━アラン・タネール『白い町で』




○o。アラン・タネール監督作品『白い町で(1983)』。o○



監督・製作・脚本: アラン・タネール Alain Tanner
撮影: アカシオ・デ・アルメイダ 
音楽: ジャン=リュック・バビルビエ
 
出演: ブルーノ・ガンツ/テレーザ・マドルーカ/ユリア・フォンダリン

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ポルトガル。首都、リスボン。白い街.....サウダーデ・・・懐かしさ、未練、懐旧の情、愛惜、郷愁、ノスタルジー、孤愁.....





貨物船の機関室で働く機関員ポール(ブルーノ・ガンツ)は、船が停泊した白い町リスボンに降り立った。しばしの休息を楽しむべく白壁と石段の町を巡り歩く。彼は、その白い町並みの中を気ままにさまよい歩き、視界に入るものを取り留めもなく8ミリフィルムに記録している。



戯れにポールが映す8ミリのおぼろげな映像は、まるで白昼の幻想のようで、彼の虚ろな心象風景のようにも思える。35ミリの映画の中に実に巧みに8ミリでとられた映像が織り込まれ、8ミリ荒い粒子やブレなどの質感が主人公の心象風景というより記憶の一部を覗き込むようで生々しい。ドラマ性は希薄なのに、主人公の音のない8ミリフィルムの映像世界は、観るものは異次元にまぎれこんだような感覚に襲われ、台詞でも言葉だけでもなく映像だけの積み重ねで現代人の孤独と疎外感を浮上させることに成功している。

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彼は仕事を放棄し、家族と遠く離れた異郷の地リスボンで、自己のアイデンティティー、自分の居場所を求めてただひたすらに8ミリを廻し、スイスに残してきた妻エリザに、自分は見ることのない8ミリで写した街や自分のフィルムと手紙を送り続けるのだった。
「二人の女を愛している」と書かれた手紙に不安を感じるエリザ。

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8ミリで写した街や自分のフィルムをスイスの妻エリザに送るほかは何もしないで、町をぶらついて過ごしている。ビデオカメラを片手に街を歩き、バーに辿り着く。

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彼は仕事を放棄し,その白い町並みの中を気ままにさまよい歩く。カフェで知り合った女とのつかの間の情事も,彼の心の虚しさを癒してはくれない。ポールは、アジアやアフリカの匂いのする旧市街アルファマをさ迷い歩き、家々の壁すれすれにすり抜けていくエレクトリコ(路面電車)に乗り、酒場で女と知り合い、次第に街の魔力にとらわれてゆく。

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■アラン・タネール(Alain Taneer)■

アラン・タネール(Alain Taneer)は、1929年ジュネーヴ生まれのスイスの映
画監督で、スイス・ニュー・シネマの「父」とさえ呼ばれている。彼はちょうどフランスのヌーヴェル・ヴァーグの作家たちと同世代にあたり、長編劇映画でのデビューこそ、68年(『どうなてもシャルル』)と遅いが、映画感覚においてはゴダール、トリュフォーらと通底するものをもっている。彼はジュネーヴの大学で経済学を学びながら、大学のシネクラブをクロード・ゴレッタ(タネールと並んで著名なスイスの監督)と設立し、その後イギリスに渡る。ロンドンの英国映画協会(BFI)で映画制作を学び56年『ナイス・タイム』(ゴレッタと共作)という短篇処女作を撮る。フランスで何本かの短篇を撮った後スイスに戻り、ゴレッタやミッシェル・ステールらと<新しいスイス映画>の運動を始める。
独立プロ(グループ・デ・サンク)をベースに知的な作品の発表を通じて、またちょうど60年代後半の学生運動=現体制への異議申立てに共鳴しながら彼は、ハ
リウッド・タイプの映画からは決して生まれえないような作品を国際的に認知させたのだった。タネールの場合、そのテーマは都市生活者の一種の<現代病>であり、「空虚な空間」と「モラトリアム=生存感覚の不確かさ」がどの作品にもつきまとう。
『どうなってもシャルル』が69年ロカルノ映画祭グランプリ、『光年のかな
た』が81年カンヌ映画祭審査員特別賞を受賞。その他の作品に71年『サラマンド
ル』、76年『ジョナスは2000年に25才になる』、83年『白い町で』、87年『わが心の炎』、89年『ローズヒルの女』などがある。

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アラン・タネール(Alain Taneer)

■ジョナスとリラ(1999)
■レクイエム (1998)
■ローズヒルの女(1989)
■幻の女(1987)
■わが心の炎(1987)
■白い町で(1983)
■光年のかなた(1980)
■ジョナスは2000年に25才になる(1976)

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■ブルーノ・ガンツ(Bruno Ganz)■

1941年スイス・チューリッヒ生まれ。父親はスイス人で母親はイタリア人。
チューリッヒの演劇学校を卒業し、’60年にスイス映画でデビュー。その後、ベルリンに向かい、舞台で活躍するうち、勃興していたニュー・ジャーマン・シネマの監督たちと出会い、『アメリカの友人』『ノスフェラトゥ』などに出演。『ブラジルから来た少年』などでアメリカ映画にも進出し、国際的にも名を知らしめる。『ベルリン・天使の詩』と『永遠と一日』は生涯の代表作。

■ベニスで恋して (2000)
■永遠と一日 (1998)
■星の王子さまを探して (1995)
■時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース! (1993)
■春にして君を想う (1991)
■プラハ (1991)
■夜ごとの夢/イタリア幻想譚 (1991)
■ストラップレス (1989)
■バンコマット (1988)
■ベルリン・天使の詩 (1987)
■愛と野望のドイツ家 《TVM》(1986)
■アイスクリーム・パーラー (1985)
■白い町で (1983)
■ノスフェラトゥ (1978)
■昼と夜のような黒と白 (1978)
■アメリカの友人 (1977)
■左利きの女 (1977)
■O侯爵夫人 (1975)

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『永遠と一日』(1998年ギリシア・フランス・イタリア合作/134分)
監督/テオ・アンゲロプロス
出演/ブルーノ・ガンツ アケレアス・スケヴィス イザベル・ルノー


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歌姫・テレーザ・サルゲイロ/Teresa Salgueiro

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マドレデウス/Madredeus
マドレデウス「ポルトガルの民族音楽と室内音楽の融合、そしてポルトガルの風景を音楽にすること」を目指して1986年に結成されたグループ。歌姫テレーザのどこまでも透き通った歌声はヨーロッパ中を魅了。

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