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Leica M4(BP)

 
 
 
         Leica M4 (AFTER BLACK PAINT)

  
  Leica M4(BP)+color skopar35mmF2.5P2
 
勝手にインプレッション

M型ライカにはあまたのバリエーションが存在するが、それぞれに魅力があり、なかなか甲乙付けがたい。だからライカ使いと言うものは、ファーストライカで収まる事はあまりなく、実はこっそり色々なライカに浮気する傾向がある。
さらに、様々にライカ遍歴を重ねた挙句、結局はこの一台に落ち着いたという「マイフェイバリット・ライカ」が見つかるものだが、これがまた人によってかなり違う。

まず大きく分けて、露出計を搭載しているかどうか・・・つまり「M5以降組」と「M4以前組」に分かれる。普段使いでガンガン撮りたい向きには内蔵露出計の恩恵が大きいようで、M6やM7が人気がある。かく言うエンゾーも、一番稼働率の高いライカはM6Jだ。また、近年は「最も使いやすいライカ」として、M5も再評価されている。
 
ところが、世のライカファンの中には多少の不便など気にも留めない人も多く、そういった向きは、最高のファインダーを求めてM3を愛用したり、あえてシンプルなM2に行ったりする。そして、人間露出計を自認するハードユーザーに圧倒的な支持を得ているのが、このM4である。
実際、中古市場の流通価格を見ると、M4は他のモデルに比べて明らかに高い。もちろん一番高価なのは、現行型であるMPやM7の中古だが、M4はもう一つのピークを形成している人気モデルだ。

 
実はエンゾー、当初M4にはまったく興味が無かった( ̄▽ ̄;)。露出計が内蔵されていないので自分には使えないと思ったし、太くて鋭角に曲がった巻上げレバーは不細工だったし、何より、ぬめっとしたプラスティックパーツをはめ込んだ、大きなセルフタイマーとフレームセレクトレバーのデザインが目障りで仕方がなかった。ものの本で、訳知り顔のライターが「左右にレバーを配したM4のシンメトリーなデザインは最高である」などと解説しているのを読んだ日には、思わず「どこがシンメトリーなんじゃ(-_-メ)」と突っ込みを入れたほどだ。

ところが、エンゾーはある日、一冊の本に出会う。カメラマン渡部さとる氏の著書「旅するカメラ2」である。書店で何気なく手にとってパラパラめくると、いい感じの作品がいくつも目に止まったので、内容も読まずに買って帰った。夕食を済ませ、ベッドに寝そべってくだんの本を開き、軽妙な語り口の文章を時に吹き出しながら楽しんでいるとき、何の前触れもなく、その言葉は飛び込んできた。
 
『感度分の16』

感度分の16?(・_・?)なんだそりゃ。

『(前略)・・・世界中、晴天なら太陽の光の量は一緒。晴れた日に写真を撮りたければ、絞りをf16まで絞って、シャッタースピードを「1/ISO感度」にセットすればいい。・・・(後略)』 

ハンマーで頭を殴られたような衝撃だった。
言われてみればその通りである。渡部氏によれば、あとはそれを基準に、日陰ならこのくらい、曇りや室内ならこのくらいという風に調整すれば済むとのことだった。そうか、光を読むとは、つまりこういうことなのか。久しぶりに胸が躍った。

ここで「それならM6Jから電池を抜いてみよう」とはならずに、「露出計を内蔵していないライカで写真を撮ってみたい!」という方向に行ってしまうのが、ライカウイルス保菌者の悲しい性。あろうことか、M4は突如として、欲しいカメラリストのトップに躍り出たのである。
 
 
さて、デザインが気に食わなかったM4ではあるが、その気になって調べてみると、自分の好みに合ったバリエーションが存在することがわかった。M4ブラッククロームだ。つや消しで使い込んでもテカることなく、甲虫の背中のような丸みとテカリが嫌いだったフレームセレクトレバーには、白いパーツが埋め込んであってフラットだ。僕が手に入れるべきM4はこれなのか?

しかし、綺麗なブラッククロームは例外なく高かった。比較的安いのはシルバークロームだが、すでにM6Jを持っている上にさらに同じ色のライカを持つつもりがなかったので、パス。残るブラックペイントは、そもそもオリジナルだとお話にならないくらい高いし、テカテカした塗りが嫌いなので、これもパス。
いっそのこと、M4の子孫で、人気薄ゆえに廉価で手に入るM4-2やM4-Pに行く手もあったが、軍幹部の前面に文字が入ること、ファインダーの評判が良くないこと(しかもM4-2はハレーション改善も出来ない!)、バックドアのインジケーターがコストダウンされていることなど、エンゾー的に看過出来ない点が多かったので、やはりパス・・・。あらら、八方手詰まり。
 
そんな調子で半ば諦めかけていたとき、ヤフオクで予想外の出物があった。M4の後塗りブラックペイントである。ライカの世界では、後塗りそのものは珍しい話ではないが、そのロットは、まさに求めていた「ツヤなしブラック」でオーバーホール済み、しかも格安の即決価格が設定してあった(M4-Pクラスの価格)。三日間悶え苦しんだ挙句、ついにエンゾーの理性は蒸発した。ぽちっ。

手元に届いたM4は、ブラッククロームボディと見まがうほどにツヤが抑えられ、惚れ惚れする出来栄えであった。が…残念なことに、使ってみるといくつか不具合が見つかった。出品者が良心的な方だったので、極めて迅速に返品に応じて頂いた。さすがに落胆は大きかったが、これがきっかけになって、エンゾーの心の中ではある決意が固まっていた。

それからは辛抱強く、格安のシルバークロームが現れるのを待った。そう・・・さんざん遠回りした挙句、とうとう後塗りする覚悟を決め、ベースボディを探すことにしたのだ。2ヵ月後、福岡のレモン社で、ブライトマークだらけのくたびれたM4を発見。動作がしっかりしていて、凹みや致命的な欠陥がないのを確認すると、いそいそと持ち帰った。

  
  これがベースとなったシルバークロームボディ。これはこれで悪くはないのだが・・・
 
後塗りをお願いしたのは、その筋では有名なお店「ルミエール」。まさに夏も盛りの7月末、電話とメールで打ち合わせをして、M4は10月末に大手術を受けることになった。なんと三ヶ月待ち!酔狂な患者が思ったよりも多いことに驚いた。
そうした紆余曲折を経て、ついに完成したのが、いま手元にあるM4ブラックペイントである。 

ちなみに、エンゾーがルミエールに出した注文は次の4つ。

 1.とにかく、極力艶消しにして欲しい。
 2.バックドアも含め、グッタペルカは全面張り替え。
 3.シャッターボタンとお皿だけはシルバークロームのままで。
 4.ついでにオーバーホール。

結論から言うと、見事に注文通りに仕上がっていた。思いきり光を当てても黒光りすらしないような、超マットブラックになって帰ってきたM4に、非常に満足したのである。
お皿をシルバークロームのままにしたのは、オリジナルのM4ブラックペイントもそうなっているから・・・と言うよりは、ここはつるつるしている方が、摩擦が少なくてシャッターを押したときの感触が良いから。
グッタペルカを変えたのは、いわゆるM4臭さをなくし、正体不明な感じにしたかったので。

ただ唯一の誤算は、M6Jだろうがハンマートーンだろうがガシガシ使うエンゾーですら、このデリケートな黒塗りだけは使うのを躊躇してしまうことだろうか( ̄▽ ̄;)。って、作った意味ねーじゃん。感度分の16はどうした!

  
  (で、結局こうなった。が、この後さらなる悲劇が…)

ここまで気合を入れて製作したM4だったが、露出計がない不便さには抗し難く、結局傾斜クランクを装備したMP(改)の入手と同時に、手放すことになった。まったく、ここまで熱しやすく冷めやすいと、我ながら情けなくなる。相応しい持ち主への元へと旅立って行ったことが、せめてもの慰めだ。




長所

○とにかく美しい!優雅なM6Jとは対極に位置する、スパルタンな雰囲気にシビレる。
○ルミエールでチューンされたシャッターは、静かでショックも優しい。
○露出計から解放されることの喜びを教えてくれる。
○光を読む癖が身に付く。電池が要らないって素晴らしい。

短所

●ノクトン40mmf1.4をつけると、なぜかうっすらと90mmのフレームも出る。
●ブラックペイントは非常にデリケートなので、つい取り扱いが慎重になってしまう。
●矛盾するようだが、露出計がないと不便であることには変わりない。
●セルフタイマーいらね~ヽ( ̄Д ̄*)

超個人的オススメ度(10点満点)
☆☆☆☆☆ 

偏愛度(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆

Yahooオークション出現率(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ 
*M4はうじゃうじゃ出品されるが、程度も価格も千差万別。買うなら即オーバーホールを前提に。


 
 
 



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