タムロン28-75mmF2.8TAMRON SP28-75mmF2.8XR 以前より「レンズグルメで取り上げてくれ!」とリクエストが相次いでいたこのレンズが、やっと登場である。実は愛用度から言えばトップバッターに持ってきても良さそうなレンズだったが、内心忸怩たるものがあって、今日まで日の目を見なかった。 なにしろこのレンズがやってきてからというもの、あまりに便利なので、今までコツコツと揃えてきたペンタックス純正のレンズたちが、軒並み出番を奪われてしまった。単焦点の28mm・35mm・50mm・85mmはもちろん、かなりの出血を伴ったリミテッドレンズや、高性能な万能ズームの24-90mmまでもが、一気にベンチウォーマーと化してしまったのである。これはただ事ではない。 ペンタックスのカメラの特徴は、とにかく「軽くて小さいこと」に尽きる。そして、小さなボディとの相性が抜群のFAレンズ群は、軽量コンパクトな外見に似合わず、どれも非常に高性能だ。特に、逆光などの厳しい撮影条件にめっぽう強い。 つまりエンゾーにとって、ペンタックスを使うということはFAレンズを使うということと同義であって、そこにレンズメーカー製のレンズが入り込む余地はなかった…はずであった。 ところで、ペンタックス純正の大口径標準ズームはFA☆27-70mmf2.8であるが、このレンズは巨大すぎて、MZ-3にはあまりに不釣合いである。オマケに設計が古く、性能的にはライバルたちに一歩以上遅れをとっていた。 そこに彗星のように現れたのが、このタムロン28-75mmF2.8である。「大口径ズームはデカくて重い」という常識を根底から覆したこのレンズに、エンゾーは激しく興味をそそられた。 まるでペンタックスファンのためにあるようなレンズではないか! 雑誌やネット上にインプレが出るまで我慢していたものの、評判が予想以上に良かった事から、もはや居ても立ってもいられず、一番最後にFAマウントが発売になるや否や、ついに買ってしまった。それはFA24-90mmが、MZ-3に付ける標準ズームのエースの座を奪われた瞬間でもあった。 前振りが長くなってしまった。 肝心の描写性能は、世評通り、まったく問題ない。某所で、EF28-70mmF2.8Lとの比較が行われていたが、少なくともエンゾーには、その差が判らなかった。強いて言えば、開放で描写が甘くなるのと、周辺光量落ちが他社大口径よりわずかに目立つ。ただしそれも、F5.6まで絞ればほとんど目立たなくなる。歪曲収差は良く補正されていて、コンパクト化の弊害もなく、必要十分である。 また、EF28-135mmISやSIGMA28-70mmF2.8EX DFと比較すると、明らかに逆光に強く、フレアやゴーストはなかなか顔を出さない。発色は、タムロンの他のレンズと同様、やや暖色系に寄ったセッティングになっている。 コントラストはごく普通のレベルで、解像感に関しては感動を覚えるような線の細さは感じないが、階調を損なうベッタリした描写にはならない。ニュートラルな素性の良さが身上のレンズといえる。 多重カムの作りこみはさすがタムロンで、ガタのない、スムースで精密感のある繰り出しをする。もちろんトルクも一定だ。また、自重でレンズがズルズルと伸びてしまうのを防ぐズームロックは、このレンズにもしっかり採用されている。こういうちょっとした使い勝手や感触を大事にするタムロンの企業姿勢には、とても好感が持てる。 ちなみに、某写真雑誌のベンチテストに寄れば、意外にも個体差があるとの事である。「ハズレ玉」の場合は偏芯が見られ、それに起因する焦点移動があるようだ。これは、複雑を極める多重カムの弊害と見られている。残念ながら、店頭でこの辺のチェックは不可能なので、これはもう運を天に任せるしかない。 惜しいのは、相変わらずその外観である。タムロンいわく「高級感のある意匠にした」とのことだが、エンゾーにはそうは見えない。少なくとも見栄えに関しては、ライバル・シグマの方が一歩以上リードしていると思える。 ともあれ、間違いなく買って損はない、質実剛健なレンズである。 作例 長所 ○大口径ズームの常識を覆すコンパクトさ。常にライバルの先を行くタムロンの開発力には、心底恐れ入る。 ○「安かろう悪かろう」が当てはまらない、安定した描写性能。使い勝手の良さに、タムロンの良心を見る。 短所 ●いかにもタムロンらしい、デザインの垢抜けなさ(笑)。 ●他には特にないなあ…。大きな欠点を探すのが難しいレンズです。 スナッパーへのオススメ度(10点満点) ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ 風景派へのオススメ度(10点満点) ☆☆☆☆☆ ☆ *文句なしのオススメレンズ。気軽に大口径を楽しみたい人、必携! ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|