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カテゴリ:実践!企業価値評価
新日鉄、減産緩和へ 7月にも 自動車の在庫調整進む ■記事への素朴な疑問 自動車大手などからの受注回復の兆しにより、7月にも製鉄所の 稼働率を現在の5割から、6~7割に引き上げるようです。 自動車の在庫調整は今夏に完了する見込み、 電機でも調整が進んでいるようですね。 本日は、鉄鋼業界大手の新日鉄を取り上げます。 それでは、08年度まで直近5年間の財務状況を基に分析を行います。 新日鉄の決算・財務分析はこちら ■P/Lの視点 売上は10%以上の伸びで推移し、08年は4.8兆円になりましたが、 営業利益はそれまでの増加から、 08年に前期比マイナス6%の5500億円に減少しました。 同年の純利益はかろうじて1%増の3500億と、増益を維持しています。 経営効率でみると、原因は明らかで、それは原価率の悪化にあります。 07年は79.2%だった原価率が、08年は81.9%となり、2.7%上昇しました。 有報でも詳細をさっと確認すると、 確かに原材料調達コストが原因であるとされています。 ただし、販管比率は向上しており、これにより大きな減益を避けたようです。 では、実際のキャッシュの流れを確認しましょう。 ■C/Sの視点 FCFは常にプラスで、年々営業CF・投資CFを増加させ、 財務CFは常にマイナスです。 ただし、07年からは投資CFの伸びが営業CFの伸びよりも大きく、 FCFは06年の1700億から08年は1000億と減少しています。 08年の営業CFは5300億、投資CFはマイナス4400億、 財務CFはマイナス2000億でした。 安定してキャッシュを創出しているようです。 07年からはより積極的な投資をしており、今後の回収に注目ですね。 それでは、B/Sを見てみましょう。 ■B/Sの視点 総資産は07年から1500億減少し、08年は5.2兆円となりました。 運用面では、投資等が1000億減少したことが目立ちます。 原因は、株価下落による投資有価証券の評価損のようです。 調達面では、上述の評価損に係る繰延税金負債が、1100億減少しています。 財務構造の大きな変化はありません。 08年は有形固定資産が1.8兆円(資産の35%)、 投資等が1.4兆円(27%)となっており、 有形固定資産に次いで、投資等が多い財務構造を持っています。 また、株主資本は1.9兆円であり、総資本の37%を占めています。 ■まとめ 売上は10%程度で順調に増加していますが、 08年に営業利益が6%減少に転じ、利益は1%増を維持しました(P/Lの視点)。 FCFプラスで返済を行いながら、営業CFを順調に伸ばしていますが、 07年からは特に投資額が伸びています(C/Sの視点)。 株価下落による証券評価損の影響で総資産は07年から3%減少しましたが、 直近2年で大きな構造変化はありませんでした(B/Sの視点)。 各業界の在庫調整が進み、減産緩和の動きで鉄鋼の景気局面が 変化しつつありますが、本日の記事にあるように、 「生産が昨年夏以前の水準へ戻るには3~5年はかかる」 とする高炉大手首脳の指摘もあり、厳しい収益環境は続きそうです。 この環境が今後の業績・財務構造等にどう影響してくるか、注目ですね。 以上の分析でご不明な点等ございましたら、 新日鉄の決算・財務分析はこちら 是非シェアーズまでご連絡ください。 感想もお待ちしております! support@shares.ne.jp あなたのための最強になりたい。新日鉄。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年06月29日 16時00分46秒
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