カテゴリ:治るとはどうゆうことか
森田先生の患者の中に、不潔恐怖症の人がいた。
巣鴨病院に長らく入院して未治退院された方を自宅に引き取って、催眠術や説得療法などあらゆる方法で治療した。 けれどもどうしても治らないので、さすがに強情な森田先生もサジを投げて、腹を立てて患者を殴ったこともあるという。 この患者に対してあらゆる手段を試してみたが混迷を深めるだけだった。 ところがこの患者が、苦悩と絶望の結果、最後に捨て身になり、忽然と治ってしまった。 根もエネルギーも尽き果てて、捨て鉢になって、治すことをあきらめてしまったことが、不潔恐怖症の克服につながったというのは不思議なことです。 この体験がきっかけとなって、森田療法の確立に結びついたという。 このからくりを、「神経質の本態と療法」の中で、河合博博士が分かりやすく解説されている。 本書の中に発作性神経症の治験例があるが、この治し方は、できるだけ発作を起こすように努力してみよ、ということである。 症状は神経質患者の意識の中心にあり、これを忘れよう、意識すまいと努力する。 すなわち意識の中心より周辺に押しやろう押し込めようとする。 そうすればするほど、それは意識の中心を占領する。 意識しまいとすればするほどますます、一点に凝集強化される。 これが神経質の症状である。 しかし意識は、絶えざる流動・変化である。 神経質症状も、環境の中で力動的に変化消長する そして症状が意識の中心より、やや遠ざかったときに、意識的に無理にこれを中心に持っていくように患者に努力させる。発作を起こすようにさせる。 これは平素の患者の努力とは反対の心の働きをさせるのである。 すると、ここに意外なことには、中心に持って行こうとする努力とは逆に、周囲に退くのである。 (神経質の本態と療法 森田正馬 白揚社 267ページ) 最悪の事態を意識して呼び込むという逆説療法だと思います。 なかなかできないかもしれませんが、可能ならば不眠の方、不安神経症の方、パニック障害の方はぜひ試してみていただきたいと思います。 パフォマンス限定社交不安障害(楽器のソロ演奏をする時に極度に緊張する等)の私の場合、「わざと間違えてその過程を後で分析してみよう」というような気持を持てれば、意外に間違えないで演奏できることは経験でなんとなく分かっていました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.11.04 06:20:06
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