カテゴリ:カテゴリ未分類
私の尊敬するゲームディレクターの話。
彼はとにかく「コスト管理と対価効果」の見極めが非常に上手い人でした。 例えば、ゲーム内の背景モデルの見積もりをデザイナーが当然のように検討しているところにひょいと表れて「なあ、このゲーム、背景モデルいらなくねえ?」と(W.何を言い出すんだこの人は!と一瞬思いましたが「このゲームでは視点がぐるぐる変わらなきゃいけないようなシチュエーションはほとんどない。だったら、そのためにモデラーを半年以上、5人も拘束するのは馬鹿馬鹿しい。だから、必要な場所以外はアニメーションの背景スタジオに2Dでお願いした方が早いし、いいものが出来る これが見事に正解。おまけに2D独特の味わいも出て、しかもアクセスも早いという、イイコト尽くめの結果でした。 これ以外にも、デザイナーが端役キャラクターモデリング1体を2週間の見積もりで計画書を提出したところ「これさ、1週間で出来るモデルにしない?」と。もちろん、デザイナー側はそんな期間では出来ない!と反発しましたが、「そりゃ、2週間掛かるモノを一週間で作れ、というのは無理な話。でも、最初から一週間で出来る上限のものを作ってよ。それ以上は求めないからさ」と・・・ これ、一見手抜きの話に聞こえますが、モデリングってそういうところがあって、細部を突き詰めようとすればするほどいくらでもいじれる。けど、実際の話としてプロが一週間掛けて作ったモデルと2週間かけて作ったモデルのぱっと見た印象って、2つ並べる機会でもないと素人にはわからないんですよ。 しかし、だからこのディレクターが単なるコストカットの鬼か?というとそうじゃなくて、このゲームの売りになる部分に関しては上記で出た余裕を全て投入するという、戦力の集中が非常に上手い人だった訳です。 結果としてこのゲームはその手のジャンル内ではまったくの新規作品にもかかわらず、ヒットをしました。と、それ以上にすばらしかったのが、開発期間をぴったり守り、そして、ゲーム業界では日常になっているデスマーチが一切なかったという・・・過去20年近くこの仕事をして、一番楽で、そして結果を出せた仕事でした。 また、こういう余裕がある仕事だと、スタッフ側からも「もっとこうしよう」というような余裕も出てくるもので。いつもスケジュールがギリギリの状態だと自分の仕事に手一杯になりがちなだけに、いろんな遊び心を入れられたり。 そのディレクターの口癖「俺らは楽しいもの作ってるんだから、作っている側が死んだような目でいいものが作れる訳がない」 よく徹夜や泊り込みを自慢するような気質がこの業界にありますが、最初からスケジュールが破綻しているのを自慢しているようなものですからね。期間内に最大限の効果を上げ、質も落とさず、開発者にも過度な負担をかけない。 理想論のようですが、それが出来るディレクターは確実に存在します。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|
|