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フォルツァ一家の大航海日記
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もう一人のクラスメイト

戦場のヴァルキュリア2 発売記念学園祭

戦場のヴァルキュリア2 発売記念学園祭に、勢いあまって参加してみた作品を晒すテスト。


ちなみに、選考からは漏れました。てへ。

駄文で申し訳ない…。




 ランシール王立士官学校の研究開発棟は、いつにない喧騒に包まれていた。
 普段から、工作機械の動く音や、戦車や装甲車の試運転に、開発したばかりの武器の試射など、物音の激しい場所ではあるのだが。今日は、そんな日常とは違う光景が広がっている。
 たくさんの生徒たちが、戦車と装甲車に群がっているのだ。

 反乱軍の活動が一時的に停滞していて、出撃の機会が少なくなっているのをいいことに、戦車や装甲車の徹底的な整備をやろうというのが発端だった。流石に、すべてのクラスの車両に重整備を施すわけにはいかないので、今回はアルファベット順で奇数の組が行うことになっている。つまり、A、C、E、Gの各組だ。
 A組は学級委員長であるユリアナの指揮のもと、完全に統率された動きで、履帯や転輪といった足回りと、エンジンを中心とした駆動系の分解整備に着手している。
 他の組も、砲塔を外して武装の交換をしたり、磨耗によって歯の欠けた駆動輪を交換するといった、普段の整備ではなかなか手を出せない、少々手間のかかる作業に追われていた。
 だが、その中でも一番手間のかかる作業をやっているのは、G組の戦車であろう。
 軽戦車に分類されるG組の戦車は、他のクラスが使っている中戦車に比べて、サイズ小さくていろいろ手を出しやすいという点もあるにはあるが。彼らがやっていることは、実に多岐にわたる。

 まず、砲塔を交換することにした。
 これは、非常な苦労の後に撃破した敵戦車の砲塔が、ほぼ無傷のままで鹵獲できたことが発端となった。あれだけ苦労した敵の兵器なのだから、自分たちが使えば戦いは楽になるだろう。という考えだった。
 幸いと言っていいのかは微妙だが、今回の戦争は内戦ということもあり、敵も味方もほとんどが同じ兵器を使っている。そのため、鹵獲した兵器を改造することなく使用することも可能なのだ。
 とはいえ、まったく整備せずに使うのも問題があるので、戦車の主力兵器である火砲を操る砲手を中心に、突撃兵たちがクレーンで吊るした砲塔のあらゆる部分を点検している。
 車載機銃の分解清掃を担当するマリオンが、机の上にきれいに並べた部品を見て、うっとりとした表情を浮かべながら固まっていたり、砲口内の清掃をしようとしているエリク、ネイハム、ピートの三人の息が合わずに苦労していたり。といった、小さなハプニングもあるようだが、それなりに順調に進んでいるようだ。

 次に、足回りの点検を行うことにした。
 過去に幾度も地雷を踏んでいるし、足回りに命中弾を受けたこともある。履帯のひとつひとつをつなぐピンのどれかが折れて、履帯が外れてしまえば、戦車は動けなくなるし、駆動輪や誘導輪、それに、転輪やサスペンションにがたつきがあれば、動きに乱れが出るし、燃費も悪くなる。何だかんだいって、馬鹿にはできない重要な部品なのだ。
 そんな足回りのひとつである履帯は、偵察兵が担当することになっていた。ピンの磨耗具合といった微妙な判断は、素人の手には余るため、そこは整備士がやっているが、床にまっすぐに伸ばした履帯についた泥をデッキブラシで擦り落として、目視での確認をしやすくすることくらいはできる。
 G組戦車の整備士であり戦車長でもあるラビニアとともに全体の指揮をとりつつ、自分も手を出しているアバンはともかく。左の履帯はロッテ、メリッサ、クロエが。右の履帯はニコル、ヘルムート、シグリッドがそれぞれ分担して、隙間に詰まった汚れを落とそうと格闘している。

 転輪や駆動輪などの足回りは対戦車兵がチェックしている。普段は戦車を撃破することが仕事の彼らは、戦車の弱点のひとつである足回りの構造を改めて学習する機会とばかりに、ひとつひとつを丹念に見てまわっていた。
 そんな中、ノエルとコリーンは、サスペンションの具合が悪い転輪を見つけていた。読よく見れば、転輪にも焼け焦げたような痕が残っている。機能を失っているわけではないが、せっかくだからと交換することにした。交換するための新しい転輪とサスペンションは、ライナーとヴァリオが手分けして運んでいる。

 技甲兵たちは車載装備の点検を行っていた。積み込んだ砲弾や機関銃弾をすべて抜き取り、点検したり磨いたりしている。こちらは女性陣が担当しているようだ。ミシュリットは砲弾を。イングヒルトは機関銃弾を扱っている。
 車外に装備されているために、特に被弾しやすい工具類は、どれもがどこかに損傷を受けていた。機銃弾に何箇所も貫かれた円匙や、柄の部分を砕かれた斧など、そのままでは使えそうにないものについては、やはり交換する必要がある。
 最近、レンチを剣に持ち替えたアレクシスは、手にした斧をときどき振りながら運んでいる。剣やレンチとの違いを確かめているのだろうか。ヨアヒムとジャミルは交換するための車載工具を受け取るために出かけているし、モーリスは破損した車載工具を破棄するために運び出している。

 そして、一番の難関に挑んでいるのは、ラビニアと支援兵たちだった。
 彼女たちは、戦場で幾度も被弾し、その都度修理を行ってきた車体上部の装甲板を取り替えようとしていた。
 これまでは、被弾した箇所とその周囲のみを修理していたし、場所によっては穴を塞ぐために、上から装甲板を貼り付けただけの場所もある。言わば継ぎ接ぎだらけの装甲板になっていて、強度上問題あり。となったのだ。
 とはいえ、本来なら、戦車の装甲の交換などは、現地の部隊ができるような作業ではない。師団ないし軍団級の補給廠に持ち込むか、戦車を製造した工廠に送り返すようなレベルのものだからだ。
 そんな作業を自分たちでやってしまうあたりは、ガリア南部の治安維持を託され、自身でも研究開発を行うランシールならではかもしれない。
 支援兵たちは、戦場では戦車の損傷を簡易修理するための技術を身につけている。それでも、装甲の溶断と溶接という作業は、専門家にしかできないものだ。そのため、実際に作業をしているのは、ラビニアと他の整備士たちだ。

 砲弾や銃弾といった爆発物や、可燃性のものは可能な限り外した車内から、ラビニアがガス溶断機を使って、装甲板に入れた切れ目を少しずつ伸ばしている。
 じりじりと進む装甲板の切れ目は、最初に切れ目を入れた点へと向けて着実に進んでいて、あと少しで車体から完全に切り離されそうだった。支援兵の男性陣、レイモンドとランディは、他の整備士たちとともに、切り離された装甲板を安全に取り扱えるように手を貸しているし、女性陣は次の装甲板を吊り下げるために、フックやワイヤーと戦っている。
 本来ならば、その輪の中に入っていなければならないはずのハインツは、クラスメイトが小休止を取るときのために、今からお茶の準備をしている。これはまあ、適材適所というやつだろう。

「よし、いいよ。外してくれ!」
 装甲板を切断し終えたラビニアが、車内から合図を送る。
 ゆっくり、慎重に作業を行って、切り離された装甲板を所定の場所へと移動する。頭上には、こういった重量物を扱う際に使う天井クレーンなどが設置されているので、切り離す前に装甲板に玉賭けを施しておくことによって、床に落としたりせず、安全に運ぶことができる。
 外した装甲板には、無数の被弾痕が刻まれていた。小銃弾程度なら塗料が剥がれるくらいの話だが、対戦車狙撃銃あたりで撃たれた場合は、装甲がへこむこともある。まして、対戦車槍や砲で撃たれたとなれば、傷などという表現ではすまないような損傷を被ることになる。
 支援兵のコゼットは、吊り下げられた装甲板の右側面にあたる部分に、数える気が無くなるくらい刻まれた機関銃弾の被弾痕をながめていた。
 この傷痕がついたときのことを思い出していたのだ。

 これまでの狩猟生活そのままに。ビッキーは支援兵にもかかわらず、勇猛果敢な攻撃によって、前線をぐいぐいと押し上げていた。
 その日のロインダール渓谷は、いつものように霧が濃かった。だから、もう少し慎重に行動するべきだったのに、あまりにも不用意に進みすぎてしまった。そのため、曲がり角の先に設置されていた機関銃座と突撃兵の火線網に捕らわれてしまうこととなる。
 崩れるようにして倒れるビッキーを救おうと、ヘルムートは身を隠しながら接近しようとした。
 だが、反乱軍の構築した火線網は巧妙で、どちらかの射線を防ごうとすると、もう一方に暴露されてしまうようになっている。ビッキーのところまであと少し。というところまで進んだヘルムートだったが、そこまでだった。
 ビッキーの側で、彼も倒れる。
 それを見たコゼットはさらに飛び出そうとしたが、隣にいたゼリによって止められた。
「馬鹿! 無茶をするな!」
「でも、二人を助けないと!」
 そこにいた誰もが同じ思いだった。すぐにでも飛び出したいが、あれだけの火力を発揮されてしまうと、そう簡単には近づけない。それに、飛び出せばどうなるかは、すでに二人が実例を見せている。
 そこに現れたのが、ラビニアの戦車だった。
「微速前進……。停止! ちょい右。よし、前進。前進……。停止。左に切って!」
 ラビニアは展望窓から見える情報を頼りに、戦車の進む方向を慎重に指示しながら、戦車を倒れた二人と機関銃座との間に割り込ませた。側面を晒すのは危険だが、今は盾になることが重要とわりきって、あえて右側面を敵の正面に向ける。
 機関銃座と突撃兵からはあきれるほどの銃弾が撃ち込まれるが、ラビニアと砲手は主砲をもって、それらをひとつずつ確実に沈黙させていく。
 火点の撃破を待つ間もなく、戦車という巨大な盾を利用して、コゼットとゼリが全力疾走で駆けつけると、応急処置もそこそこに、二人を抱えて味方の陣地まで走って戻ってきた。
 右側面の無数の被弾痕は、そのときについたものだ。

 ルネは、自分たちが交換しようとしている転輪が、あのときの損傷ではないかと思い当たる出来事があった。そう。たしか、あれは……。

 占領しなければならない敵拠点まであと少し。というところで、フランカとルネは手詰まりの状態になっていた。ルネは対戦車槍を撃ちつくし、フランカも手榴弾を投げつくしていた。
 敵の拠点には、装甲車と機関銃兵が陣取り、狙撃兵が間を埋めていた。土嚢に身を隠しているため、対戦車槍で土嚢を撃ち砕くか、手榴弾で破壊して起き上がらせたいところだが。残念なことに、そのどちらの手段も取れない。
 支援兵を呼んではみたものの、草むらに伏せている二人はともかく、これから接近しようとする支援兵は、十分に警戒した敵の前を前進してくることになる。
 大切な仲間に、そんな無茶はさせたくなかった。
 ところが、支援兵のソフィアから、今から向かうとの連絡を受けた。敵の火力に晒されるソフィアを心配する二人だったが、最初に現れた味方の姿を見て、それが杞憂に終わることを喜んだ。
 戦車が先導しているのだ。
 一番分厚い正面装甲を向けた戦車は、敵の拠点へ向けてまっしぐらに突き進む。その後に張り付くようにして、ソフィアが追従する。
 不意に、戦車の足元で爆発がおこった。
 地雷を踏んだのだ。
 一時停止した戦車は、威嚇するかのように主砲を発砲した後、すぐ後ろに控えていたソフィアの応急処置で態勢を立て直し、再び前進し始めた。
 ルネとフランカのすぐ隣まで前進した戦車はそこで足を止め、陰から飛び出したソフィアが、ルネに対戦車槍の弾頭を。フランカには手榴弾を手渡した。
「ありがとう」
「助かったわ。これで前進できる」
 戦車の支援を受けながら、ルネとフランカは敵拠点への攻撃を加えた。弾薬の補充のおかげで、拠点はほんのわずかな時間の後で、支配者を変えることとなった。

 あの時はもちろん、その後も問題なさそうに動いていたのだが。やはり、車両を撃破するために作られた地雷を踏んでは、無傷と言うわけにはいかなかったようだ。
 ルネは、車体から外されて用済みとなった転輪とサスペンションをそっと撫でると、あのとき弾薬を持ってきてくれたソフィアに対して言ったのと同じくらいの感謝をこめてつぶやいた。
「ありがとう」

 マガリは、外した装甲板に修理を施したとわかる痕跡を見つけた。前面装甲の左側の一部が四角く切り取られ、溶接された跡がある。
 その場所には、覚えがあった。
 懐かしい。
 あのときは、とにかく必死だった。

 草むらに伏せていた敵の対戦車兵から、至近距離で対戦車槍を撃ち込まれたラビニアの戦車は、随伴する歩兵の速度にあわせた前進を急にやめて、がくんと車体を揺らしながら止まった。
 見事な待ち伏せ攻撃を行った対戦車兵は、戦車の傍らにいた突撃兵たちの銃弾に倒れたが、それで戦車の機能が回復するわけでもない。
 支援兵であるマガリは、戦車の損傷が深刻な場合に備えて、戦車のもとへと駆け寄った。いざというときは、戦車に対して応急修理を行わなければならないからだ。
 そんなマガリと、砲塔のハッチをわずかに開けて、周囲を目視で確認しようとするラビニアとの視線が交差した。
「マガリ! 応急修理を頼めるかい?」
 ハッチから顔を出したラビニアはそう叫ぶと、敵に狙撃される危険も顧みず、マガリの返事を待っている。
「は、はい!」
 思わずそう答えたマガリに対して、笑顔で「頼んだよ!」と告げたラビニアは、再び車内へと戻っていった。
 頼まれたマガリの方は、少し戸惑っていた。野戦整備マニュアルには何度も目を通していたし、その中の応急修理についても、頭の中にバッチリ入っている。作業をしろと言われれば、マニュアル通りに作業できる自信はある。
 だが、問題は、今の状況だ。
 擱座した戦車は格好の目標となっていて、四方から銃弾を浴びせられている。その戦車にはり付いて、損傷箇所に追加の装甲板を取り付けなければならないのだ。
 極度の緊張感のために、もともとあがり症な面を持っているマガリは、パニックに陥りそうになっていた。
 そんなマガリに、一歩踏み出す勇気をくれたのは、ラビニアのあの一言だった。
「頼んだよ!」
 もし、ここできちんと応急修理をしなかったら。ラビニアの乗る戦車は撃破されてしまうかもしれない。
 それは、嫌だ。
 緊張のあまり、今にも硬くなりそうな身体を、精一杯の勇気で必死に動かして。マガリは、被弾した箇所に装甲板を文字通りに貼り付けた。強力な接着剤は瞬時に硬化して、装甲板を殴ったくらいでは外れないくらい、強固に接着する。
 とはいえ、同じ箇所に対戦車砲や対戦車槍の直撃を受けたら、ひとたまりもないだろう。だが、対戦車ライフルや小銃弾くらいであれば、これでも十分に防げる。当然、学校に戻ったら、取り外して本格的な修理を行わないといけないが、今、この戦闘を乗り切るだけならば、なんとかなるはずだ。
 マガリの応急修理によって、戦闘力を回復した戦車は、再び前進を始めた。

「いいよ。そのまま、そのまま……。……よし、やめっ!」
 ラビニアの指示に合わせてゆっくりと降りてきた砲塔が、車体にぴったり収まった。
 車体に駆け上がった整備士たちが、クレーンで吊るためにひっかけていたワイヤーを外していく。
 まだ塗装が終わっていないが、新しい装甲板と、汚れを落とした足回りと履帯と、鹵獲した砲塔といった、戦車を構成するパーツのすべてが、収まるべき場所に収まると、それは再び、戦うための車に戻った。
 戦車兵が。
 整備士が。
 クラスメイトたちが。
 皆、感慨深げな表情で、自分たちの戦車を見上げている。
 そんな一同の前に、ラビニアが立った。
「みんな、ありがとう。おかげで助かったよ。あとは塗装だけだし、何とか今日中に終わりそうだね」
 声に嬉しさがにじみ出ているラビニアに対して、アバンが答える。
「なーに。いつも世話になってるんだから、これくらいは当然さ。な? みんな!」
 その答えは、皆の賛同を得たようで、あちこちで肯定の返事があがる。
「俺も、こいつには何度も救われてるからな。ちょっとした恩返しのようなものだ」
 ゼリはそう言うと、愛着の情を示すかのように、まだ錆止めすら塗られていない戦車の装甲を、手のひらでぽんぽんと軽く叩いて見せた。
「でも、一所懸命がんばったから、お腹すいちゃったね……」
 そう言いながら、お腹を押さえるコゼットに。
「そう言われると、なんだか俺も腹が減ってきたぞ……」
 アバンも同じように答えて。
 急にぐったりとし始めた二人の目の前に、香ばしい湯気をたてたお茶がそっと差し出される。
 ハインツだった。
「さあ、どうぞ」
 笑顔とともに差し出されたティーカップと、ハインツの向こうに見えたものは。
 途中から抜け出して、皆のために軽い食事を作ってくれた、料理を得意とするクラスメイトたちと、その手に持ったお盆の上に乗せられた、美味しそうな食事の数々だった。

 落ちこぼれと言われたり、最低最悪の生徒だと言われたりするG組の生徒たちだが、彼らが戦車の修理に熱心に取り組んでいたのは、誰もが認めることだろう。
 また、彼らが修理に取り組む姿勢は、誰に強制されたわけでもない。
 彼らは知っているのだ。
 今、自分たちが修理を手伝った戦車は、自分たちが危険な目にあったときに、必ず駆けつけてくれることを。
 その証拠に、クラスメイトたちのほとんどが、戦車についた傷のひとつひとつに対して、何らかの思い出を持っている。車体の様々な場所に刻まれたこれらの傷は、仲間を助けた証。いわば、勲章のようなものなのだ。
 そして、戦車の装甲に救われた記憶が無い者も、その火砲の支援によって危機を切り抜けた経験を持っている。
 だからこそ、彼らは真剣に取り組んだのだ。
 自分たちと共に戦ってくれる、もう一人のクラスメイトのために。
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