常緑樹26 指切りげんまん…

タイトル「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲~ます」
(平成16年6月号 2004/5/20)

「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲~ます」、子供たちが歌うように唱えるのを、最近あまり聞かなくなった。
これは、互いの小指を絡め合わせて誓う、約束を必ず守るという証。
指切りは遊女が客に、愛情の不変を誓うしるしに小指を切断したことに由来し、げんまんは、「拳万」と書き、約束を破ったら握りこぶしで一万回殴るという制裁の意味らしい。
さらに針を千本も飲ませる刑もつく。
いずれも痛そうだ。破ったときには、これほど厳しい制裁を受ける覚悟が必要、痛いのが嫌なら約束は守れよ、との戒めである。

約束とは、ある物事につき将来にわたって取りきめることで、基本的に未来の話だ。
必ずこうします、次は頑張ります、とこれからのありようを誓う。
未来のことだから、希望や努力目標も入ってくる。
約束は守りたいが、何が起こるかわからず、図らずも事情が変り遂行不能なことがある。

担保を取っておくことができればまだしもだが、日常の暮らしではそうはいかない。
社会や他人のせいにして逃げだしたい。
が、言い訳無用、できる限りの対応策を講じ、誠意を尽して許しを乞うだけである。

あるいは全くの不注意で、同時に果たせない複数の約束をしてしまうことがある。
これをダブルブッキングという。
あちら立てれば、こちらが立たず。
双方を立てることは不可能、どちらかに泣いてもらうしかない。
そんな時、往々にして弱い相手との約束を反故にしてしまいがち、なのが辛い。  
先日、ある人に約束破りの直撃を受け、怒髪天を衝いた。
虫けらのような扱い、舐められた気がして、情けなさに泣いた。
許さんぞー、と思い復讐を誓った。
しかし、時間と共に爆発的な怒りの炎が鎮まりだしたとき、ハタと考えこんでしまった。

止むにやまれぬ約束破りを自分はしたことはないか。
一所懸命やっている自分が悪いはずはないと信じ、時代が悪い、世間が悪い、と言い訳したことはないか。
知らず知らずに誰かの期待を裏切ったことはないか。
絶対にない、とは言いきれない、ような気が少ししてきた。

お互いが相手を認め、約束を守り、信頼し合うことで、世の中は成り立っていく。
そこに強弱や大小は関係ない。
思うようにいかないこともあるかもしれないが、どんな小さなことでも、約束は守りたい。
そして、人との信頼関係を築き続けていきたいものだ。
小さくとも、弱くとも、それが生きていく上で、人としての最低限の努めなのだと思う。

ある方の自戒六箇条は、
一、怠けるな
二、怒るな
三、威張るな
四、焦るな
五、腐るな
六、驕るな、とあった。
これを肝に銘じ、実践していくことを「お約束」します。


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