カテゴリ:不安の特徴と役割、欲望と不安の関係
緩和ケア医の大津秀一氏のお話です。
大津氏は「受容」という言葉は私はあまり好きではないと言われています。 「私はがんを受容しています」 「私は失恋を受容しました」 「僕は親父の死を受容しました」 「私は離婚を受容しました」 精神的に大きな痛手を受けた人がそう簡単に受容できるものでしょうか。 受容したいけれども、何か心残りがある。わだかまりがある。 建前と本音がちがうといった感じでしょうか。 ですから安易に割り切って「受容」しますというのは違うような気がするのです。 でもそれらを「受け止める」ことはできるでしょう。 ネガティブな感情のすべて受け入れるのではなく、そういう事実があるのだと「受け止める」という気持ちを持つことはできます。 私はそれを「同化」だと思っています。 生物学的な「同化」は、ある物質から身体にとって必要な別の物質を体内で合成することを言います。 不都合な事実をそのまま「受容」しているのではなく、「同化」してより身体にとって必要なものに変えていっているのです。 (傾聴力 大津秀一 大和出版 参照) 大津氏は本音で「受容」できないものを、無理して受け入れない方がよいと言われています。 私たちは森田理論学習の中で、不安、恐怖、違和感、不快感などは欲望の裏返しとして発生しているものであるので、「受容」することが大事であると学習しました。「受容」というのは暗黙の了解事項なのでそれを疑う人はいません。 大津氏によると、「受容」とは別のやり方があると言われています。 何が何でも「受容」するというのではなく、自分を第三者的な立場に置いて、不安を感じている自分を客観視するということです。「そういうマイナス感情に浸っているのだね」と意識するということです。 不安、恐怖、違和感、不快感などにとらわれている自分を客観的に見つめて、そのような感情に振り回されている自分を自覚するだけでよいのです。 良いとか悪いとかの価値判断は必要ありません。 不安や不快感などを客観視できると、問題行動を回避できるようになります。 マイナス感情と行動をきちんと切り分けることは森田の核心部分になります。 「受容」しなければいけないと思っていると、ある一定のところまでは耐えることができますが、限界を超えると大爆発してしまう危険性があります。 なおこの考え方は、2016年10月13日投稿の「脱同一化」と関係があります。関心のある方はご参照ください。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.06.02 23:02:41
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