カテゴリ:物の性を尽くす
樹木希林さんは果てしない物欲は人間をダメにすると考えられていたようである。
それを自ら実践し、子育てにも応用されていたのが素晴らしい。 娘の也哉子さんが言われるには、自分の子供から「周りの友達がみんな持っているから、どうしても欲しい」と言われると、「子どもに寂しい思いはさせたくない」と考えて普通親は買ってあげるのです。 樹木希林さんからしたらそんなことはばかばかしいことなんですね。 文房具一つにしてもそうなのです。 也哉子さんが小学生のころ、自分の文房具はキャラクターのプリントのない地味なものばかりだった。 友達はみんなかわいい文房具を持っていて、「今度交換しようね」などと話している。 私は1度もそういう輪に入れてもらえないのです。 私は嫌で嫌で、本当に母のことを恨みました。 この件について母は、「キャラクター付きの文房具なんてセンスが悪いじゃないの」という。 「え、あんなかっこ悪いものをあなたはいいと思うの」 「うあ、私にはそのセンスはありえない。私がお金出すんだから、私の好きなモノしか買いません」 母が妥協して買い与えるということは皆無でした。 小学校の制服が新しくなった時のこと。 「古い型を着ていてもいい」と言われたのですが、みんな替えるのです。 タータンチェックのスカートで、チェックの幅と色が少し変わったぐらいだから、そんなに大きな変化ではないのです。その時は母は私に言いました。 「そんなものは買わなくてもいい」 「着倒すまでその制服を着なさい。そんなに欲しいのなら、お年玉を貯めて自分で買いなさい」 そこで私は、自分で頑張ってお金を貯めて、やっと新しい制服を買いました。 洋服一つ、日用品一つにしても、そんな感じなのです。 子供のころは、母のストイックさには本当に嫌気がさしていました。 そうかといって母はケチでそうしているのではないのです。 初めて洋服を買ってもらったのが、中学に入ったお祝いの時です。 「冠婚葬祭に行けるような、キチットしたスーツみたいなのが必要だよね」 私が洋服屋さんで、「ああ、あれもいいな。これもいいな。ジャケットとパンツ。ジャケットに合わすスカート。で、ワンピース」とかで悩んでいたら、母は、「じゃあ、それ全部ください」といって、全部買ってくれたの。もう、あの時のことは忘れないです。その太っ腹にびっくりしちゃって。 その時に買った服ね。今でも着ているのですよ。 母も時々、「あれ、ちょっと貸して」と言って、紺のジャケットなんか、しょっちゅう二人で着てた。 30年使っているから、元は十分に取っているのですが。 「ウチは貧乏なのかな」と思っていたから、衝撃が強かったのです。 森田では物の性を尽くす、己の性を尽くす、他人の性を尽くす、時間の性を尽くす、お金の性を尽くすと言います。これは元々それぞれが持っている能力や価値を最大限に活用していくという考え方です。 「もったいないから、むやみに新しいものを買わない」ということではありません。 風呂の残り湯はすぐに捨てるのではなく、雑巾がけに使い、打ち水に使う。 植物にかける。役に立つ限りはトントン活用していくという考え方です。 つまり生き方の問題なのです。 樹木希林さんが、森田理論を学習されたわけでもないのに、そういう境地に達しておられたという事に驚かされます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.04.07 19:35:08
コメント(0) | コメントを書く
[物の性を尽くす] カテゴリの最新記事
|
|