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江戸風流　春蝶亭雑記

[読書] カテゴリの記事

全47件 (47件中 1-47件目)

『死んだらおしまい、ではなかった』。

◆大島祥明『死んだらおしまい、ではなかった　2000人を葬送したお坊さんの不思議でためになる話』（PHP研究所）　最愛の人を送り出した後、みなさんが「大丈夫、絶対成仏しているよ」と言って下さいましたが、どうしても心の整理がつきませんでした。　この本は、浄土宗のお坊様が、2000人以上のかたの葬儀を通して感じたことをお書きになったものです。心に響くことが、たくさん書かれていました。死とは何か。葬儀や供養とはなにか。故人に伝わる祈りとは何か。やっと納得のできる答えを、この本の中に見付けました。今、このタイミングで出会うことが出来て良かったと思います。

2010年06月29日

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『チョコレート　ビースト』。

早めに仕事が終わって、本屋へ行って本を買って、カフェで昼食をとりながら読みはじめ。加藤実秋さんの『インディゴの夜』を読んだのが、かなり前のこと。今日になってやっと、続編の『チョコレート　ビースト』を買って読みはじめ。渋谷にあるちょっと変わったホストクラブを舞台に、そこへ持ち込まれる事件をオーナーとホストたちが協力して解決していきます。ドラマ化されて、フジテレビでお昼に放映中なので、録画して見ています。ドラマは小説と微妙に設定を変えて、役者さんの特性を生かしてます。主人公でクラブオーナーの晶さんを、女優の森口瑤子さんがとてもステキに演じていて、それが楽しみ。男の子たちにはあまり興味がなかったんですが（というか私はいわゆるイケメンにほとんど興味がわかないのです）、憂夜さん役の加藤和樹さんはちょっとステキかも。最近のささやかな楽しみです。

2010年01月21日

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平野啓一郎と『鴨川ホルモー』。

久しぶりに本を買って読む気になりました。優秀すぎる高校の後輩、平野啓一郎くんの新刊新書と、気になりつつ読んでいなかった『鴨川ホルモー』。しかし『夜は短し歩けよ乙女』と『鴨川ホルモー』を思春期に立て続けに読んでたら、「京都の大学に入って青春した～い！」なんて妄想をうっかり抱いてしまったかもしれない。

2009年04月16日

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『グラスハート』完結。

虫も目覚める「啓蟄」でしたね。日本橋へ行く用があったので、丸善に寄りました。綺麗でハイクオリティで手の届かない文房具等を見て楽しみました。少し前に、若木未生さんの本『イデアマスター』が出たことを知っていたので、検索システムで探して、さらに書店員さんに探してもらって、入手。『ハイスクールオーラバスター』というライトノベルズで有名な作家さんですが、私は平行して連載されていた音楽の話『グラスハート』シリーズが好きで、読んでいました。最初は集英社のコバルトシリーズだったんですよね。で、挿絵が橋本みつるさん＆ハチクロの羽海野チカさん。若くして音楽業界で成功し、疲れて引退していた天才・藤谷直季。彼の元に高岡尚、坂本一至、西条朱音が集まって結成されたバンド「テン・ブランク」の軌跡を描く話。キャラクターが魅力的だったのと、独特のたたみかける文体が好きで。その最終巻『イデアマスター』、幻冬舍バーズノベルズから刊行されました。実は連載開始から、約２０年？もかかって完結した、南総里見八犬伝みたいな作品です（笑）。読み始めた頃は、若かったのでリアルに青春の痛みを感じつつ、思い入れたっぷりに読んでましたが。最終巻はオトナ組の立場で、うんうんと思いながら読みました。いや～、あたたかく、きれいに終わりましたね。読んでいただいてありがとうございます。楽しんでいただけましたか？人気ブログランキング良かったら、バナーをクリックして投票して下さいね

2009年03月05日

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「シマシマ」と風水の本

◆山崎紗也夏「シマシマ」３（講談社）◆李家幽竹「運のいい人の仕事の習慣」（光文社知恵の森文庫）「シマシマ」は帯につられて最初買ったら面白かったコミック。眠れない女性に「添い寝」による安眠を提供する会社を作った女性経営者と、そこで働く男の子たちが織りなす人間模様の話。社長のシオさんに、働く女性はかなり共感できるのではないでしょうか。人を癒す仕事（昼はエステ、夜は添い寝屋）をしながら、自分は癒されず眠れないシオさんと、人の心に敏感な男の子たちの悩みと成長がおもしろいです。男の子達では、気遣いと包容力の男ランちゃんがいいなあ。私は占いはあまり気にしませんが、風水はちょっと気になります。李家幽竹さんの提案する風水は、かわいくておしゃれなので好きです。李家さんは「～してはいけない」という言葉遣いや、悪い事を極力言わないようにする風水師さんで、そんなところが好きです。読んでいただいてありがとうございます。楽しんでいただけましたか？人気ブログランキング良かったら、バナーをクリックして投票して下さいね

2008年12月22日

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『江戸博覧強記』

◆『江戸博覧強記』江戸文化歴史検定に興味があります。今年で第三回になるそうです。とうとう、公式テキストを買ってしまいました。二、三級用のテキストもありましたが、ちょっと物足りないので、いきなり一級用のテキストを買いました。受験は二級からしかできませんがね。二級の認定書がかっこいいんだよな～。しばらくがんばって勉強してみます。江戸文化歴史検定の公式ホームページはこちら。読んでいただいてありがとうございます。楽しんでいただけましたか？人気ブログランキング良かったら、バナーをクリックして投票して下さいね。

2008年03月07日

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有栖川有栖『女王国の城』。

◆有栖川有栖『女王国の城』（東京創元社）卒論執筆中の江上先輩が、新興宗教「人類協会」の聖地・神倉へ行ったと思われる痕跡を残して消えた。アリス・マリア・望月・織田の四人はレンタカーで神倉へ。無事先輩は見つかるが殺人事件が発生。「城」と呼ばれる総本部から出られなくなる。モラトリアムな学生達の青春の香りが好きで楽しんで来た「江上先輩・学生アリス」シリーズだけれど、江上先輩はもうすぐ卒業。就職活動をしているメンバーも。そして作家の有栖川有栖の、技のきいた円熟した文章が楽しい。十分堪能。読んでいただいてありがとうございます。楽しんでいただけましたか？人気ブログランキング良かったら、バナーをクリックして投票して下さいね。

2008年02月23日

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辻村深月『ぼくのメジャースプーン』

◆辻村深月『ぼくのメジャースプーン』(講談社ノベルズ)　小学四年生のぼくは、同じクラスのふみちゃんが好き。ふみちゃんは頭が良くて大人っぽく、誰とも仲良くしているけれど、誰ともなじんでいない。ぼくはそんなふみちゃんの一番近くにいるのは自分だと思っていた。ふみちゃんがかわいがっていた、学校で飼育されているうさぎが無惨に殺された。犯人は第一発見者のふみちゃんにひどいことを言い、犯行の様子とふみちゃんの画像をネットにさらした。それ以来、ぼくの呼びかけにも反応せず、ふみちゃんは心を閉ざしてしまった。実はぼくには、不思議な能力があって、それに気付いて以来、その力を封印しようとし続けてきた。でもうさぎ殺しの犯人がつかまったと聞いて、ぼくはその能力を犯人に対して使いたいと考える。ふみちゃんのため、犯人がずるがしこく隠している本心を明らかにするために。　この作者は本当に、思春期の少年少女の複雑な痛みを描かせたら最高に巧い。小学校四年生のぼくが一人称の語り手なのだが、ぼくの感じるつらさや悩みは、誰もが一度は感じたもので、それをとてもリアルに感じながら読み進められる。読み終わって「面白かった！」と思える一冊。

2007年10月18日

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『片付けられない女魂』。

◆夏目♀『片付けられない女魂』（扶桑社）表紙の画像は、片付けはじめる前の部屋の写真だそうです。少し前に記事を出しましたが、この作者夏目さんのブログの大ファンで、楽しみにしてました。え～、HPのブログにしか書いてないこともあれば、本にしか書いていないこともあります。ブログではさんざん笑わせてもらいましたが、本ではほろっとさせられました。「片付けられない」には、いろいろと理由があるもんです。

2007年09月14日

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北村薫『玻璃の天』。

◆北村薫『玻璃の天』〔収録作品〕幻の橋／想夫恋／玻璃の天女子学習院と思われる学校に通う令嬢・花村英子と、お付きの運転手・別宮みつ子（べつくみつこ・愛称ベッキーさん）シリーズの二作目。収録される三編はすべて異なる事件を扱うが、過激な思想家・段熊荒雄という人物がどれにも登場しており、結局この人物がこのシリーズ最大の謎・ベッキーさんの素性に大きくかかわっている。第二次大戦直前の緊張した世相の中で、何とか自由で伸びやかな心を保とうとする令嬢の姿に好感。「幻の橋」に描かれる帝国図書館の様子や明治期浮世絵の魅力。「想夫恋」に描かれるウェブスターとミステリについての論。北村薫が作中で投げかける、古今の文学作品のちょっと違った角度からの評価はいつもとても面白いが、今回もそれが冴える。しかし気になるなあ。「大和撫子」っていつから使われはじめた言葉だろう？

2007年08月16日

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森見登美彦『きつねのはなし』

◆森見登美彦『きつねのはなし』〔収録作品〕きつねのはなし／果実の中の龍／魔／水神四編の「不思議」を描いた短編を収録。「夜は短し～」「太陽の塔」を読んだ後にこれを読む。このルートで読むと、作風の違いに驚く人が多いらしいが、私はそうでもなく。京都を舞台に不思議な世界を描くという点では、「夜は短し～」に通じると思った。浪漫とユーモアに転べばあちら、怖さと暗い静けさに転べばこちら。表裏一体。物語る技術の巧さでは期待を裏切らない作家だ。

2007年07月10日

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『容疑者Ｘの献身』。

◆東野圭吾『容疑者Ｘの献身』またまた読書感想久しぶり。近頃さっぱり読む余裕がありません。東野圭吾の直木賞受賞作。大方の意見はそうだと思うが、この作品が特に優れているということではなく、これまで一定のレベル以上の作品を常に書き続けてきた東野圭吾への功労賞が、この本というタイミングでやってきた、ということだろう。この作品に対する評価は、石神という人物のキャラクターが具体的にイメージできるかどうかで分かれるだろう。靖子という女性の魅力が理解できないという評も多く見かけたが、多分、作者は彼女を「一般的に」魅力的な女性として書くつもりは無かったんだと思う。私は、石神の眼から見た、靖子と娘の第一印象の描写だけで十分だと思った。というわけで、「容疑者」が誰をさすかは、かなり早い段階でわかってしまう。そして、途中から「あれ？何か変だ」と思ってひっかかっていた部分が、真相につながった。ラストシーンはとてもせつない。だからといって、事件に関わった人々が、ほかにどんな道を取れば良かったのか、という答えも出せない。嘘の上に苦しみながら生きていくよりも、どんなにつらくてもそれが「真実」なら受け止めて生きよう、という選択を、登場人物はしたのである。

2007年05月26日

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『ユカリューシャ』。

ココロが沈みがちで自分が信じられぬと弱音を吐いておりましたが、こんな時こそ頼りになるお友達は本です。というわけで、常に孤独で、常に評価にさらされていて、挫折を経験したことがある人の話を読みたいと思いました。伏線として槇村さとるの『Do Da Dancin！』を読んでいたら少し癒されたというのがありまして。仕事関係でリアルに精神が落ち込んだ時、結構槇村さとるはききます。『おいしい関係』もいいですよ。行きつけの図書館の検索で、バレリーナの手記を探していて、めぐりあったのが、東京バレエ団の齋藤友佳理さんの手記『ユカリューシャ　奇跡の復活を果たしたバレリーナ』でした。プロフィールを見ると、私と同年齢で、お誕生日が１日違い。運命？ロシアバレエに魅せられ、「鉄のカーテン」時代のロシアに短期留学を繰り返して学び、ロシア人バレエダンサーのご主人と結婚。息子さんを出産。舞台上で左足靱帯断裂という怪我。再起不能と言われたけれど、奇跡の復活。何だか、学ぶ事がたくさんあったなあ。・自分はどんなタイプのバレリーナなのか、をしっかり見つめて判断し、そこを延ばす。無駄なコンプレックスは持たない。・舞台人はたいていジンクスを持っている。失敗できない状態で極度の緊張を感じるのは誰でも同じ。・目標達成に大切なのは緊張感と集中力。「自分」をしっかり持つ。面白いと思ったエピソードがひとつ。ロシアのダンサーは、本番前日、リハーサル以外で作品の曲をなるだけ聴かないようにするそうです。それによって曲を聴きたいという欲求や、あそこではこう踊ってというイメージを極限までふくらませておくと、本番の舞台で曲を聴いた時、大きな感動を感じ、それによって豊かな表現が導きだされるそうです。でね、緊張をやわらげ、エネルギーを得る食べ物は、「熱い紅茶とチョコレート」なんですって。真似しようかな。ネットで検索してみると、齋藤さんは現在もご活躍の様子。演劇や舞台好きの私ですが、実はバレエとオペラは未経験。いつか絶対生で鑑賞したいんですけどね。とりあえず勤務先の学校には、バレエの映像資料がたくさんあるので（なぜ？でも生徒で習っている人も多いみたい）、借りて鑑賞してみようかな。

2007年04月07日

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『夜は短し歩けよ乙女』。

◆森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』（角川書店　2006.11.30）　某大学詭弁論部に所属する「黒髪の乙女」は、人生を美しく調和のあるものにするため、無邪気な好奇心の赴くまま歩き続ける。夜の先斗町飲み歩き（第一章　夜は短し歩けよ乙女）、夏の下鴨糺ノ森の古書まつり（第二章　深海魚たち）、秋の学園祭ゲリラ演劇参加（第三章　御都合主義者かく語りき）、流感に倒れた知人の見舞い（第四章　魔風邪恋風邪）。そして彼女に一目惚れし、どうにかして思いを伝えようと、彼女の姿を追っては外堀を空しく埋め続ける「先輩」。二人の間には、さまざまな魅力的な人物たちが現れては関わっていく。元・錦鯉養殖センター経営者の東堂さん、鯨飲する美女羽貫さん、学生天狗の樋口さん、古本市の神を名乗る少年、織田作之助を読む謎の和服美女、美男の学園祭事務局長、吉田神社に願をかけたパンツ総番長、その他劇団員・古書店主・料亭主人・結婚した面識のないＯＢ等、一癖も二癖もある人物たちの中で、最も謎めいている老人・李白さん。自家用三階建てバスで移動する李白さんは、「偽電気ブラン」を乙女にふるまい、「夜は短し歩けよ乙女」とささやいて、彼女を未知の世界へ誘った人物であった。約一年間乙女をおいかけ続け、恋心を自問自答し続けた「先輩」の思いは果たして成就するのか？　この小説の面白さを三・四割増しにするほど貢献しているのは、関西在住のイラストレーター中村佑介氏による表紙の絵であろう。アジアンカンフージェネレーションのＣＤジャケットで知られる彼は、「日本の少女シリーズ」というポストカードも販売しており、素朴でかわいらしくノスタルジックな雰囲気の少年少女を描くことを得意とする。この作品のイラストを彼にしたことは、大正解である。作品を読み進めると、表紙のイラストが動いているような錯覚に陥る。細部まで凝っているイラストなので、作品と照らし合わせてじっくり隅々まで眺めてみることをお勧めする。　文体が魅力的である。話は「黒髪の乙女」視点と「先輩」視点が交代で現れ、時にそれが交差しながら進んでいく。乙女は無邪気にかわいらしく独特の言い回しで語り、先輩はもんもんとした恋心を抱えつつ、時になさけない様子で語る。二人の語りの中で、古今東西の文学や漫画からさりげなく引用される言葉。そういえばこの二人は詭弁論部員であった。この語りの調子がとにかく遊び心にあふれていて楽しい。現実と架空世界の狭間に漂っているような気分に浸りつつ、終わりまで楽しく読むことが出来る。不幸にして作者の他作品を読んだことがないのだが、かなり「語りの手練れ」であるとお見受けする。　乙女が歩く世界の何と魅力的なことか。個人的には第二章の古本まつりが身近に感じられて楽しかったが、第三章学園祭のゲリラ演劇と韋駄天コタツは爆笑。出来ることなら学生時代に戻ってやってみたいくらいだ。それともこの催しにはモデルがあるのだろうか。いいな、プリンセス・ダルマと偏屈王。ははは。そしてコタツで鍋を御馳走になりたい。　話のラストシーンの舞台となった店に、昨年の夏行った。我が大学院の恩師が学生だった頃からあるという老舗である。大きな窓と、窓際にある大きなテーブルが印象的だったのだが、「先輩」があの席に座ってもんもんとしながら「乙女」を待っている姿を、たやすく想像することが出来た。あの光あふれる窓際の席（もう勝手に決めている）で、先輩と乙女は楽しい時間を過ごすことが出来ただろうか。

2007年03月15日

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若竹七海『閉ざされた夏』。

◆若竹七海『閉ざされた夏』（講談社文庫　1998.7.15）　読書に費やす時間が以前に比べて減ってしまい、多くの本を読めずにいる。出来れば興味深い面白いものを読みたいのだが、選ぶカンさえ鈍ってしまっている。「ミステリが読みたい。それも頭を思い切り使って注意深く読み進めて、読み終わった後に達成感が得られるもの！」と思い続けていて、それは本格ミステリというやつですか？と結論づけた。というわけで、以前読んで面白かった作家の作品を掘り起こして発見したこの一冊。　高岩グループという巨大企業が町の経済を一手に握る地方都市新国市。昭和初期に夭折した作家・高岩青十の出身地で、自宅は市立の文学記念館となっていた。勤めていた会社の倒産で文学館の学芸員に転職した佐島才蔵は、マイペースに資料整理や保管、研究をすすめる職場の雰囲気に戸惑いながら、次第に安らぎを覚えていた。そんな折、小火騒ぎが起こる。記念館内部でも、資料の解釈や展示物決定をめぐる意見対立が起こり、波風がたつ。高岩青十をめぐる謎が少しずつ解明されるにつれ、一見穏やかに見えた学芸員たちの私事も明らかにされる。やがて記念館の敷地内で殺人事件が発生、小火も繰り返される。才蔵は妹でミステリ作家の楓とともに、事件全体を把握しようとするが、さらに不審火が続き、職員の家庭不和・不倫などが次々と明るみに出る。逮捕者が出、閉館された記念館からさらに出火。一人残って残務整理をしていた才蔵は、最後に現れた人物に意外な告白をされ、一連の事件の真相を知る。　特徴のある文章構成。小説本文の間にさまざまな人物の「モノローグ」と、「資料」が挟み込まれている。「モノローグ」はその後に起こる事件の様子が、その時々に深く関わったある人物の視点で描写される。「資料」は資料館のパンフレット、企画書など。このいろいろな角度で示される「主観」と「客観」が、この小説を読み進める者の緊張感をあおる。　人物描写が巧み。所蔵資料が読み進められ、隠されていた重要資料が発見されることで、「高岩青十」という作家とその周辺の人物の、重大な秘密が明らかになっていく。それを、研究する立場から事実として明らかにしたい人と、個人的利害のため隠そうとする人。はるか彼方に遠のいた昭和初期の人間模様と、利害や情に縛られた現代人の人間模様が、数人の人物によってつながる。登場人物それぞれの、表面的な印象に隠された裏の部分が、丁寧に描かれていて、それがすべて事件につながる。この小説に、適当に配置された人物はいないのだ。　この小説の舞台となった文学記念館という場所に、かなり親近感を持った。営利を第一目標とする企業とは異なり、資料を保存し、その価値を研究して、世の中に広めていくことを仕事とする組織。「ぬるい」と言われてしまいそうだけれど、世の中にはそんな場所がひとつくらいあってもいいだろう。悲しい事に、作中の文学館も俗世間の影響を受けずにいることは出来ず、行政の方針で左右されるし、思わぬ災難を受けたりする。所蔵する物に対する思い入れも、そこで働く人間に対する思いやりもなく、ただ自分が気まぐれに動かす組織であるという認識しか持たない上層部の人間がいる。そんな点にも悲しい共感を感じつつ、そこで働いて運営に当たる人達の印象は、基本的に好もしかった。　読後感はすっきりさわやかとはいかない。穏やかに眠っていた文学記念館は形を無くし、そこで働いていた人々も去っていき、主人公は一人残る。「閉ざされた夏」という表題通り、夏の終わりとともにすべては無くなる。でもおそらく主人公は、そこにいた人々が皆それぞれ、強さと弱さを抱えていたことや、必死に何かを守ろうとしていたことを忘れないだろう。普段会社等の組織の中にあっては意識されず、肩書き通りの役目を果たすのみの人間も、一人一人の個人は重みを抱えて日常を生きている。そんなことを考えさせる話だった。

2007年03月07日

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『ＣＬＡＭＰもこなのオキモノキモノ』。

女性４人の創作集団ＣＬＡＭＰで、作画を担当しているもこなさんが、とてもかわいい着物の本を出した。ＣＬＡＭＰ作品に因んだオリジナル着物写真の美しさ。もこなさんのコレクションのかわいらしさ。こういう着物を私も楽しく着てみたいと思った。印象的だったのは、「これだけ着ていても、正式な場所に着物で行くのは恐い」と語っていたこと。着物のルールに厳格な目上の人がいるところには、着ていくのをためらうそうだ。衣類というものは、社会生活の中で最低限のルールを守り、人に不快な印象を与えなければ、自由で良いと思う。お気に入りのポリエステルやアンティークの着物を着て、胸をはってにこにこしている人と、上品な高い着物を着て、他人を値踏みするような眼で舐めるように見ている人。人間としての品性があるのはどちらだろう？

2007年02月16日

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芥川賞・直木賞決定。

ニュースで知る。直木賞は該当作無しだったのね。選評を読むのが楽しみ。芥川賞は青木七恵さんという女性。最近の芥川賞は本当に新人賞になっていることもあり、まだこの方の作品を読んだ事が無い。注目しておきたいと思う。

2007年01月16日

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図書館に行く。

地域の公立図書館に行って、今年初めて本を借りる。篠田真由美を二冊。幻想小説「螺鈿の小箱」と、建築探偵シリーズ「聖女の塔」。

2007年01月10日

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愛川晶『根津愛代理探偵事務所』。

◆愛川晶『根津愛代理探偵事務所』（原書房　2000･10･27）〔収録作品〕カレーライスは知っていた／だって、冷え性なんだモン！／スケートおじさん／コロッケの密室／死への密室美少女探偵シリーズをアンソロジーで読んでみたら面白かったので、継続して読んでみることに。少し強引な気もするが、奇想天外で面白い！

2006年08月29日

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杉本彩『エレガンシア』。

◆杉本彩『エレガンシア』（ぴあ　2006･8･10）今の私に最も足りないものをあふれるほど持っている女性。もう、頭が下がります。しかしダンスで鍛えた体ってきれいですね。ほれぼれ。筋肉だけでも鍛えねば。

2006年08月25日

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「『大きなかぶ』はなぜ抜けた？　謎とき世界の民話」

◆小長谷有紀編「『大きなかぶ』はなぜ抜けた？　謎とき世界の民話」（講談社現代新書）様々な分野の研究者による共同執筆の本。執筆者のうち、二人の方が私の知りあいだったため、本をいただいた。「謎とき世界の民話」というサブタイトルで内容は想像出来るけれど、ちょっと目次をあげてみる。・なぜ「じゅうたん」が空を飛ぶのか？・森にお菓子の家があるのはなぜか？・おばあさんはなぜ桃を食べたのか？・「らいこうさま」はどこへ行った？日本を含めた世界の民話の謎について、その方面の専門研究者がわかりやすい文体で説明してくれる。自分の今まで知らなかったお話も出てきて、面白かった。以前、小説の『アンジェリク』を読んで、主人公アンジェリクの美貌が、フランス中部の森の妖精メリジューヌにたとえられていて、「ほ～、そんな伝説があるのか～」と思ったことがあったので、第２章の妖精の話は特におもしろかった。

2006年08月19日

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本日のお買い物（コミック＆本）

◆本日のお買い物（コミック＆本）加藤元浩『C.M.B　森羅博物館の事件目録　3』（講談社　2006･8･17）『彼のメガネ』（アスペクト　2006･8･18）『彼のメガネ』はかなり実用的で、私よりも相方猫太郎先生の役に立ったよう。

2006年08月17日

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『草双紙事典』と本日のお買い物（コミック）

執筆に参加した本が出版され、手元に送られてきた。◆叢の会編『草双紙事典』（東京堂）赤本・青本・黒本と言われる初期の草双紙（絵に文章が添えられた読み物。江戸時代のマンガみたいなもんです。）の主な作品について解題したもの。各作品のあらすじと解説が本の内容の大半を占めているので、一般の方でも楽しめますよ。◆本日のお買い物（コミック）安野モヨコ『シュガシュガルーン　6』（講談社　2006･7･13）

2006年08月10日

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中村航『１００回泣くこと』。

◆中村航『１００回泣くこと』（小学館　2005･11･20）犬とバイク／スケッチブック／開かない箱／箱の中身実家で飼っていた犬が死にそうだときいて、僕は長いこと手入れしていなかったバイクをよみがえらせ、それに乗って実家に帰った。バイクをよみがえらせることを勧めてくれた彼女に、手入れの途中プロポーズし、「結婚の練習」をはじめる。他愛ないことを話しあっては笑い、一つずつ生活を作り上げていた二人だったが、やがて彼女の体調に変化が。病名は卵巣ガン。約１年半の闘病で、彼女は逝く。働く意外の時間は酒におぼれ、彼女を思っては泣く。これを何度も繰り返す僕。そしてそのうちに、彼女が自分の中に残してくれたものを一つ一つ確認して、僕は立ち直っていく。３年間闘病した犬もやすらかに逝った。逝ってしまった命が自分の中に残してくれたものを確かめ、僕はやっと立ち上がって歩きはじめる。大切な人を亡くす悲しみを描くというのは、文学が普遍的に持っているテーマだと思うので、この小説の筋立てについてとやかく言うのは的をはずれていると思う。問題はその描き方。この小説のカップルは社会人であり、結婚に向けて準備をしている途中である。二人がどんなに丁寧に日常生活をおくっていたか、そして彼女の病がどんなふうに残酷にそれを奪ったか、彼女がどんなに勇敢に病と闘ったかを、この小説は丁寧に描写していく。主人公「僕」の一人称小説なのだが、客観的な描写が多い。それでも僕の思いは読み手に伝わる。

2006年08月08日

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東川篤哉『密室の鍵貸します』。

◆東川篤哉『密室の鍵貸します』（光文社カッパノベルズ　2002･4･20）関東近県にある烏賊川市に住む大学生・戸村流平は、元の彼女である紺野由紀殺害の疑いをかけられるが、その時間彼は大学の先輩・茂呂耕作のホームシアターでビデオ鑑賞中だった。しかしその茂呂は、密室と化したバスルームで、死体となっていた。自分に嫌疑がかかることを恐れた流平は、親戚の探偵鵜飼をたより、警察から逃げながら、真相を調べ始める。これがデビュー作の作家だが、この作風を通す気かなあ。とにかく語り手が主張する文で、好き嫌いが分かれそう。パズルのような謎解きはそれなりに楽しかった。

2006年07月14日

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鯨統一郎『なみだ特捜班におまかせ！』。

◆鯨統一郎『なみだ特捜班におまかせ！』（祥伝社ノンノベル　2005･10･20）〔収録作品〕涙の赤い薔薇／涙の冷蔵庫殺人／涙の海岸物語／涙のエレベーターガール／涙の少女人形／涙のクニタチーゼ／涙のサヨナラホームラン一応「本格推理小説」と書いてあるんだが、はて？この人はそういう作風だったっけ？自称サイコセラピスト涙田煌子が活躍するシリーズの第二作。とぼけたキャラクターで職場の上司にいじめられやすく、でも何となくまわりに好かれてしまう。そして少しずつ明かされる煌子の過去。毎話のラストに出て来るお茶とお菓子がとてもおいしそう！

2006年07月09日

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『ハチミツとクローバー　PHOTO MAKING BOOK』。

◆『ハチミツとクローバー　PHOTO MAKING BOOK』（集英社　2006･7･9）正直に告白しますと、酔っぱらった勢いで買いました。だってかわいい本だったんだもん。写真もきれいだけれど、羽海野チカさんの撮影現場レポートも面白かった。映画はもちろん見に行くけれど、この写真集を見てますます楽しみに。だってさあ、にゃん三郎とマリオとルイジの藤原兄弟が実写化してるのよ！あはははは。で、作者のウミノ先生と同じように、花本先生の堺雅人さんに惚れました。

2006年07月07日

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畠中恵『とっても不幸な幸運』。

◆畠中恵『とっても不幸な幸運』（双葉社　2005・3・30）　序章／のり子は缶を買う／飯田はベートーベンを聴く／健也は友の名を知る／花立は新宿を走る／天野はマジックを見せる／敬二郎は恋をする／終章「若旦那と妖怪シリーズ」で知られる作者の、シリーズ外作。新宿伊勢丹からほど近い大人のバー「酒場」。二代目マスターとその義理の娘、多様な常連客達が謎とともに「とっても不幸な幸運」と名付けられた缶を開ける時、何かが起こる。ちょっと強引な気がする作品もいくつかあるが、設定の巧みさや語りの上手さで楽しく読める作品。人生のいろんな側面が見えてくる。各章の語り手は、その場合に応じて変化する。個人的には「天野はマジックを見せる」が印象的だった。他の章の事件の大きさにくらべると、あまりにも小さい嫉妬の感情が描かれるのだが、私はこの章に描かれているような場合でしか、人に対して嫉妬というものを感じないので、すごく理解できた。

2006年06月17日

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北村薫『紙魚家崩壊　九つの謎』。

◆北村薫『紙魚家崩壊　九つの謎』（講談社　2006･3･20）〔収録作品〕溶けていく／紙魚家崩壊／死と密室／白い朝／サイコロ、コロコロ／おにぎり、ぎりぎり／蝶／俺の席／新釈おとぎばなし統一テーマはなく、いろいろなタイプの短編がまとめられた本。北村版「世にも奇妙な物語」みたいな感じ。「おにぎり、ぎりぎり」などはとてもユーモラスな味わいがある。でも最もおもしろかったのは「新釈おとぎばなし」。太宰をふまえつつ、「蟻とキリギリス」や「かちかち山」の北村流新釈を紹介する。かちかち山が本格推理になるなんて、太宰もびっくりだろう。

2006年06月10日

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角田光代『おやすみ、こわい夢を見ないように』。

◆角田光代『おやすみ、こわい夢を見ないように』（新潮社　2006･5･17）　〔収録作品〕このバスはどこへ／スイート・チリソース／おやすみ、こわい夢を見ないように／うつくしい娘／空をまわる観覧車／晴れた日に犬を乗せて／私たちの逃亡角田光代という作家は不思議だ。メディアで拝見する彼女はとてもものやわらかで、丁寧でかわいらしい。だけどその瞳は、どんな美しいものも邪悪なものも見逃すまいと、いつもきらきら輝いている。少しだけエッセイを読んだことがあったのだが、お酒に関する武勇伝などもあり、やっぱりそういう鋭く大胆で無頼な面も持っているんだなあと、納得した。この短編集は、身近なところでふと発生する人間の悪意を描いたもの。読後感は決してさわやかでもないし、何らかの感情が昇華するわけでもない。何ともいえない後味の悪さを残して、大抵の作品は問題未解決のまま終わる。しかし「あ～あ、確かにこういうことあるよね」と思った後、ふと人の過ちを許せるような気になるのである。

2006年05月23日

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伊坂幸太郎『砂漠』。

◆伊坂幸太郎『砂漠』（実業之日本社　2005･12･15）法学部の学生たちの青春群像。どこか醒めていて人とかかわりたがらない主人公北村。調子の良い鳥井。いつも熱く語り続ける西島（サンボマスターの山口君がどうも思い出されてしょうがない）。クールビューティー東堂。おっとりしている南。同じ学科の学生たちは、大学生活を楽しみつつ、徐々に親しくなる。空き巣グループ事件と鳥井の左手喪失。幼なじみだった南と鳥井の同棲。西島に振られる東堂。ブティック店員の鳩麦さんとつきあう北村。大学生活は、社会という名の砂漠につかのま存在するオアシスみたいなもの。いつか皆砂漠へ出ていくのだけれど、オアシスで共に過ごした時間はいつまでも宝物。青春群像劇だが、「プレジデントマン事件」「元ホスト窃盗グループ事件」など、ミステリの要素もあり。若い女の子の無自覚な罪深さが、男性の目で洗い出されている。美人の東堂さんが結果的にケーキ職人になったというのが面白かったな。

2006年04月10日

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平安寿子『センチメンタルサバイバル』。

◆平安寿子『センチメンタルサバイバル』（マガジンハウス　2006･1･19）図書館で借りて、期限がきてしまったので適当に返しちゃおうかと思ったけれど、読み始めたら止まらなくて、結局読んじゃった本。叔母の龍子の家に居候しはじめた、画材屋アルバイトの「るか」。たいして危機感もなくのんびりゆる～く暮らしているのだが、周りの人は放って置いてくれない。バリバリのキャリアウーマンの叔母。高校を中退し、店を持つためがんばっているバイト仲間の民ちゃん。彼氏と別れた後、何となく気になりはじめた左官のノンタ。食生活・結婚・セクハラ・専業主婦だった母の家庭内反乱など、身近な問題について考えざるをえなくなる。やがてバイト先の営業方針が変わり、転機を迎えたるかの選んだ道は？押しつけがましいけれど、ばしっと名言を示す叔母の龍子さんが素敵。何だか浅くて深みに欠ける・・などと思っているうちに、ぐいぐいひきこまれて、「るか」といっしょに一喜一憂してしまう。これはこれで、書き手の才能なんだろう。この人の作品は安心して読めるような予感がする。

2006年04月07日

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定金伸治・乙一・松原真琴『とるこ日記』。

◆定金伸治・乙一・松原真琴『とるこ日記』（集英社2006･3･29）仲好し作家三人のトルコ旅行記。しかしこのお三人、仲が良いのだけれど、人とのコミニュケーションがかなり苦手な人ばっかり。乙一さんは旅行中、ひたすらパンツとシャツを洗濯しては、その乾きの悪さに悩み、松原さんはコンパクトデジカメを盗まれ、定金さんは最もアクティブだったがそれを冷ややかに二人に眺められ・・と、全く普通ではない出来事続出。左側ページが定金さんの旅行記、右側ページにそれに対する注という名の乙一さんと松原さんのツッコミ。途中、風景写真や食事の写真記録、松原さんのイラストなどがはいる。定金さん、松原さんは、顔写真の公開を積極的にしていないので、写真に写っているのはほとんど乙一さん。巻末には乙一さんのショートストーリー『毒殺天使』がオマケで。爆笑、というわけではない、クスッ、とかニヤッ、とかいう笑いが込み上げる旅行記。あ、副題がついていた。「ダメ人間作家トリオの脱力旅行記」ですって。

2006年03月29日

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エラリー・クイーン『犯罪カレンダー　7月～12月』（ハヤカワ文庫）。

◆エラリー・クイーン『犯罪カレンダー　7月～12月』（ハヤカワ文庫　2002･8･20）《収録作品》７月　堕落した天使／８月　針の目／９月　三つのＲ／10月　殺された猫／11月　ものをいう壜／12月　クリスマスと人形クイーンだからといってガチガチの本格物ばかりではないのだ。異なる味わいのもので面白かった。2月16日掲載分の後半。

2006年02月27日

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スコット・フィッツジェラルド『マイ・ロスト・シティ』。

◆スコット・フィッツジェラルド『マイ・ロスト・シティ』（中公文庫　1984･6･10）《収録作品》フィッツジェラルド体験（村上春樹）／残り火／氷の宮殿／悲しみの孔雀／マイ・ロスト・シティさらりとした手触り。鈍い痛みとしびれ。そんな感じの作品集。人生の何処かで体験するかも知れない悲しみや苦しみ。それに直面した人間は淡々と、ほんの少しのぬくもりやユーモアを糧に生きていく。やさしくて悲しい短編集。翻訳は村上春樹。『マイ・ロスト・シティ』は自伝的エッセイ。

2006年02月20日

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エラリー・クイーン『犯罪カレンダー　1月～6月』。

◆エラリー・クイーン『犯罪カレンダー　1月～6月』（ハヤカワ文庫　2002･8･20）《収録作品》１月　双面神クラブの秘密／２月　大統領の5セント貨／３月　マイケル・マグーンの凶月／４月　皇帝のダイス／５月　ゲティスバーグのラッパ／６月　薬指の秘密短編集。クイーン親子とニッキー・ポーター嬢が活躍するシリーズ。ラジオドラマ用のシナリオを小説に書き直したものらしく、コンパクトにまとまっているが謎解きの本格的な面白さには少し欠ける。でもおもしろい。細切れに読書するには丁度よい本だった。

2006年02月16日

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伊坂幸太郎『重力ピエロ』。

◆伊坂幸太郎『重力ピエロ』（新潮社　2003/4/20）兄・泉水。遺伝子を調べる会社（架空のものだそうです）に勤務。弟・春（ハル）。容姿と絵の才能に恵まれ、落書きを消すのが仕事。彼は美しかった亡き母が、家に侵入した強盗に強姦されて生まれた。父は入院してガンと闘病中。最近、街で頻発する放火と、その現場に残された落書き。入院中の父が興味を持ったので調べるうち、泉水の前に現れる奇妙な人物たち。謎の女、探偵（実は泥棒）の黒澤、いやな依頼人葛城。泉水はやがて連続放火犯の正体に気付く。ハルのキャラクター造形と、その弟を静かに受け止めて深く愛する兄の兄弟愛が何とも絶妙な味わい。そして『チルドレン』と同じく名言多数。「理不尽な恐怖を与えないとさ、子供は世の中を舐めるんだよ」「生きるために殺すべきで、楽しむために殺してはいけない（ガンジーの言葉）」「ふわりふわりと飛ぶピエロに、重力なんて関係ないんだから」「そうとも重力は消えるんだ」「楽しそうに生きていればな、地球の重力なんてなくなる」。どんなことがあってもこの家族のように、しなやかに明るく生きていけたらどんなに良いだろう。

2006年02月09日

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クレイグ・ライス『わが王国は霊柩車』。

◆クレイグ・ライス『わが王国は霊柩車』（ハヤカワミステリ 1991/3/31）弁護士のジョン・J・マローンは、化粧品会社デロラ・ディーン社に呼ばれ、コールド・クリームのモデルとしてCMに出演している女性デロラ・ディーンが実は5人の女性のパーツを別々に撮影して寄せ集めた存在であることを知らされる。その日、「手」担当のエバ・ルー・ストラウスが欠勤し、社長のヘイゼル・スワックハマー宛に、美しい手袋に包まれた女の手首が送りつけられた。警察に内密に調査をはじめたマローンだが、テレビプロデューサー業を始めた友人のジェイク・ジャスタスとその妻ヘレンが、当然のようにからんでくる。やがて次に、美しいハイヒールに包まれた足が届き・・クリスティ、クイーンなどを除いてほとんど海外物ミステリを読まない私が、例外的に大好きな作家がこのクレイグ・ライス。弁護士マローンとジャスタス夫妻シリーズは大好き。特に美しい淡いブロンドと薄青い目をした美女で、お酒が強く、ツートーンカラーのコンバーティブルをむちゃくちゃなスピードで乗り回して事故を起こさないお転婆な富豪令嬢のヘレンが大好き。彼女は大抵、自分の目の色と同じ薄いブルーや、髪の色と同じベージュ系（薄い茶色やキャラメル色）のドレスや靴やバッグ、毛皮を身に付けていて、アメリカ上流社会の令嬢らしくておしゃれ。ミステリとしては、人間関係を解いていくのが中心になっていて、ドラマ化しやすいような感じ。とても通俗的だが、からっとした雰囲気とユーモア、抜群のセンスで面白くしている。時々とびきりの美女に惚れられたりしているのに、何だかいつもマローンはかわいそうなんだよなあ。

2006年02月05日

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伊坂幸太郎『チルドレン』（講談社　2004･5･20）

◆伊坂幸太郎『チルドレン』（講談社　2004･5･20）もとは別々に書かれていた短編を、収録にあたって繋げて読めるように直したもの。主な登場人物は、破天荒な家裁調査官でロックギタリストの陣内、盲目の青年永瀬と盲導犬ベス、永瀬の恋人優子、陣内の友人鴨居、陣内の同僚武藤、陣内や武藤が担当した少年少女とその家族。時間軸は10年くらいとってあって、話は時間軸を前後しながら並べられている。もうね、陣内が痛快。京極夏彦の榎津礼二郎を思わせるすごさ。とんでもなく迷惑な行動ばかりとるのだが、この小説の中の印象的な言葉はほとんど彼がしゃべっている。「そもそも、大人が恰好良ければ、子供はぐれねえんだよ。」と「俺たちは奇跡を起こすんだ」は名言。私も何だかんだと、いつも少年少女に騙され、時には騙されたふりをしてやっている日常だ。そしてごくたまに、奇跡を起こしている・・と信じたい。いつも伊坂幸太郎の作品には、好きだとおもいながらちょっとひっかかる部分があったのだけれど、この作品は全くそんな部分が無かった。確実に成長している＆直木賞候補■回は伊達じゃない。

2006年01月23日

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平野啓一郎『文明の憂鬱』。

◆平野啓一郎『文明の憂鬱』（新潮文庫　2006･1･1）エッセイ集の文庫化。標題で続けていた連載に、諸所で書いたエッセイを加えて編集したもの。執筆当時から時間がかなりたってしまった文もあるけれど、それはそれで面白い。荒れる成人式についてとか、アイボなどのペット型ロボットについてとか、マンガという表現についてとか。すごく感動するとか、興味深いとか、そんな特別な感情はおこらないけれど、平野啓一郎という作家のセンスや思考が、当時世の中をどうとらえていたかが、丁寧な言葉遣いで述べられている。この年齢にしてこの頑固さ。でも生意気だとか、思い上がっているとかは思わない。ひたすら面白い個性である。

2006年01月18日

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平野啓一郎『日蝕』。

◆平野啓一郎『日蝕』（新潮社　1998･10･15）芥川賞受賞作。雑誌「新潮」1998年8月号の巻頭に一挙掲載され、話題を呼んだ。パリ大学で神学を学んでいたニコラは、学究のため訪れたリヨンでフィレンツェに行くことを勧められる。その途中寄ったヴィエンヌで、異端審問師ジャックに会うが、その姿にうさんくさいものを感じる。そして人々から変人あつかいされ、怖れられている錬金術師ピエェルの研究に対する禁欲的な姿勢に、好ましいものを感じる。しかしやがてピエェルはジャックにとらえられ、ピエェルが密かに隠していた奇妙な生き物・アンドロギュノスが白日にさらされる。疫病その他、村に起こった凶事の原因とされたアンドロギュノスは火刑に処せられるが、その際、キリストを思わせるような奇跡が起こる。難解な文体が話題になった作品だが、別に気にならなかった。ただ、非常に綿密に理論で組み立てられた表現をする人だと思った。私はキリスト教にもカトリックの歴史にも哲学にも疎いが、それなりに重厚な雰囲気を楽しんで読むことができた。歪んだカリスマ性を持つジャック、論理的でありながらどこか思想のバランスを欠いている研究者ピエェル、それを絶妙に離れた位置から見ている主人公ニコラの位置関係がおもしろかった。こういう立場に主人公を置いたことは上手かった。

2006年01月14日

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北村薫『ニッポン硬貨の謎ーエラリー・クイーン最後の事件ー』。

◆北村薫『ニッポン硬貨の謎ーエラリー・クイーン最後の事件ー』（東京創元社　2005･6･30）「エラリー・クイーンの遺稿を、北村薫が翻訳して注を付けた」という形の、北村薫のによるミステリ。1977年に来日したエラリー・クイーンは、ファンの集いで知りあった小町奈々子とともに、その時日本で起きていた連続殺人事件の推理をし、警察に助言する。作中には北村薫が以前より暖めていたクイーン論、「50円玉20枚の謎」の解答編が折り込まれる。注の部分（もちろん創作なのだけれど）が非常に面白い。クイーンの微妙に間違っている日本認識もちゃんと書かれていて、北村薫の多才で論理的で巧みな部分が十分に生かされた作品。

2006年01月10日

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『ほぼ日手帳の秘密』。

本日のお買い物。◆『ほぼ日手帳の秘密』（幻冬社　2005･11･25）◆日経WOMAN 1月号ずっと買おうかどうか迷っていたけれど、とうとう買った『ほぼ日手帳の秘密』。人の手帳の使い方を見るのはなぜか楽しい。その人の人間性が本当によくあらわれる。来年は絶対ほぼ日手帳にしようと決めていたりする。日経WOMAN 1月号は、「人生を変える！　手帳術」という記事に魅かれて。現在使っている手帳について載っていたので。

2005年12月24日

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光原百合『最後の願い』。

◆光原百合『最後の願い』（光文社　2005･2･25）『このミス』を見て面白そうだったので選んだ本。期待を裏切らなかった。「劇団φ」を立ち上げようとしている役者の度会恭平（わたらいきょうへい）と、彼の協力者で役者の風見爽馬（かざみそうま）。彼らはこれと眼をつけた人材を一人ずつスカウトしていくのだが、その際、その人が抱えている疑問や謎を解決していく。原案担当の西根響子、会計事務担当の吉井志朗、舞台デザインの橘修伍、女優草薙遼子、取材先の洋館の持ち主宮下愛美、女優久仁木亜夕実。そしてシアター・オセロの支配人水無瀬卓也のわだかまりを解決し、オリジナル脚本による劇団φの舞台『万華鏡の館』の幕が上がるとき、劇場にいたもう一人の人間の魂が昇華する。演劇にかかわる人間の誇りと魅力と不思議さを描き、かつ謎解きが面白く、人の心の複雑さを明らかにするという、満足できるミステリ。

2005年12月18日

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江藤千文・おおたうに『お江戸ガールズライフ』。

◆江藤千文・おおたうに『お江戸ガールズライフ』（ブロンズ新社　2005･12･25）江戸の女の子たちをおおたうにちゃんが描いたらどうなるだろう？と思って楽しみにしていた本。有名な歌麿の絵をうにちゃんのセンスで描いてみたものがおもしろかった。あの絵に何となくただよっている、女の人のかわいらしさを、うにちゃんらしく表現していた。うにちゃんの絵には大満足。この本の内容に関して。一般向きに楽しくかわいらしく江戸の美意識を紹介したいという趣旨は理解できる。しかしそういう本として楽しむには、無駄で、しかも間違っていることが多すぎる。歌舞伎とか、江戸文学とかをちゃんと知っていれば、わかるようなことを。こんないい加減な内容でも、本って出来るものなのだなあ。

2005年12月16日

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平野啓一郎『高瀬川』。

◆平野啓一郎『高瀬川』〈収録作品〉清水／高瀬川／追憶／氷塊純文学を読み慣れていない自分を実感。読みはじめてしばらく、独特の言葉遣いに慣れず苦戦。最も内容がつかみにくかった「清水」なんて、何度読み返したことか。でもこの短編集、難解すぎる語句や旧字がほとんど無く、平野啓一郎への入門編として適した本だったらしい。「清水」不眠の男が陥った、物体の存在感がどんどん消えてゆき、記憶が錯乱する感覚。それに清水がしたたる音をリンクさせて描く。眩暈がするような感覚。「高瀬川」小説家の男松野と、ファッション誌の女性編集者裕美子。仕事で知りあい、互いに好意を持った二人が京都の町で会ってラブホテルで過ごした一夜を、松野の側から描く。おお、状況だけ書いてると甘ったるいエロ小説みたいだぞ。照れ隠しのような気取った言葉遣いと、しつこいくらい細かい描写で情事を描いて、妙なバランスを保っている。性をもてあそぶような態度や、女性に対する変なロマンの押し付けが無くて、不快な感じは無かった。いや～、愛情をともなった男女の性的関係って、こんなもんじゃない？ちょっと、いや、かなり間抜けなラストまで気取った文体を貫いていて、多分これは確信犯だろう。「追憶」ほとんどがページ全体に散らし書きされた語句で成り立った小説。散らし書きされた語句が表すものは、誕生前やその前後の記憶の曖昧さだろうか。「氷塊」よく見かける女性を架空の亡き実母だと思い込む中学生の少年の心情を上段に、専門知識がありながら地方の博物館で不本意な職につき、よく見かける少年を現在の不倫相手の息子だと思い込む女性の心情を下段に書く小説。上下に描かれた二人の時系列は同時進行になっていて、二人が出会う場面で上下二段は一致した描写で描かれる。形式で冒険をした作品。予想したよりは面白かった。普段使っている部分と全然違う部分の頭脳を使っている感じ。他に数作品読んでみたいと思った。

2005年12月11日

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辻村深月『子どもたちは夜と遊ぶ　上』（講談社ノベルズ）。

◆辻村深月『子どもたちは夜と遊ぶ　上』（講談社ノベルズ　2005･5･7）辻村深月はとりあえず安心して楽しめる作家だと思う。キャラクターの作り方がはっきりしていて、読みやすい。アニメやコミックに近いほど、外見や性格を丁寧に作ってあって、人物の印象が混じったりすることがない。今回も魅力的なキャラクターが。特に月子ちゃんが気に入った。女性の間にある微妙な心情をうまく描いていて感心した。特に聡明な萩野さんと月子ちゃんの間にある感情。萩野さんの、「彼にとって女の子というものが月子ちゃんのようなものなら、自分に恋愛感情を向けてくれる可能性は無い」というような発言にはドキッとした。下巻も絶対読む。「多分、何か仕掛けられてるな。あれかな、それともこれかな・・」と考えてはいるけれど、確信に至らず。

2005年12月03日

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クレイグ・ライス『わが王国は霊柩車』。

伊坂幸太郎『チルドレン』（講談社 2004･5･20）

平野啓一郎『文明の憂鬱』。

平野啓一郎『日蝕』。

北村薫『ニッポン硬貨の謎ーエラリー・クイーン最後の事件ー』。

『ほぼ日手帳の秘密』。

光原百合『最後の願い』。

江藤千文・おおたうに『お江戸ガールズライフ』。

平野啓一郎『高瀬川』。

辻村深月『子どもたちは夜と遊ぶ 上』（講談社ノベルズ）。

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『チョコレート　ビースト』。

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エラリー・クイーン『犯罪カレンダー　7月～12月』（ハヤカワ文庫）。

エラリー・クイーン『犯罪カレンダー　1月～6月』。

伊坂幸太郎『チルドレン』（講談社　2004･5･20）

辻村深月『子どもたちは夜と遊ぶ　上』（講談社ノベルズ）。