吹雪の中、倒れてしまった祐一
その時、目の前に車のヘッドライトが
そして薄れいく意識で、真琴の姿を見るのだった...
次に祐一が目を覚ますとそこは知らない部屋の中だった。祐一は自分の名を呼ぶ声を聞く。そこには懐かしい人物の姿があった...。
どこか真琴の面影のある女性
何故か彼女は、祐一のこと知っていた。
名前、名雪の家にいること。祐一は何故知っているのか、理由を聞いてみる。
いくつか言葉を交わしてみるが、祐一は思い出せない。
「昔は、ご近所だったんだけどね」
その言葉で、祐一はやっと思い出す。
彼女は、本物の「沢渡真琴」だった。
祐一と入れ違いになった北川。
自分ではどうすることもできず、香里を呼び出す。
親友同士、あるいは...人を失うという気持ちが分る香里なら...
名雪を助け出せると思っての配慮だったのだろうか...。
部屋に閉じこもる名雪と言葉を交わした香里。
自分も同じ恐怖・不安があることを名雪に伝える。
昔の自分と同じように、目の前のことから目を背けて欲しくないと...。
しかし名雪を部屋から連れ出すことはできなかった。
けれども、名雪の心は『雪解け』に向かおうとしていた。
香里も栞の意志で、名雪の側に付き添うことを決めたのだった。
祐一は自宅に電話をし直ぐに帰れない事を二人に伝えた。
見るからに暗い祐一に、真琴は理由を聞いていた。
祐一に懐かしさと成長を感じ、少し嬉しさを滲ませる。
真琴の問いに、祐一は「俺は...昔のままです」と答えた。
「あの頃と何も変わっていない...。誰かが苦しんでても何もしてやれない。何の力もなくて、ただ黙ってみているだけで...。名雪にも何もしてやれなかった!栞も、舞も、真琴も!」
「!」
「皆、俺を待っていたのに!俺一人、何もかも忘れて!それに、あゆも!あゆにも何もしてやれなかった!何も気づいてやれなかった!約束してたのに...そのことさえ忘れて...同じことを繰り返しているだけだ!俺は...」
昔と変わらず、無力で臆病な自分を悔やみ涙を流す。
分っていながら、誰一人救うことができない自分が情けなくて...。
真琴は、俯き涙を流す祐一の手に自分の手を置き語りだす。
「昔もこんな風に自分のこと、色々と聞かせてくれたわよね?」
祐一は涙を堪え、真琴の話を聞く。
「知ってる?北国の樹はね、年輪がハッキリしているんですて。冬の寒さををじっと耐えて、そうして年輪が増えていくの。そうやって育った樹は強く、丈夫に成長するわ。人間も同じ。悩んだり、苦しんだりして、強く優しく、なれるんじゃない?」
吹雪は弱くなっていた。
「もし、誰かと約束をしたなら、ちゃんと守ってあげなくちゃね」
祐一が目覚めると、既に昼過ぎで真琴の姿は無かった。
テーブルの上には、出かけるということと、冷蔵庫に昼食があるという書置き、部屋の鍵。
祐一は香里に、もう少しかかると電話をし、冷蔵庫を開け真琴が残していった肉まんを食べると部屋を後にした。
そして、もう一度約束の場所へ向かう。
今できることは、約束を果たすことだけ...。
吹雪ではなくとも、雪の山道は息が切れる。
それでも祐一は山道を登った。
あゆのことを想いながら
この数週間は嘘でなかったことのために
確かにそこにいた少女のために
あの笑顔にもう一度会えると
約束を果たす為に
祐一は山を登りきると、大きな切り株の前に腰を下ろした。
遂、切り株の前で眠ってしまっていた。
そして夢を見ていた、あゆがいて、秋子さんがいて、名雪がいた。
本当の家族のように4人が楽しく、仲良く暮らしている夢を。
目が覚めると、既に世界はオレンジ色に変わっていた。
以前も同じことがあったこと思い出し、あゆの言葉を思い出し祐一は呟いた。
(やっぱり、待ってた人が来てくれることが一番嬉しいよ!それだけで、今まで待ってて良かったって思えるもん!)
(祐一君がボクのこと好きでいてくれるのなら!ボクはずっと祐一君のことを好きでいられるんだと思う!)
「俺も今でも、お前のことが好きだぞ...」
「ボクもだよ、祐一君」
もう二度と会うことなどないと思っていた少女の声が風に乗って届いた。
いや確かに、そこに少女が夕日を背に立っていた。
「だったら、どうしてもう会えないなんていったんだ?」
「もう時間がないから...。今日は、お別れを言いに来たんだよ...」
「俺は、忘れ物を届けに来たんだ」
「見つけて...くれたんだね...」
「苦労したぞ...本当に...」
「ありがとう...」
祐一は立ち上がると、あゆの下へ歩いていった。
確かに目の前にいるあゆに、羽根のついたカバンと天使の人形を渡す。
そして、3度目の願いを叶えさせてくれるように頼む。
あゆもそれを素直に受け入れ、3度目の願いを口にする。
「祐一君...ボクのこと...ボクのこと...忘れてください!」
「ボクなんて、最初からいなかったんだって...。そう思ってください...ボクのこと忘れて...」
あゆの笑顔が消え、瞳からは涙が溢れ、嗚咽で言葉が詰まる。
それが精一杯の強がりであることは言うまでも無かった。
「本当に、それでいいのか?本当に、あゆの願いは俺に忘れてもらうことなのか?」
「だってボク、もうお願いなんて無いもん。本当は、もう2度と食べられないはずだった、鯛焼き一杯食べれたもん!だから...だから...ボクのこと忘れてください」
精一杯に強がり笑顔で嘘をつくあゆ。
耐え切れなくなった祐一は、あゆに駆け寄り抱きしめる。
同じ年のはずなのに、胸までしかない小さな体を優しく強く...。
「祐一君...ボク、もう子供じゃないよ...」
「お前は子供だ」
「そんなこと、無いもん...」
「一人で先走って、周りに迷惑ばっかりかけているだろ?」
「うぐぅ...」
「そのくせ自分で全部抱え込もうとする。その小さな体に全部。お前は、一人ぼっちなんかじゃないんだ!その願いはダメだ!聞けない!」
「祐一君...」
「俺がお前を忘れられるわけ無いだろ!」
「お願い決めたよ...ボクの最後のお願いは」
祐一の腕の中で、あゆは本当の願いを伝える。
だが突然の風に、あゆの言葉はかき消された。
祐一の耳に、その言葉は届かなかった。
祐一は再びあゆを抱きしめた。消えてしまう気がしたから、放したら消えてしまう気がしたから。
「祐一君、ボクの体まだ暖かいかな」
「当たり前だろ」
「よかった...」
あゆがそう呟いた瞬間、祐一の腕の中で光が砕け、風にさらわれて行った...。
あゆが消えた後、祐一はいつものベンチに座っていた。
7年前、心を壊してしまった少女を待って。
「祐一、探したよ...」
そこに現れたのは名雪だった。
香里の言葉で、立ち上がることができた名雪が迎えに来てくれた。
「あぁ、心配かけたな」
「それはこっちの言うことだよ?」
名雪は瞳から涙が零れ落ちないように、一生懸命に笑顔を作っていた。
「名雪、俺、いつもお前に頼っていた...甘えていたんだ。ごめん...」
ベンチから降り、跪いて土下座をするように祐一は謝った。
謝っても、謝りきれない罪を認めて。
「私こそ、酷いこと言った...祐一に...」
「名雪、俺お前に...!」
「これで、おあいこ」
名雪は、さらに続けようとした祐一の言葉を遮った。
「おあいこ...?」
「うん!おあいこ、だよ!」
名雪は満面の笑みで頷き、祐一の頭の雪を払う。
「病院から、何か連絡あったか?」
「うぅん...」
「そうか...」
「祐一、私、強くなるよ」
名雪は落ちそうになる涙を拭った。
「あぁ」
「祐一、悲しそうな顔してるよ?」
「光の加減だろ...」
名雪は悲しい表情を隠せない祐一を抱きしめた。
そして約束をした頑張ろうと、二人で頑張っていこうと。
「ガンバロ...祐一!約束、だよ!」
「あぁ...」
「もし約束破ったら...」
「イチゴサンデーおごる」
「だめだよ!イチゴサンデーでも許してあげない。ふぁいと、だよ!祐一!」
「あぁ...ふぁいとだ」
いつもの笑顔が戻ってきた。
無くし掛けていたものと一緒に、帰ってきたのだ。
またスタートを切ることができる。
諦めずに、また歩きだす。
夢の続きをまた...。
優しい雪が降っていた
様々な想いが溢れる街に
淡い雪は春の近づきを
凍り付いていた時間の終わりを予感させ
夢の終わりを告げる
そして再び歩き出す
止まっていた時間を取り戻す為に
<続く>
やべ~
Last regretsの違うバージョン流れた時はやばかったw
しかも、オリジナル展開!
本物の沢渡真琴登場!
美人だったですな
香里の援護もあって、名雪が復活!
名雪かぁいいな~
ところで、あゆの話はまだ終わってないんですよね~
どうるのか?
それは次回を見てくださいw