◆中国・仲裁裁判に見る国家の建前と庶民の本音
●さてフィリピンが訴えていた国際仲裁裁判所の裁定が下った。中国の敗訴は予見されていたもので、驚くにはあたらないが、昨年中の15?の訴えのうち、審査するかを留保していた、中国のいわゆる9段線内の主権が明確に否定されたのが驚きだった。●それにつけ思うこと。筆者はレコードチャイナというサイトで、中国の民間の話をよく読んでるが、彼らの日本または日本人の印象は、恐るべき日本という話が実に多い。この場合の恐ろしいというのは日本語のニュアンスとは違い、尊敬すべきというか驚愕・・といった意味で使われている。日本を敵視したり貶めたりするのは、ほとんどが日本へ行ったことのない人が多く、一度でも現代日本の姿を見た人は、日本好きになる・・・というのが良く言われてる意見だ。GDPこそ日本の倍近くにもなり、ともすれば、おごりの姿が目立つようになったのを自制して、日本に学べという謙虚な話が、結構すべての分野に満ち溢れてるのだ。●なるほど14億の人口を抱えた国では、さすがに良識を持った人もたくさんいると思ったわけだが、政治の世界になると、なんという違い、まるで別の国、別の国民が主張を発してるように思えるよね?黒を白というのは、何でもないことのようだ。誰かが恥の無い文化と言ってたが、日本人には到底理解しがたい。●共産党のよって立つ担保が揺らいでいる焦り・・・というべきかもしれないが、経済の低迷に加えて、さらに外交の大失敗という負荷が習政権に加算されたわけだ。当然怖いのは、国内の不満をそらすため、対外強硬を加速する恐れも出てくる。●実は、中国の高速鉄道プロジェクトが世界各地で頓挫して、国内においても採算の取れない高速鉄道の投資はもうやめよう・・という論調が出てきている。ただでも過剰設備に悩んでるのに、今年も12兆円だったか、高速鉄道投資をするのは、不良債権の積み上げにしかならない・・というわけだ。そもそも鉄道経済は、区間の両側都市に採算を担保する十分な人口が必要で、閑古鳥の泣いてる路線をいくら作っても、いずれ破たんするというのが常識だ。このあたり、国営企業がすべて取り仕切っていた独裁国家の、経済性からかけ離れた視点が災いしてるんだろうね?●唯一動いているインドネシアプロジェクトでも 中国国内では土地収用が簡単だったが、地権者からの買い取り価格の折り合いがついてなく停滞してる。民主主義国家での事業の困難さが初めて認識されてるようで、とても3年内では完成は無理で、そもそもご破算の可能性すらあるようだ。●ようやく、コストが低いわが国のプロジェクトがなぜうまく行かないのか、考え出した矢先だった。現在、シンガポール・マレーシア間の受注計画を、主に日本と競い合ってるわけだが、先にシンガポールに納めた地下鉄車両が、なんと75%も車両にひびが入り、中国につき返されるなんてことが最近起きた。これも微妙な影響を与えそうだし、仲裁裁判結果に従わない無法国家という烙印もボデーブロウのように効いてくるのかもしれない。●中国メディアも、結構まともな分析をしてる記事も多くある。しかし足元の政治の批判ができないことが、ネックという事だろう。本音ではこうだが、振り上げたこぶしは、なかなかおろせないというより、金縛りにあったように肩から上で、ぶるぶる震えてる・・というのが今の中国政府・政治の姿ではないか?●一連の動き、戦前日本が満州事変後の国際連盟調査報告に反発して、連盟を脱退、その後、世界からの孤立を招き戦争突入し自滅した・・その姿を彷彿 予見させられるよね?●しかし、中国のニュースを見てて、街中の人がほとんど今回裁定に不満だという姿が多いのは、 なんだか異常な世界だ・・というのは筆者だけだろうか?