カテゴリ:物の性を尽くす
形外先生言行録56ページの浅羽武一さんの話を紹介します。
昭和2年の初夏のある日曜日のことであった。 午前中の外来の診療が終わった後に、突然、森田先生が、今日はデパートに買い物に行くといわれた。 そして先生より野村兄などわれわれ弟子たちは一枚の十円札をもらった。 しかし買い方の条件があった。 それは十円札を全部使うこと、つり銭を残さないこと、自分の金を使ってはいけないこと、1時間以内にすますことであった。 我々弟子たちはデパートでいざ買うとなると、計算をしつつ、つまらないものを買わないように、むだ使いをしないようにと、大変気を使って、買い物をした。 ふたたび先生の家に帰って、皆で買った品物を先生の前にそれぞれ出して、見てもらった。 先生は一つ一つ見て批評されて、これは役立つもの、これは役に立たないもの、良い物、悪い物などと教えられた。 つまらない物を買った弟子たちは先生の話が身にしみた。 先生はこんな具合に、すべて実物指導されて、親切に教えられた。買い物をするときの心がまえを、いろいろと話されて、われわれを指導されたのである。 ここで10円札とあるが、当時の1円は現在の1万円にあたるようだ。 つまり10円札は現在の10万円にあたる。かなりの買い物ができる額である。 この話は、森田先生のお金の使い方に関しての考え方がよく出ていると思う。 お金は持って貯めているだけではダメだ。実際に活用しないといけない。 活用の仕方はいろいろと創意工夫しなさいということを言われているように思う。 さて森田先生がどんなものがよいと判定されたのかはとても興味がある。 森田先生は重視されたのは実用的なものだと思う。 保存の効く食べ物、消耗品、日常生活ですぐに役立つもの、毎日使うもの、みんなが使うもの。 身の周りの物で常日頃あったら便利だろうなと思っているもの。みんなを楽しませるもの。 逆に悪い物とされたものはどんなものだろうか。 趣向品、贅沢品、珍しい物。すでに持っているもの。ほとんど使い道のない物。 使い捨てのもの。すぐ壊れるもの。値段が高すぎて価格に見合っていないもの。 高い骨董品。保存がきかなくてすぐに腐るもの。 ちなみに森田先生の診療所には壁に次のような張り紙があった。 1、 困るもの―菓子、果物・特にメロン、商品券 2、 困らぬもの―卵、鰹節、茶、缶詰、金、りんご 3、 うれしきものー一輪花、盆栽、チョコレート(瓶詰め)、サンドウィッチ、女中に反物 私はこずかいは1年の初めに予算を立てている。それを月ごとに割り振っている。 食費、外食代、電気、ガス、下水道料、通信費、新聞・テレビ受信料、交通費、車両代、高速代、所得税や固定資産税などの税金、冠婚葬祭費、田舎の経費、本代、各種保険、交際費、旅行、趣味、厚生費、医療費、衣類、電化製品、毎年発生する各種会費、予備費などである。 気をつけているのは、予算の範囲で生活すること。 予算管理をしていると、スポーツ観戦、コンサートなどちょっとチケット代が高いと思っても、年間予算の範囲なら思い切っていくことができるようになったことである。 生活が苦しくなったら生活必需品のみの生活に徐々に絞ってゆこうと考えている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.04.07 10:00:17
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