ケビンコスナー初の監督作品が主演、監督、製作の「ダンス・ウィズ・ウルブス」であるが、役柄のダンバー中尉と共にケビンコスナーその人にほれぼれしてしまう。
3時間もの長い映画であるが、ダンバー中尉が如何にして白人社会からネイチブアメリカン側に身を投じたかを描くには、そしてコスナーの思いを伝えるには このゆったりした時間が必要なのかもしれない。
インディアンを描いた映画は数あるが、「ダンス・ウィズ・ウルブス」はインディアンの立場に立った初めての映画だそうだ。
映画の3分の1がスー族の部族語(ラコタ語)であることも、リアリティの追求とともに、インディアンに対する監督の敬意が感じられる。
現在も 居留地に暮らすインディアンは世界一豊かな国で、一番貧しい。
ラコタ語も久しく禁止され、話せる人は少ないらしい。
(薄情な日本人もアイヌ民族にここまで冷たくはない)
インディアンたちは、この映画で威厳を持った過去のインディアンを見て泣いたという。
ちなみに“ダンス・ウィズ・ウルブス”はダンバー中尉のインディアン名であり、恋人役の女性には“拳を握って立つ女”という素晴らしい名がつけられている。
変人とも思われるダンバー中尉が、映画の中で愛してやまないものは、歴史の中でアメリカが失ったものばかりである。
この映画はアメリカが失ったものへの愛惜、憧れが描かれているのかもしれない。
バッファローの大群の疾走、野生オオカミ、紅葉する木々の美しさ、はだか馬で疾走するインディアンなど・・・
解説者の川本さんがいみじくも言った“エコロジーウェスタン”であり、過って自然をこれまで美しく描いた西部劇は無かったように思う。
自分の望むものを造るためには製作、監督まで努め、はだか馬に両手を離して乗る訓練も厭わないコスナーには素晴らしい拘りがある。
また スペクタクルでありながら人間のデリケートさも描いた映画としては「アラビアのロレンス」と双璧でないかとも思う。
コスナーが演じる映画に共通するのは、彼の演じる人物すべてが、本人像を反映しているらしいことである。
優しく、鋭い感性を持つコスナーにはアメリカ人の素晴らしさが凝縮しているように思うが・・・・
片や原理主義的なブッシュも存在するのがいかにも多様なアメリカらしい。
ダンバー中尉(ダンスウィズウルブス)