8日に退任したカート・キャンベルさんがインタビューで「日米関係強化には安保重視よりも、TPPへの参加だ」と説いているので紹介します。(これは聞き捨てならないのだ)
カート・キャンベルさんへのインタビュー
<米の「アジア回帰」外交>
(デジタル朝日ではこの記事が見えないので、2/9朝日から転記しました・・・月500円キャンペーン月間のあいだにデジタル朝日に申込みせなあかんな)
米オバマ政権の発足当初から4年間、アジア外交を主導してきたカート・キャンベル国務次官補が8日、政権を去る。この間、中国対外姿勢の硬化、米国の「アジア回帰」、尖閣諸島問題をきっかけにした日中関係の悪化など、アジア太平洋地域では「地殻変動」とも言える動きが相次いだ。政権第一期を通じたアジア外交の総括を聞いた。
Q:東シナ海で中国軍艦が海上自衛隊の護衛艦に射撃レーダーを当てる威嚇行動が先日、あるました。尖閣諸島問題以降、日中間では緊張が高まっています。
A:米国は懸念している。すでに両国政府に対して、このまま緊張がエスカレートすれば両国関係だけでなく、地域全体の経済に重大で長期にわたる悪影響を及ぼすと伝えている。米国は今後も両国政府に対し、さらに外交努力や対話を重ね、慎重に対応するよう強く求めていく。
Q:北朝鮮も核実験の実施をちらつかせています。
A:北朝鮮の挑発行為は、最近始まったことではない。今後も続くだろう。ミサイル発射や核開発は地域を不安定化するものであり、潜在的には米国の存在そのものへの脅威となりうる。その旨は北朝鮮に伝えているし、おそらくより重要な相手である中国にもそう説明している。中国が理解すべきことは、北朝鮮が現在の道を進み続ければ米国は弾道ミサイル防衛など何らかの明確な対抗策を取るだろうということだ。そうした対抗策を中国も自国の利益に資するとは思わないだろう。
Q:東アジアの緊張が高まる中で安部信三首相が訪米します。安部首相は、米国との同盟関係強化に強い意欲を示し、民主党政権との違いを強調しています。
A:我々が日米関係の文脈で求めるのは、党派を超えた共通の取組み姿勢だ。実際、野田(前)首相のもとでは大きな成果を上げた。日米関係は順調に前進している。安部政権は防衛費を増額しようとしている。妥当な方針だと思う。日本が、サイバーセキュリティーのような新たな分野での協力を追及していることも歓迎する。日本政府はここ数年来、安全保障に対して従来以上に真剣な取組み姿勢を見せている。米国はそれも歓迎する。
Q:しかし、ワシントンでは従軍慰安婦問題が日韓関係に与える影響に懸念と不安の声も聞かれます。
A:率直に言って私自身、歴史の解釈し直しの動きには懸念を感じる。それよりも、朝鮮半島の不確実性にどう対応するか、共通の価値を考えてほしい。日韓両国の政治指導者の間で、いかにして信頼と自信を構築するかだ。さらに、米日、米韓間にある重要な安保協力関係を、どうやって『三国化』していくかだ。
Q:日本では、米国が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)になお、根強い反対があります。
A:TPPは、アジア主要国間の経済連携を強化する巨大な潜在力を持っている。日本にとっても、戦略レベルで考えれば、参加すること以上に意味のある選択肢はないだろう。日本の国内政治の観点から難しい問題であることは理解している。しかし、米日関係を活性化し強化するために最も役立つのは、対話の強化ではなく、安全保障問題に一層の重点を置くことでもない。両国の経済関係をより解放し、競争と連携にさらすことだ。これが今後数年間、米日関係のもっとも中心的な課題になると思う。そのような大きな意味を持つ経済連携ができなければ、両国関係は衰退していく。
Q:米国は「アジア回帰」を打ち出しています。地域諸国の多くは基本的に歓迎する一方、疑問も抱いています。まず「なぜ今か」です。この新方針が最初に打ち出されたのは2011年秋に出版されたクリントン前国務長官の雑誌論文ででした。。
A:その論文が多くの関心を集めたのは事実だ。しかし、アジア太平洋への関与を強化しようという考えは政権発足当初からあった。クリントン長官も論文出版に先立ち、いくつかの演説で似たような考えを示していた。実際、米国はこの地域から離れたことはない。数10年にわたって体系的かつ、しっかりと関与してきた。それでもより効果的に、もっと関与を強めなければならないという認識がある。
Q:オバマ政権発足当初からあった方針だ、ということですか。
A:09年当時、世界各国の間で『米国の衰退』という深刻な懸念があった。対応策として考えたのはまず、米国のリーダーシップや、地域への質の高い関与は継続するとはっきりさせることだった。次に『アジア回帰』を進めることだ。中東や南アジアでの困難で多額の予算を要する活動を、段階的に縮小し、焦点をアジア太平洋地域に移すことだ。
Q:中東は今も不安定です。本当にアジアに「回帰」できますか。
A:「アジア回帰」といっても、中東から完全に引いてしまうわけではない。中東や南アジアへの関与を続けることは必然であり、戦略的にも賢明だとは思う。ただ従来と同じレベルというわけにはいかない。膨大な予算がかかるというだけでなく、米国政府全体の関心を奪ってしまうという弊害があるからだ。最終的には、海軍や(海兵隊などの)遠征機能により多くの資源を配分し、アジアの主要同盟関係の維持、育成にも力を注ぐ。いずれアジアは、戦略的重心の中心地になる。
Q:もう一つの懸念は予算です。オバマ大統領は「国防予算の削減が、アジア太平洋に影響することはない」と言っていますが、そううまくいきますか。
A:アジアでのさまざまな活動を支え、米国の地域リーダーシップを維持するために必要な予算は、十分に確保している。イラク、アフガニスタンでの戦費の1週間分をつぎ込むことができれば、アジアでの活動は非常に長い間、維持できる。
Q:それにしても、米国がテロとの戦いに専念していた10年の間に、「中国の台頭と米国の相対的衰退」という見方が定着してしまい、米国は今、それを修正しようとしています。テロとの戦いは戦略的な「回り道」だったのでは。
A:そこまで言うつもりはないが、米国の軍隊や生命、財産に大きな損失をもたらしたことは否定できない。ただ、指摘しておきたいのは、これまでも「米国の衰退」は繰り返し言われたきた事柄である点だ。第2次大戦後にはじまり、朝鮮戦争、ベトナム戦争、そして冷戦。最近では08年のリーマン・ショックの後だ。しかし、いずれの場合も米国は復活した。米国経済の基礎は堅調で、アジア太平洋地域で積極的な役割を果たそうという決意も揺らいでいない。米国が今後何十年にもわたって、たとえ地域で支配的な国家ではないにせよ、リーダーを務める条件は整っている。
Q:以前のインタビューで、米国がこの地域への関与を強化することで大きな恩恵を受ける国のひとつは中国だと指摘しています。しかし中国側には、米国の「アジア回帰」を脅威だとする見方もあります。どうして理解が得られないのでしょう。
A:理解の欠如なのかどうか分からない。米中は厳しい競争関係にある。米国は今後、相当長期にわたり強い役割を演じる。そのことを中国が受け入れることが重要なのだ。しかし、中国とはより強固で深い関係を築きたい。その点は中国にも明確に伝えてある。
Q:09年にオバマ大統領が初訪中した際の共同声明には「相互の核心的利益の尊重が極めて重要だと合意した」という一文が入っていました。それが11年胡錦濤国家主席が訪米した時の共同声明からは消えました。どうしてですか。
A:「核心的利益」という概念は、誤解を招きやすく、実際、米中関係にかなり深刻な緊張をもたらした。ある国家がある課題について「我が国の核心的利益だ」と宣言しさえすれば、他国との協議の対象にもならないということは、21世紀の外交には有効ではないと思う。
Q:米中間には根深い相互不信があり、米国の「アジア回帰」で一層悪化したという見方もあります。
A:確かに不信はあると思う。無知に基くものと、価値観や見方の違いに関する不正確な評価が原因になっているものとがあり、前者についてはいくらか除去できたと思う。しかし、米中関係が軋轢のタネを抱えていることは否定できない事実だ。サイバーセキュリティー、知的所有権、軍事、政治的価値観、人権などで、時には衝突含みになることもある。ただ重要なのは、そうした緒課題をも抱合する大きな協力の枠組みはあるし、両国ともに協力の意志はあることだ。
<取材を終えて>
「アジア回帰」はキャンベル氏が主導した。その根幹の対中政策は、政権発足当初の「融和」から「対抗」へと大きく変針した。中国の対外姿勢硬化の反作用といえるが、米政権内の路線対立の表れでもあった。ここへきて中国に加えて北朝鮮の強硬姿勢も際だっている。「アジア回帰」はこれからその真価が問われる。
(編集委員:加藤洋一)
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中華の札束攻勢で、アメリカのマスゴミは中華寄りであるが・・・・
キャンベル氏の中華に対するスタンスは、両国の関係を「融和」から「対抗」へ変えた張本人であるだけに、かなり心強いものがある。
日本に対してはTPP参加を促すなど甘い顔を見せていないが・・・安保とTPPをセットで提示するアメリカの罠にはまらない知恵が肝要なんでしょう。
また、日本とアメリカとは価値観のズレはあまりないが・・・・
中国共産党が示す「メンツ」に対しては、隣国としてなんとかならないものかと思う大使である。
(内憂外患のなか、共産党の危機感がそれだけ大きいのかもしれないが)
「核心的利益」の使い分けを読み返してみます。