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カテゴリ:現代社会の問題
●中谷巌は小泉政権の片棒を担いだことある経済学者であり、当時は新自由主義者であった。ところが…下記の文章は昨年末に出版された『資本主義はなぜ自壊したのか』からの抜粋である。
新自由主義の思想は、私たちが暮らす社会を個人単位に細分化し、その「アトム化」された一人一人の自由を最大限尊重するという思想だから、安心・安全、信頼、平等、連帯などの共同体価値には何の重きも置かない。つまりは人間同士の社会的つながりなど、利益追求という大義の前には解体されてもしょうがないという「危険思想」なのである。 現代世界には、そんな危険思想を内包するグローバル資本という怪物が地球上を自由に闊歩しているのだ。 グローバル資本主義や新自由主義というモンスターの被害は、格差社会の広がりに象徴されるような「社会の解体」だけにとどまらない。世界中でおきている環境破壊もまた、市場原理優先の思想が生み出したものに他ならない。 利潤追求を至上命題とするグローバル資本主義においては、子孫のために自然環境を守り、資源を節約しようといった話はしょせん副次的なテーマにすぎない。グローバル資本主義は地球環境問題について責任を負わないばかりか、むしろ、環境破壊を加速する側に加担しているのだ。 ●私に言わせれば「加担」ではなく、「元凶」そのものであるが。いずれにしても、かつて読んだことのある『痛快!経済学』と同じ著者であるから驚きである。 ●この本のなかで著者は新自由主義者からの転向を表明し、その理由を述べている。そして、上記の引用文のように真っ向から新自由主義を批判する側に廻っている。 資本主義はなぜ自壊したのか 中谷巌 ●アメリカという国の特徴や日本の国の特徴に関する歴史的な説明は分かり易くもあり、少なからず納得もできる。 ●新自由主義を卒業した著者は、いきおい新自由主義や市場経済原理主義の対極にある北欧の高福祉・高負担社会志向に傾斜しており…私は北欧諸国の経済がいま活気を呈している根本の理由として、そこに暮らしている人たちが「安心感」をもって働いていることにある…と言っている。 ●そして著者は、税制改革として基礎年金を北欧型の税方式にすべきであるとして…消費税の「欠点」を解消する秘策…なるものを提案している。「秘策」とはおこがましいが、なんのことはないベーシック・インカムのことである。 ●これは、消費税率をヨーロッパ並みの20%にして、消費税の「逆進性」を解消するためベーシック・インカムにヒントを得た「還付金付き消費税」の提案である。例えば、年収200万円の人が全額消費した場合の消費税額40万円がチャラになるように「全国民に毎年40万円づつ還付する」という制度である。年収200万円(消費支出同額の場合)以下の場合には消費税よりも還付額の方が大きくなる。 ●就労の有無に関わらず40万円が支給されるわけであるから、低所得者には大歓迎されるに相違ない。 ●ヴェルナーのベーシック・インカムの趣旨は「労働と所得の分離」にあり、その財源を消費税(付加価値税)に求めているので、著者の還付金構想はこのベーシック・インカムと同じ系列上にあるとみてもよい。但し、ベーシック・インカムというには年40万円の支給額では少なすぎる。 ●この提案は、消費税を導入し易くする便法としてのものであるが、本格的なベーシック・インカム導入への入口としては、良い提案ではないかと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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