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2006/03/12
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カテゴリ:高田崇史
「QEDシリーズ」の4作目,

高田崇史の「QED東照宮の怨」

を読んだ。

前作「ベイカー街の問題」で年明け早々に殺人事件に巻き込まれた年の9月下旬から。

棚旗奈々と桑原崇は,事件が起こるときは頻繁に会っているのだが,インタバルの期間(例えばこの年の2月~8月)はどうなんだろう? あまり会っているようにも思えないが……,などとつまらないことも気になってしまう。

ついでに,この巻から外嶋一郎の親戚である相原美緒(20)が結婚退職した森江達子のかわりに「ホワイト薬局」の事務アシスタントになった。

外嶋に押しつけられた学校薬剤師会の親睦旅行で日光に行った奈々がたまたま桑原,小松崎良平と出会ったことから,またまた事件に巻き込まれる。

今回は六歌仙の二乗の三十六歌仙。

後水尾天皇から贈られ,東照宮拝殿の長押の上にかけられた三十六歌仙絵巻の歌が,崇の覚えていた「佐竹本三十六歌仙絵」の歌と大きく違うことから始まり,奈々の「日光結構」という言葉をきっかけにして,彼は,
1 日光,江戸,鎌倉を結ぶラインと久能山,鳳来山,岡崎,京を結ぶラインで,家康が天皇家を封じ込めようとしたこと
2 家光が,弟の忠長の干支であるが故に日光に馬の彫刻を許さなかったこと
3 後水尾天皇の三十六歌仙の歌は徳川幕府の流れを打ち切る呪として下賜されたこと
4 大僧正天海は家康の思惑を超え,日光を日光菩薩,月山を月光菩薩になぞらえることで,自らの生地会津を薬師如来のいる「世界の中心」に仕立て上げたこと
などを明らかにする。

現実の事件は,没落した佐竹家から大正期に売りに出され,財閥トップがバラバラに切り分けて買い取った三十六歌仙絵をめぐって起きた。
「小大君」の絵はもち主が留守の間に盗まれた。
「斎宮女御」のもち主は,右手を手首から切り落とされ,左脚はひざの下をほとんど切断され,その他何か所をも切られた瀕死の状態で妻に発見され,「かごめ」という言葉を残して死亡した。
「紀貫之」のもち主は,鉈で後頭部を殴られて殺された上,両手両足を切断されて発見された

崇は,三十六歌仙絵の盗難が犯人松丸によるめくらましであり,事件の真相は日光と会津のラインをリゾートホテル建設によって断ち切ろうとした八重垣を許せなかったことによる犯行だという。

ここで,現実の事件と崇が解き明かしたが完全にリンクし,さらに犯人はなぜ手首やひざの下を切断したのか,次の犯行で凶器や切断の仕方が変わったのはなぜか,などなどの理由もわかってくる。

まあ,ここまでくるとダイナミックすぎて,推理どころか想像の及ぶところでもなく,つまりは,優歌子との関係で犯人の見当はうすうすついていたものの,動機も行動の理由も全くわからなかったのだが,なんとなく納得させられ,おもしろかった。

もちろん,「たかがそんなことで,自分と他人の命まで賭けるか?」という小松崎の疑問には同感であり,「玄関から台所までの通路に犬小屋」の例を出されても納得できるものではない。
そもそも,それほどの怒りを覚えるならそもそも秘密を八重垣に漏した中込を最初に殺せよ! ということであり,崇が解明したラインの秘密がそんなに簡単に漏れたり断ち切られたりする性質のものなら,なぜ江戸の初期から現在まで秘密が守られていたのか? ということなのでもある。

また,「かごめ」が「華甲(かこう)め」だとの謎解きは非常に苦しかった。

しかし,それもこれも,大好きな挿入地図があったので,どうでもよいことにしてしまおう。
それほど,ミステリ中の地図は,それが適切なものであればだが,好きなのだ(笑)

ちなみに,「かごめ」の謎解きのほうと同じ「言葉遊び」を調べたところ,喜寿,半寿,米寿,卒寿,白寿,破瓜がみつかった。それぞれ,七十七,八十一,八十八,九十,九十九,女十六男六十六歳を表している。

シリーズ前作「QEDベイカー街の問題」の日記は,→こちらから,
次作「QED式の密室」(かなり前に読みました)の日記は,→こちらからどうぞ。

高田崇史の他作品はについての日記は,フリーページ 読了本(日本) (高田崇史)からごらんください。


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Last updated  2006/03/12 12:24:00 AM
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