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カテゴリ:実践!企業価値評価
■注目した記事(4/28 9面、他1面) 苦境の半導体 再編始動 ルネサス・NECエレ、来年4月統合 ■記事への素朴な疑問 ルネサス(半導体国内2位)と、NECエレ(国内3位)は 来年4月への統合で合意しました。 これで半導体世界3位になり、巨額投資へ規模拡大するようです。 統合後は世界3位になり、世界に伍して戦うことになる両社ですが、 それでは半導体世界トップのインテルと、NECエレには、 どんな違いがあるのでしょうか? 両者の財務状況の違いを見てみましょう。 (ルネサスは非上場のため財務諸表を公開していないので割愛。) 以下では、2008年まで直近5年間の当社の財務状況を基に分析します。 NECエレクトロニクスとインテルの株価を見る前に~決算・財務分析はこちら ■P/Lの視点 1.売上高営業利益率 -0.3%(7500億円) 2.原価率 70.6% 3.販管費比率 12.3% 一方で、世界業界トップのインテルは?(1ドル100円ベース換算) インテルの企業分析 1.売上高営業利益率 15.4%(売上高3.8兆円) 2.原価率 44.5% 3.販管費比率 14.5% 分析結果から、両者の違いで大きいのは、"原価率"です。 つまり、インテルの方が、産業のコメである半導体を安く仕入れているため、 より大きな利益を確保できている、ということが分かります。 なお、NECエレは2006年のマイナス1000億円の純損失以来、 ずっと赤字続きです。 ところで、成績としてのP/Lは以上ですが、本業での儲け(営業CF)と、 儲けたお金の使い方(投資CF)はどうでしょうか。 ■C/Sの視点 NECエレは2004年の営業CF/投資CF共に1000億円から、 継続して減っています。 つまり儲けも少なく、将来への投資も消極的です。 インテルは、同期間、営業CF/投資CF共に激変する半導体業界の中、 一定を保っています。 (平均して、1兆円の営業CFと7000億円の投資CF) つまり儲け続け、将来への投資も維持しているようです。 それでは、P/Lという成績、C/Sというお金の使い方の集積である、 企業の状態、つまりB/Sはどうでしょうか? ■B/Sの視点 インテルは、固定資産の割合が半分以下(30%程度)ながら効率よく売上を上げ、 また無形固定資産(10%。特許等の技術力の高さ)の分、 さらに効率・効果的な生産をしているのでは、ということが窺えます。 一方で、NECエレは、運用面では、固定資産の割合が 半分以上(50%程度)であり、無形固定資産もないため、 インテルには規模・効率性で劣っていることが窺えます。 ■まとめ(分析からの気づき) 以上から、NECエレは業界トップのインテルと比べ、 原価率が2倍近くも違い利益が薄いこと(P/Lの観点)、 本業の儲けも少なく、将来への投資も消極的であること(C/Sの観点)、 が見えてきました。 また、借金の割合が多く、固定資産の割合が高いわりには営業利益を 確保できていない(B/Sの観点)、ということが言えそうです。 総じて、業績が長期低迷しているため、 業績回復の見込みがあるか、 今後を確認する必要がありそうですね。 例えば、スケールメリットを活かした原料調達(原価率低下)と、 設備投資による製造機械のパフォーマンスと その稼働率向上(損益分岐点の低下)に対して、 今回のルネサスとの統合が効果を生みそうです。 いかがでしょうか? 新聞の記事にあった企業を定量的に、 さくっと分析してみるだけで、 より企業の実態が見えてきますね。 NECエレクトロニクスとインテルの株価を見る前に~決算・財務分析はこちら NECエレクトロニクスの企業分析 インテルの企業分析 以上の分析でご不明な点等ございましたら、 是非シェアーズまでご連絡ください。 感想もお待ちしております! support@shares.ne.jp お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年06月29日 15時46分56秒
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