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MUSIC LAND -私の庭の花たち-

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童話「ベラのペンダント」6

良かったら、最初から読んでみてくださいね。

「ベラのペンダント」1・2です。

フリーページの最後の「続き」をクリックしていただくと続きが読めます。

花畑ライン

また、挿入歌として「遥かなるあなたへ」を作詞作曲してみました。

上の題名をクリックして聴いてくださいね。

花畑ライン

少女ベラは、少年ユリウスと共に隣国へ行く決心をした。

そのせいか、朝早くから目が覚めてしまい、

ユリウスをたたき起こしたのだ。

「起きて!早く出発しないと

日が暮れるまでに隣の国に着かないわ!」

三つ編みの少女

ユリウスと泊まった羊小屋を出たとたん、黒猫が通り、

不吉なものを感じたが、

人懐こい猫で、擦り寄ってくる。

「普通、猫は人間を見たら逃げるんじゃない?」

ついベラはユリウスに聞いてしまった。

「この猫は人間を信用してるんじゃないのか?」

「でも、首輪もしてないし、捨て猫じゃない?」

飼い猫にしては、黒い毛の艶があまりない・・・

「そうとは限らないんじゃないかな?

きっと首輪をしてないだけか、

飼い主とはぐれたのかも・・・」

とユリウスが上目遣いにベラを見つめる。

「そんなこと言っても、連れて行けないからね!」

ベラが先手を打った。

「そうだよなあ。俺達二人でも泊まるところに困るんだから・・・」

「そうよ。可哀想だけど、置いていくしかないわ。」

飼い主を探す黒猫が、親を探す自分と重なり合い、

思わず抱き上げてしまったが、

これ以上、道連れを増やすわけにはいかない・・・

「じゃあ、せめてここの家で飼ってもらえないかな?」

急にユリウスはベラから黒猫を取り上げると、

母屋に向かった。

「すみません。昨日羊小屋に泊めて貰った者です。」

と言いながら、ドンドンと戸を叩く。

しばらくして「なんだい?こんな朝早く・・・」と家のおかみさんが

眠たそうに目をこすりながら出てくる。

「昨日は泊めて下さって、ありがとうございました。

なんのお礼もできずに済みません。

代わりといってはなんですが、

この猫を飼ってはもらえませんか?」

と黒猫を見せながら頼むと、

「あら、これはうちの猫だよ!

行方不明になってたんだ。

どこで見つけたんだい?」

急に目が覚めたのか、

おかみさんは、引っぺがすように黒猫を取り戻した。

「良かった。捨て猫か迷い猫かと思ってたんです。」

「失礼だね。れっきとしたうちの飼い猫だよ!」

と憤慨してたけど、

気を取り戻し、ユリウスを見つめた。

「まあ、ともかくお礼を言うよ。

見つけて連れて来てくれてありがとう。

そういえば、あんた連れが居るって言ってたよね。

その子はどこに居るんだい?」

「今、呼んで来ます。」

慌ててユリウスはベラの元に戻った。

「あの猫、ここの猫だったんだって!」

「そうなの。良かったじゃない。」

ベラは、そう言いながらもあまり嬉しそうではない。

なんか複雑な心境らしい。

「ここのおかみさんがベラに会いたいってさ。」

「そう。何の用かしら?」

「泊めて貰ったんだから、ベラもお礼言えよ。」

「そうね・・・」

人見知りするベラはあまり気が進まない。

「まあまあ、俺が一緒だから大丈夫だよ。」

「一人だって平気よ!」

強がり言ってるが、初対面の人と話すのは苦手なのだ。

ユリウスの後ろから、黙ってついていくベラ。

「お待たせしました。こいつが連れのベラです。」

おかみさんがジロっとベラを一瞥した。

「ふーん、こんな年端もいかない娘が旅だなんて危ないね。」

「俺が居るから大丈夫ですよ!」

ユリウスがナイト気取りで言った。

「何言ってんだい!あんただって、

同じような年の小童(こわっぱ)じゃないか。」

そう言われて、シュンとしてしまった。

「情けないねえ、ここは言い返すところだよ。

男なら、ちゃんと女を守ってやりな!」

肝っ玉母さんのようなおかみさんだ。

「そうですよね。頑張ります。」

急に元気になるユリウス。

ベラは他人事のように、そっぽを向いていた。

「ところでどこまで旅するんだい?」

おかみさんはベラに向かって尋ねた。

自分に振られたことに気づかず、

無視していたが、

「あんたに聞いてるんだよ!」

と肩を叩かれた拍子に、

羽織っていた絹のおくるみがハラリと滑り落ちた。

それを拾い上げたおかみさんが

食い入るように見つめていた。

「これ、どこで手に入れたんだい?」

真剣な口調に、ベラは戸惑いながらも、

2009-01-20 07:39:44

「育ててくれた祖母が

私をうちに連れて来たときに

くるんでいたおくるみだそうです。」

と言った。

「そう・・・」返事は、ただそれだけ。

「何か知ってるんですか?

私の両親は、隣国に居るって、

祖母が死ぬ前に言い残したんです!」

おかみに向かって、言葉がほとばしり出た。

ベラの勢いに驚いたように、後ずさるおかみ。

「そうなの。私が知ってるのは、

この絹のおくるみが隣国のものだということと、

高貴な家でしか使用されてないということだけかな。

もしかしたら盗品?なんて疑ってしまったんだよ。

済まないね。」

「いいえ、こちらこそ、済みません・・・」

失望に肩を落とすベラを慰めるように

おかみさんは言った。

「良かったら、関所を通れるよう

知り合いの役人に手紙を書いてやるよ。

事情も説明するから、きっと通してくれるだろうさ。」

「ありがとう!おかみさん。」

ベラがおかみの駆け寄ると

「助かりました!通行手形持ってないから、

どうしようかって言ってたところだったんです!」

ユリウスもおかみの両手を取って、喜んだ。

「そうかい。私にはそれくらいしかしてやれないけど、

頑張って両親を見つけるんだよ。」

とユリウスに手を取られて振られながらも、

おかみはベラに向かって言った。

「あんたもちゃんと見守ってやるんだよ。

でも、いい加減にこの手をお放し!」

とユリウスの手を振り切った。

慌てておかみの手を離したユリウス。

「すみません、つい嬉しくて・・・」

「いいよ。これから手紙を書くから、

ちょっと待ってておくれ。」と言い残し、

おかみは家の中に入っていった。

ユリウスとベラは顔を見合わせ、微笑んだ。

「黒猫は不吉の印というけど、

私達には幸運の印だったわね。」

「そうだな。本当に良かった。

俺がこの家に黒猫を連れて来たお蔭だぞ!」

とユリウスが得意がると、

「何言ってるのよ。私が

旅に連れて行けないって言ったからでしょ!」

とベラが牽制をかける。

それでも、内心ベラはユリウスに感謝していた。

顔や言葉には出さないが・・・

「手紙を貰ったら、早く出発しよう!」

「続き」





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