NHKクローズアップ現代の12月1日放送は「週末ファーマー200万人の可能性」であった。
このブログでも、クローズアップ現代は時々取り上げているが、良きにつけ悪しきにつけ、それだけ農業に関する話題が取り上げられる時代背景があるということだろう。
週末や仕事の合間に農業を楽しむ会社員や主婦、いわゆる「週末ファーマー」が増えている。
畑を小さく区切って期限つきで貸し出す「貸し農園」を利用する人は200万人に及ぶとも言われ、農業就業人口260万人に迫る勢いだ。
ブームに乗ろうと、都市の宅地や駐車場を貸し農園に作り変える企業も登場した。
高齢化・後継者不足に悩んでいた地域が貸し農園によって活気を取り戻すケースも出ている。
その一方で、貸し農園より大きな畑で農業にチャレンジしたいという市民には、日本の農地制度の厚い壁が立ちはだかるという現実も見えてきた。
存在感を増してきた「週末ファーマー」は、低迷する日本の農業に新たな風を吹き込むことができるのか。その可能性と課題を考えるというものだ。
この件に関していくつかコメントしておこう。
まず、「貸し農園を利用する人は200万人に及ぶとも言われ、農業就業人口260万人に迫る勢い」とのことだが、260万人という数字は、「販売農家」163万2千戸のことで、農家には他に「自給的農家」が89万7千戸あるので、その人口を加えて比較をすると、仮に、自給的農家で農業に携わる人が1戸あたり1.5人とすれば、89.7万戸?1.5人≒135万人となり、260万人に加算すれば395万人となることを付け加えておく。
といって、もちろん週末ファーマー200万人の価値がさがるというわけではない。
その上、参加人口は200万人だが、参加を希望する人口は820万人いるとされている(社会経済生産性本部 レジャー白書2008より)点も付け加えておこう。
農家が市民農園を開設する場合には、次の3つの方法があり、
・ 農園利用方式:農園での農業経営は農家が行い、市民は入園料を払って小規模な栽培をレジャーとして楽しむ
・ 特定農地貸付法による方法:1区画(1,000平方メートル)未満、営利目的で農作物を栽培しない等の条件
・ 市民農園整備促進法による方法:休憩施設等の附帯施設を農家自らが整備し市町村の認定を受ける必要がある。
ということで、特に、面積と販売については留意が必要だ。
面積については番組でも触れられていたが、
原則は1,000平方メートル以上を超える面積の農地を、市民が借りようとすれば、新規就農扱いだから、農業委員会の許可が必要で、原則として北海道では2ha以上、都府県では50a以上の面積を確保しなければならない。
10a以上の面積を貸してくれる農家がいたとしても、50a未満なら農業委員会の許可がおりないということだ。
この件に関しては、又別稿で述べれればと思う。
販売については、原則禁止となっているが、一部認められる方向のようだ。
が、販売となると、農薬取締法はもとより、JAS法に基づく表示の義務をはじめ、、「住宅地等における農薬使用について」「農薬の飛散による周辺作物への影響防止対策について」等の通知があるので留意が必要だ。
それから番組の中で週末ファーマーの女性の一人は、
「畑で作れないものはスーパーで買いますが買い物のしかたにもちょっとした変化が。少々高くても国産品を買うことが多くなったと。
これまでは絶対に手に取らなかった虫食いの穴が開いた野菜もあえて買うようになりました。」
とのコメントがあったが、敢えて虫食いの野菜を買うべきかどうかは別として、どんな職業でも、傍から見てるだけでではわからない事が多いのも事実だ。
農業が病害虫との戦いだと言う認識を持っていただけるだけでもは農家にとってもありがたい事ではある。
又、出版業界は農業の企画で読者拡大を図っているということだが、確かに本屋さんに立ち寄ってもそういう情報が溢れているようだ。
しかもその内容はプロ顔負けの結構高度な内容も多い。
時期時期に特集が組まれ、ひとつの野菜についての起源から、特徴、生理生態、同系統や新種、、肥培管理はもとより、結構な薀蓄まで、「えっ、そうだったの!」といった目から鱗的情報が、盛り沢山で、一応プロのファーマータナカも立ち読みしながら、自尊心を大いに傷つけられつつ、前から知っていた事にする場合も多い。
(現実に専門誌に載っていない探していた情報が書いてあったりするのだ。)
元来農民は、一般論として、よく言えば素直、何でも言われるがままに受け入れてしまう体質かなという気がする。
何故、どうしてと問い返さないで、品種も施肥も栽培技術もお上の言う通りにされる方が結構おられるような印象を受ける。
反対にファーマータナカは、何故、理由は、メカニズムはと問い詰めて、どうも煙たがれているようだ。
だから経営が大変なんだ、そんな枝葉末節な事を考えるより、とっとと農作業に精を出したら、というわけだ。
しかしこの流れだと、「プロのお百姓さんてこの程度なの。」と素人の皆さんに早晩小馬鹿にされるようになるのは時間の問題だと危惧しているのだ。
農業に限らず探究心や向上心は持ち続けて欲しいと思う。
ということで、自称プロのファーマータナカの存在も、いよいよ危険水域に突入とあいなったのであった。