カテゴリ:感情の法則
脳神経科学者の伊藤浩志氏は「情動」と「感情」は違うと言われている。
私たちは感情については学習しているが、情動については学習していない。 どのような違いがあるのでしょうか。 情動とは、主に外からの刺激に対して自動的に、そして大部分が無意識のうちに起きる一過性の生理反応のことで、発汗、血圧上昇、表情や行動の変化などの身体的変化が急激に起きる。 農作業中に蛇が出てきて急に身がすくむ。 自動車を運転中に急に子どもが道路に飛びだしてきて肝を冷やす。 情動には喜び、悲しみ、怒り、恐怖、嫌悪、驚きなどがあります。 この情動が前頭前野で意識化された時点で初めて感情になると言われる。 ただし情動は前頭前野に到達する前に、直接扁桃体に届くようにもなっている。 扁桃体は情動に基づいて、反射的で身体的な変化を起こしている場合がある。 そのために感情と情動を区別しているのである。 情動反応の特徴を見てみよう。 扁桃体の特徴は、届いた情動に対してどんな意味があるのかを問題にしていない。決めつけ・先入観をもとにして条件反射的な対応をとっている。 とりあえず危険と判断して即座に反応する。 見切り発車で防衛反応をとっているのだ。 そのために取り越し苦労に終わる確率が高くなります。 どうして情動反応による素早い反応が必要になるのか。 たとえば、山道を歩いている時に、目の前に細くて曲がったものがあったとする。 扁桃体はそれが棒切れか蛇か見分けがつかない。 つける必要がないと言った方がいいかも知れない。 しかし、たとえ取り越し苦労に終わったとしても、危険性が少しでもあったならば、即座に防衛反応をとる方が生存にとっては有利になる。 この場合は、蛇である可能性は少ないかも知れない。 でも蛇と判断して素早く反応した方が身の安全を確保できることになります。 この機能が進化の過程で淘汰されずに受け継がれてきたのである。 では、情動が前頭前野に送られて感情はどのように作り出されているのか。 前頭前野はその情動に対して分析・検討をくり返して感情を作りだしている。 その部所は前頭前野の腹内側部(VMPFC)と言われている。 腹内側部には、次々と情動が送り届けられている。 腹内側部は無数の情動を分析・検討して、それぞれの情動の軽重の評価を行っている。つまり情報のランク付けを行っているのである。 急いで対応すべきものや無視してもよいものなどを選別している。 感情を作りだすとともに、その後の対応方法をも同時に決めているのです。 検討・分析に際しては、その人の普段の認知や思考パターンの影響を受けます。 先入観や決めつけ、観念的で「かくあるべし」の強い人は否定的な感情がより多く生み出されます。 また普段の生活の中で、成功体験を数多く積み重ねていると、積極的で前向きな感情を作りだします。 失敗やミスの体験が多い場合や未知の体験の場合は、消極的で後ろ向きな感情を作りだします。 情動に基づく条件反射的な行動は人間の意志の自由はありません。 感情に基づく行動は、習慣化されたその人の認知や思考パターン、過去の成功体験、失敗体験の積み重ねが大きく影響を与えているのです。 森田理論が観念優先ではなく事実優先で物事をよく観察するということ、小さな成功体験を積み重ねることを重視しているのは理にかなっているのです。 (復興ストレス 伊藤浩志 彩流社 第2章 脳神経科学から見た「不安」参照) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022.05.29 06:29:59
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