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カテゴリ:外国映画
誰もが知っているような有名な作品に限って、意外と観ていない人が多い。
伝え聞いただけで見た気になって、知ったかぶりしているのだ。 この作品も知名度に反して、意外と観ていない人が多い… 1885年5月。 ルーマニア辺境のトランシルバニアの山道を歩む人の姿があった。 ジョナサン・ハーカーだ。 彼は、ドラキュラ城を目指していた。 城主のドラキュラ伯爵に司書として雇われたのだ。 日が落ちる前に着いたが、城には誰もいない。 しかし、今の暖炉には火が入っている。 テーブルの上には伯爵からのメモと食事の用意がしてあった。 メモには、所用で出迎えることができない旨と非礼を詫びる内容が書かれている。 やむなくハーカーが荷解きをしていると、いつのまにか近くに女性が立っていた。 彼女は「ここから連れ出して欲しい」と懇願する。 事情がわからずに困惑していると、突然何かに怯えたように去ってしまう。 ハーカーが何事かと振り向くと、階段の一番上に人影があった。 ドラキュラ伯爵である。 彼は、ハーカーを部屋に案内すると、翌晩まで再び出かけて不在になるということを伝えて去ってしまう。 自分の家のようにくつろいで欲しいという伯爵だったが、言葉とは裏腹に部屋は外から鍵をかけられて軟禁状態にされてしまう。 やがて明け方も近い頃、カチリと鍵のはずれる音がする。 慌てて扉を開けるが、人の姿はない。 鍵を開けた人物を追って広間に降りると、先刻の女性だった。 彼女は、再度「ここから連れ出して欲しい」と懇願する。 ハーカーが事情を尋ねるのだが、言葉を濁して語ろうとしない。 が、何かに怯えていることは確かなようだ。 ハーカーが抱きついた彼女をなだめていると、彼女は突然ハーカーの首筋に噛みついた。 伯爵が戻ってきたのは、慌てて身を離すとほぼ同時だった。 彼は怒って、乱暴に彼女を突き飛ばす。 間に割って入ろうとしたハーカーも部屋の隅に投げ飛ばしてしまった。 意識を失うハーカー。 彼が目を覚ますと、既に日は傾き、まもなく日没を迎えようとしていた。 ハーカーは、自分が血を吸われて吸血鬼にされかけていることに気付き、愕然とした。 彼は手短に自分の状況を日記に書き残すと、その日記を城の外へ隠し、伯爵の眠る墓所へ向かった。 彼が司書として潜入したのは、吸血鬼を滅ぼすためだったのだ。 自身が吸血鬼にされかけている今、彼に残された時間は少なかった。 墓所には、案の定石棺に横たわる伯爵と女の姿があった。 ハーカーはまず、女吸血鬼に白木のくいを打ち込んだ。 断末魔の悲鳴をあげる吸血鬼。 残るは伯爵だけと目をやれば、石棺は空っぽになっている。 そう、女吸血鬼にくいを打ち込んでいるうちに日没を迎えてしまったのだ。 墓所の入口に立つドラキュラ伯爵の姿を目にしたハーカーの瞳に恐怖の色が広がっていった… 言わずと知れた吸血鬼映画の最高峰。 傑作中の傑作だ。 これだけたくさんの吸血鬼映画が作られる中、未だにこれを越えたという不動の評価を得た作品が誕生し得ないのは、ドラキュラ伯爵を演じたクリストファー・リーの魅力に他ならないだろう。 一時期は、そのイメージが強すぎて役柄に恵まれなかったのは不幸だったが… 実はこの作品、かなり原作を大胆に脚色している。 このことは、意外と知られていない。 ハラハラしながら物語を楽しむのもいいが、原作小説との相違点をチェックしながら観るのもまた一興だろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/07/07 06:49:01 PM
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