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テーマ:DVD映画鑑賞(13588)
カテゴリ:サブカルについてうんちく
遅ばせながら新年初投稿となる。フジテレビ・稲垣吾郎の『悪魔が来たりて笛を吹く』でも、石坂浩二のリメイク版『犬神家の一族』でもなく申し訳ないが、年末年始に改めてDVDで観た金田一映画、77年東宝『悪魔の手毬唄』について書こう。 ■映画の観どころ この映画、出演者では岸恵子が最も注目されたと思うのだが、多くの人が評しているように、一番の役者は若山富三郎だと思う。タバコをふかしながらの演技が絶妙で、たまらなく上手すぎる。相当な演技研究家だったのではないかと推測してしまう。プロフェッショナルな役者とはああいった演技をする人のことを言うのだろう。素晴らしいセンスだ。 若山富三郎の他にも出演者は演技派ぞろいで皆芸が細かく、そんな演技を見ているだけで十分楽しめる。医者役の大滝秀治の傍若無人な態度、特に火鉢に足を突っ込んでいるところや、野津刑事役の辻萬長がメモを確かめながら調査結果を読み上げるシーンなど、ホントに芸が細かく、おもしろい。役者の演技を楽しみたい人にはたまらない映画でないかと思う。 そして石坂浩二の、あのとぼけた金田一役の演技は、稲垣吾郎の金田一の演技とは雲泥の・・・な~んてもんじゃないと思う。稲垣ファンには申し分けないが、そう言わざるおえないほど金田一耕助役としての演技がはまっていた。 出演者のこの絶妙な演技の連発は市川マジックのなせる業なのだろうか。同じ市川監督の映画でも96年の東宝『八つ墓村』には首を傾げたが、目標としたのは『悪魔の手毬唄』だったのかもしれない。 斬新なカットや映像のつなぎなど『悪魔の手毬唄』は市川映像絶好調で、田舎のひなびた温泉宿や土蔵、放庵の庵など、舞台となる場所の映像も実に素晴らしい。よくまあ、あれだけ古ぼけた日本の民家を再現できたものだと感心する。役者の演技とともに、そんな映像を観るだけでも十二分に価値ある映画だと思う。 ■音楽 村井邦彦・田辺信一の音楽は角川『犬神家の一族』での大野雄二の音楽的趣向を引き継いでいてよかった。しかし、主題曲の「哀しみのバラード」はいい曲ではあるのだが、日本的土着文化を舞台とした「悪魔の手毬唄」の世界とはちょっと違うのではないかと思う。主題曲には「鬼首村手毬唄」を持ってくるべきではなかったか。また、本編で使用されていた音楽より、DVDに収録されていた映画の予告編の音楽の方がエキサイティングでインパクトが強く、好みだった。MBS横溝正史シリーズの音楽に近い感じで、音楽的趣向はああいった感じのほうがよかったと思う。どこかに収録されていないだろうか? ■横溝映画の最高傑作・・・について(ネタばれ注意) この映画、横溝映画の最高傑作と評判が高い。確かに完成度は高く、役者の演技も素晴らしい。しかしこの映画が横溝映画の最高傑作・・・というのは松竹『八つ墓村』の映画評で触れたように、ちょっと違うんじゃないかと思う。 岸恵子が事件の真相を語るところからの情緒的シーンがウケたせいなのか、東宝の後続『獄門島』では原作と犯人を変え、原作にはない犯人の情緒的な生い立ちをクライマックスに持ってきている。が、『獄門島』でのその改変は安っぽいドラマを連想させ、失敗ではなかったかと思う。あの作品はドライに終わらせるところが格好いいのだ。『悪魔の手毬唄』もそこまではっきりとは言えないが、岸恵子の告白を中心とする情緒的なシーンが今ひとつのめりこめない。そういった部分が逆に殺人事件の動機に疑問を呈する結果となり、そんな評価が散見される原因ともなっているのかもしれない。ただ、母親の死を知った歌名雄の悲劇には、作り物とわかっていてもせつなさを感じざるおえなかった。 横溝映画の最高傑作となるためには・・・『悪魔の手毬唄』の後半に、鬼首村手毬唄を口ずさみながら人喰い沼を別所千恵子が歩くシーンがある。そのシーンに続いて人形が手毬をはじめる怪奇幻想的シーンがあるが、あのイメージをもっと全面にうちだし、映画全体のモチーフとしていればより凄い映画になっていたのではないか・・・横溝作品が横溝作品である魅力、原作者が一番強調したかったところ・・・そんな部分をあともう少し強調していれば・・・そう思うのだ。 そんなことを思いながら原作者・横溝正史の怪奇娯楽探偵小説家としてのセンスとサービス精神にあらためて感心させられてしまった。そしてその原作のエッセンスを、ユーモアを交えながら見事に映像化した市川崑の力量にも同時に感心させられた一作であることは間違いない。 ●関連記事一覧:金田一耕助についてうんちく 映画&音楽 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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