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RICOH GXR

 
 
  
                   RICOH GXR

 


勝手にインプレッション

何もかもが違う、新世代のカメラ。それゆえに、筋金入りのリコーファンもそうでない人も、頭に浮かんだ懸念は同じだったはずだ。
「はたして、この斬新過ぎるカメラは生き残れるのか?」

リコーの製品には、以前からシンパシーを感じていた。とにかく、モノ作りに対する姿勢が真摯だ。流行に左右されず、ユーザーにも媚びない。コツコツと自分たちに出来ること、作らねばならないものを生み出してきた。最大のヒット商品であるGR Digitalシリーズが、液晶モニターの大型化以外ほとんど外観を変えることなく3代もモデルチェンジしてきたことが、何よりの証左である。

その一方で、各社がそれぞれ知恵を絞って高級機種をリリースしてきたあたりから、当初リコーが持っていた「趣味性」という圧倒的なアドバンテージは、徐々に、しかし確実に削られていった。28mmという使いこなしがいのある画角、無駄のない端正なデザイン、洗練された操作性、玄人好みの渋い質感…しかし、そういったGR独特の世界観だけでは対抗できないほど、他社のコンパクトの描写力やコンセプトは短期間で磨き上げられつつあった。

なかでも最も影響が大きかったのは、撮像素子の大型化と高感度画質の飛躍的な向上だ。当初、大型の素子を搭載していたのは、ある意味キワモノ的な存在であるシグマのDPシリーズだけだったが、その後マイクロフォーサーズの登場によって世間に認知され、瞬間的に一眼レフ市場の20%近くを占めるまでに広まった。
また、各メーカーのハイエンドコンデジの画質も格段に良くなったため、この頃になると、リコーのコンデジは画質面で明らかに他社に遅れをとるようになり、早急に何らかの手を打たなければ「外装に凝ったむやみに高いコンパクト」になる恐れが出てきていた。

実際GRは、以前からヨーロッパでは受け入れられているのに北米市場ではセールスが芳しくないが、これは北米ユーザーが「小粒でピリリと辛い」といったGD独特の世界観にあまり理解を示さず、「小さ過ぎて持ちにくいしズームだってついていないのに、価格ばかりがやたらと高い」と評価しているからだと、リコーの中の人に聞いたことがある。無駄を削ぎ落した道具が持つ美学のようなものは、残念ながら通じる人にしか通じない好例である。

ちなみに、エンゾーは初代GX100について、GX200が出たころに、インプレで次のように書いている。

『GX100は銀塩GRの延長として生を受けたGRDよりもはるかにエポックメイキングなカメラであり、デジタルカメラの長所を上手にまとめ上げた名機だと言える。(中略)…なので、リコーにはもっと堂々と売って欲しいというか、少なくとも価格はそれなりに高いのだから、いつまでもGRの下ではなく、外観などの細かい仕様も含め、フラッグシップ扱いに格上げしてもいいのではないだろうか。』

はたして、リコーはGXRをGX200の後継機種として位置付けてはいるものの、3代目にして大きく脱皮し、文字通りリコーの最高級機へと変貌した(精神的フラッグシップは、相変わらずGRDとのことだが)。それは奇しくも、撮像素子の大型化や質感・剛性の向上といった、エンゾーが欲してやまなかった部分をすべて兼ね備え、それどころか予想もしなかったようなユニークさをも与えられていた。

GXRの最大の特徴は、言うまでもなく、ユニットの交換によって様々な特徴を持つ映像機器に変化するところである。あえて映像機器という言い方をしたのは、今後の展開次第では単なるカメラという枠から大きく逸脱したまったく新しい存在になる可能性を秘めているからだが、とりあえずそれに関しては脇に置き、まずはユニット化のメリットに目を向けてみることにする。

通常、レンズ交換式カメラは、レンズ交換の際にキズやホコリに気を遣わなければならない部分としてボディ・前玉・後玉の3箇所が挙げられるが、ユニット方式を採用することにより、注意点が前玉だけで良くなり、レンズ交換時の心理的ストレスが大幅に軽減されている。
この手のカメラは、その名の示す通りレンズを交換してナンボであるから、交換する際にストレスがないのは、道具としてとても大事なポイントだ。ユニットという考え方は、レンズ交換式カメラの進化の方向性としては正しいといえる。

さらに、このユニット(リコーいわく「カメラユニット」)は撮像素子だけでなくレンズシャッターも内包している。一般的な縦走りフォーカルプレーンシャッターではないので、シャッターショックが無い。手持ち撮影の領域で、手ブレ・ミラーショック・シャッターショックという三つのブレ要素をすべて軽減もしくは排除できたのは、おそらくこのカメラが最初である。

ユニットは今のところ2つだが(注:P10が加わり3つになった)、A12ユニット=50mmマクロの描写はすこぶる秀逸である。一般にAF速度が遅いと言われるが、少なくとも実用上困るほど遅いと感じたことはないし、ファームアップで挙動が変わり、合焦までの感覚的な長さがかなり改善された。
この50mmの写りが、リコーの主張したかったこと…すなわち「必ずしもすべての撮影シーンで一眼レフが必要か」という問に対する一つの回答になっているように感じる。
あとは単焦点の早急な拡充が待たれるところだ。2010年冬には28mmユニットがリリースされるとのことだが、それだけではもったいないので、ここはぜひ35mmやマクロではない50mmなども増やして欲しい。


ところでGXRの発売当初、「ボディが大きい」「高すぎる」「我々が待っていたのはこれではなく、あくまでもGX200の延長線上にあるカメラだ」「ズームも単焦点もというのは欲張り過ぎ。どっちつかずでコンセプトが分からない」といった意見があちこちで見られた。
それらのブーイングを見たとき、エンゾーはむしろ、そういう見方もあるのかと面食らった。と言うのも、GXRは一眼レフとのリプレイスを狙った野心的なカメラという認識だったので、十分過ぎるほど小さいと感じていたのだ。捉え方の違いで、こうまで評価が違うのが面白い。残念ながらズームユニットはAPS-Cではないので、一眼レフの代わりが完全に務まるわけではない。が、大素子の単焦点レンズが出揃ってくれば、ズームに頼らずとも十分撮影を楽しめるはずである。


GXRの魅力は、つまるところ「趣味性の高さと変わらないコンセプト」の一言に尽きる。源流たる銀塩のコンパクト「GR1」は、1996年10月にデビューしたカメラであり、登場から既に十余年の歳月が流れている。にもかかわらず、初代が確立した「直線的で一切の装飾を廃したデザイン」「マグネシウムボディにザラリとした黒色焼付塗装」「よく写る広角単焦点」といったスタイルは、まったく色褪せることなく、うるさがたのカメラマニアはもちろん、銀塩のGRを知らない世代(むしろ今ではこちらの方が圧倒的に多数派だ)からも絶大な支持を受け続けている。

変わらないことは、ただそれだけで価値がある。いまGR1を見ても、古さなど微塵も感じない。その理念を連綿と受け継いでいるGXRとリコーの社風には、敬意を表したい。





長所






短所







超個人的オススメ度(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ 

偏愛度(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆



 
 



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