カテゴリ:アート
はるか昔、高校生の頃、どこかのデパートで初めて ミュシャの展覧会を見た。ここで、ミュシャの描く 女性たちにうっとりとして、部屋に多くのポスターを 張ったら、家人に色気づいたと言われた記憶がある。 そうそう、当時の理想の女性像は、ミュシャのポスターに 登場する女性たちであった。 それ以来、ミュシャ=アール・ヌーボー装飾の美しい 女性たちという公式がずっと頭に残っていたのだが、 しばらく前に「美の巨人たち」で「スラブ叙事詩」の 番組を見たときから、スラブ民族の心を描くことに 執念を燃やしたもうひとつのミュシャの世界を知り、 衝撃を受けた。いつかこの「スラブ叙事詩」の大作を 見たいと思っている。 当然、6×8メートルの巨大な作品は、日本に来ることは ないだろうが、今回の展覧会では、ミュシャの「スラブの心」 の作品にもスポットが当てられていて、大満足であった。 少女の像など、これがあのミュシャの絵?と言いたくなるのだが、 けれん味のない実にシンプルな絵。これが、キュンと心に沁みた。 今の日本人には、民族独立の悲願とかあまりピンと来ないし、 民族主義とかいうと何やら胡散臭くも思えるのであるが、 西洋近代史を理解していなくても、ミュシャの絵からは 何か熱い気持ちや崇高な思いが伝わってくる。 さて、アール・ヌーボーの華麗なポスターの女性像にも、 相変わらずうっとりと見惚れてしまうのだが、今回は、 ミュシャ様式といわれる、女性の光背のような円形の装飾を 細かく眺めた。植物、矢印、ハートなどの文様が複雑に絡まる。 当時、一世を風靡した装飾あるが、今の時代でも、十分に通用 する。 一方、このポスターと並行して、書物の挿絵も描いているのだが、 聖書の「主の祈り」の挿絵のリトグラフには驚いた。モノクロで 描かれた人間の群像がドラマチックに表現されている。 背景の巨人、画面中央に浮き出る少女、そして画面を埋める無数の 人々・・・。まさに幻想絵画である。 ミュシャは、こんな幻想絵画を描かせても、天下一品であると いうことを改めて発見した。 多方面からミュシャをとらえた好企画の展覧会であった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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