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かずはの日記

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2010年07月04日 楽天プロフィール Add to Google XML

 【真昼の月】<三> 銀魂(19417)」
[ いただきもの(SS) ]    


※「銀魂」二次創作です。


 【真昼の月】<三>


十三日目 ( あんぱん好きに悪いやつはいない )
今日の彼女は、いつも以上にかわいかった。
どこか上の空で、バーコードで読み取るのをあんぱんひとつ分忘れて、指摘すると平謝りだった。
「そんなに誤らなくたっていいってば」
「でも、ごめんなさい。あたし、今日ずうっと考え事しちゃって」ちょっと伏せた目元が、なんだか色っぽい。
「ねえ、山崎さん。今度、私の話聞いてくれますか?今は言えないんだけど、山崎さんにちょっと聞いて欲しいことがあって」
「何かな?え、僕なんかでいいの?」
こくりとうなずいて、うっすらと赤くなった彼女の頬から目が離せなかった。彼女はそれ以上は恥ずかしがって、何も言ってくれない。それを見てると、どきどきしてきた。

待ちに待ち続けていた日がやっと来るんだー。なんだか町中に大声で触れ回りたい気がする。
誰かに聞いて欲しいけれど、喋った途端に邪魔をされるのが分かっているから、すぐにあきらめた。今度、新八君に会ったときにでも聞いてもらおうか。


十四日目 ( 男山崎、任務に燃える )
現場に大きく動きがあった。
彼らの仲間以外に人の出入りがあったのだ。過激攘夷派の幹部が二人、手下を連れて数人でやってきた。急いで聞き耳を立てに向かう。待ちに待ってた動きだ。
七日後、ターミナルと大規模なイベント会場とを同時に爆発させて、騒ぎを起こす算段のようだ。連中の言葉を一言一句聞き漏らさないように俺は努める。
副長にすぐさま報告し、尚も連中から注意をそらさないようにして、俺はその日を一日過ごした。


十五日目 ( あんぱんは、所詮、あんぱんだ )
いつものようにあんぱんを買いに店に向かった。レジの佐藤さんへにこやかに挨拶をして、棚からヤマ咲と生クリーム入りのあんぱんと、富士のこしあんを籠に入れ、牛乳を選ぶ。真剣に検討していると、誰かが店へ入ってきた。
「い、いらっしゃいませ」
佐藤さんの声はいつもと違って小さかった。何があったんだろうと、そちらを向く。

副長だった。

いつもの黒い着流しを着て、ちらりとも俺を見ずに並んでいるあんぱんの前に立つ。袋も見ずに端から適当に三つ拾うと、そのままレジへと向かった。いかにも副長らしい選び方だ。
副長はあんぱんを買うと、さっさと店を出た。きっと俺の仮の住まいにまっすぐ向かうんだろう。急がないと、あとでどやされる。俺は、特濃牛乳を掴んでレジの前に立った。
「や、山崎さん」
佐藤さんはぼうっとして、俺の顔を見ると見る間に目が潤んだ。
「どうしたの?今の人になにかされた?」
「違うんです」ぶんぶんと激しく頭を振って、彼女は俺の手を取った。
彼女に手を取られて、俺の顔は熱くなった。そんな俺の態度に、佐藤さんは全然気がつかなかった。
「山崎さんに相談したかった事って、あの人の事で。私、私あの人の事が好きなんです」
恥ずかしそうに彼女は両手で頬を押さえた。

ああ、やっぱり。

俺の頭に、そんないつもの言葉が浮かんだ。
やっぱり、俺って『山崎退』なんだなあ。
彼女へ何を言って、どうやってその後で店を出たのか覚えていなかった。
はあっと腹の真ん中から何か大事なものがでるような音を立てて、大きく溜息をついた。
自分の仮の住処へと戻りながら、空を仰ぎ見た。下を向いていたら、大切なものが零れてしまいそうだった。

青い空には月がぽっかり浮かんでいた。
真っ昼間の、月。

ああ、俺みたいだ。

太陽がすでに存在しているから、静かに白く光っていたって誰も気にしない月。
夜と違って、主役ではない月。
夜の明るさの半分も光らない、昼間の月。

半分になった下弦の月は、俺みたいにひっそりとして誰かに知られることもないまま、空に浮かんでいた。





十六日目で、今回のあんぱん生活は終わりを告げた

攘夷浪士による同時爆破テロは未然に防がれた。乗り込んでいった実行部隊の華々しい活躍を伝える写真が載った新聞を、俺は町で入った店の食堂で眺めた。客が感心しながら沖田隊長のどや顔を褒めているのを、カツ丼を食いながら他人事のように聞いた。新聞には当然、俺の名前はなかった。

いつものように、面通しだの裏づけだので数日は忙しかった。
屯所で実行部隊の面々が、得意げになって当時の様子を語る。何人切っただとか、現場の状況はどうだったとか、マスコミや野次馬が山ほどいた話。取調べに関わった人間は、連中の様子を少しこぼす。どんな面構えだったか、脅したら簡単に自供したとか反対にいつまでも口を割らないとか。

俺は、いつものように何も語らない。
飯を食って、何があったかは口外せず、副長の指示に従うだけだ。

ようやく騒ぎの収まった数日後、仮の住まいへ後片付けに戻った。
あんぱんの空袋や牛乳の空きパックが、ひどい匂いになっていた。窓を初めて全開にし、ゴミは全部ビニール袋へ放り込み、畳を掃き、雑巾であちこちを拭いた。
空っぽになった部屋で大きく背伸びをして、ごろりと横になった。
これで、今回の任務も終了。
無事に終わったことに安堵して、天井を見ていると力が抜けた。

部屋を出て、コンビニスズキに以前のように向かった。
足が勝手に向いちゃって、という言訳けが頭に浮かんだ。佐藤さんに会いたい気持ちと会いたくない気持ちが両方あって、ほんのわずかに勝った会いたい気持ちが俺の足を進めていた。
レジにいたのは彼女一人だった。
いつものように店名の入ったエプロンをつけて「いらっしゃいませ」と、明るい声がする。
ヤマ咲のアンパンと牛乳をひとつずつ。それだけ籠に入れて、レジに向かった。

「山崎さん、どうしてたんですか?最近お見かけしないから、心配してたんです」
彼女は本当に心配そうに俺を見ていて、俺は申し訳ないような気持ちと脱力感でいっぱいで、なんだか泣き出したいような気がして、胸が痛くなった。
「いや、移動になっちゃったんだ。急に決まった話で、今日はこちらを引き払いに来たんだ」
なんでもないことのように装いながら、淡々と笑顔で告げた。慣れたもんで、こういう嘘が上手くなる。
「そうだったんですか。じゃあ、今日でお別れなんですね。せっかく山崎さんと仲良くなれたのに残念です」
彼女が本当に寂しそうな声で言うから、全部打ち明けてしまいたいような気持ちになった。
「ごめんね。俺の仕事、移動が多くてさ。俺も佐藤さんと離れるの残念だよ」
「山崎さん、お体に気をつけてくださいね。また、お仕事でこちらへ来ることがあったら、必ず寄って下さい」
 
名残惜しそうに語る佐藤さんと作り笑顔で握手して、俺は店を出た。
仮の宿へと帰るいつもの道とは反対のほうへ、俺は歩き出した。
「山崎さん、待って」
自動ドアの開く音がして、佐藤さんの声がした。そんなことは絶対に『山崎退』にはないって分かっているのに、馬鹿な俺は漫画的なありえない展開をつい期待してしまう。
振り向いた俺の前に立っていた佐藤さんは、コンビニの袋に山ほどあんぱんを入れていて、やっぱりなと俺は自分を笑った。
 
「食べてください。あんぱん、お好きでしょう?」
彼女の背後に、真昼の月が昇っているのが見えた。
 
「好きです、大好きです」
 
二人で袋の中いっぱいのあんぱんを見て、俺にそれを手渡すとまた握手をして、涙目でさびしそうに別れの言葉をもう一度言い、彼女は後ろを向いた。
 
「あら、きれいな月」

小さい声で呟くと、彼女はしばらく月を眺めて、もう一度俺のほうを向いて今度は笑顔で手を振った。
俺は、真昼の月も存外悪くないような気がして、あんぱんを食べながら歩き出した。










多分、皆さん、私と同じ感想を持ったんじゃないかと思うんですが、
りぴーとあふたみー。

rubydredredさんって、あんぱん博士?( ̄□ ̄;)!! 

みたいな(笑)

うぐいすあんのあんぱんが無償に食べたくなりました。
あんぱん万歳♪ 山崎万歳♪ rubydredredさん万歳♪


最終更新日  2010年07月04日 12時17分30秒
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