さんHB(5/5)ですが、内容はHBじゃないです(-_-;)
真撰組の皆が上京する直前くらいの話。」


の「内容はHBじゃないです」のところで、土方さんHB(5/5)と書いてあるにも関わらず、
HB………?┐(゚⊇゚)┌ HBって何?

………………………………
………………………………
………………………………
………………………………
………………………………
………………………………

ハッΣ(゚ロ゚〃)、ハードボイルドってことか!!

と、実に気持ちよく勘違いしてしまい、読み終わった後非常に恥かしかったです(笑)←台無し

以下、ぽっぽさんの後書きっていうか、解説です。

「一応この夜は土方さんがミツバさんをフッたのと同じ夜というコトで。
近藤さんの家に訪ねて来たのは総悟君です。
ショックで訳が分からなくなって気づいたら近藤さん家に来ていて、でも土方さんもコッチ方向に歩いて来たんで逃げたという設定です(←分かるわけねぇ(-_-#))

総悟君は誰かに頼るとか相談するとか、絶対しない気もしたんですが、以外と分からないなぁと思ったので、無意識にって感じにしてみました。


『じゃぁ聞くな』
『もう何も言うな』
のセリフは土方さんが実際に言ったモノでは無いです。
『口出す気が無いんなら最初から聞くな』
『もう決めたんだから、これ以上何も言うな』
というニュアンスなつもりです。」


ぽっぽさんの解説を読むと、更に切なくなっていけません。
ぽっぽさん………恐ろしいコ!( ̄□ ̄;)!!

というわけで、

ぽっぽさん、ありがとうございました!☆(≧▽≦)☆!

最近開設されたぽっぽさんの素敵ブログはこちらです。→【popponoblog】


SSはこちらにまとめてます。⇒【頂き物(ss)】



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最終更新日  2010年05月08日 16時01分13秒
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