文筆人･藤井建司のつぶやき

飲み会なんかがあると、ときどき料理を取り分けてくれる親切な女がいる。
それはなかなかポイントが高い。
だけど、やり過ぎはダメだ。
こんなことがあった。
みんなに感謝されながら料理を取り分けていた女が、ひととおりの料理を取り分けてしまったのだが、もっと取り分けて感謝されたいという気持ちがそうさせたのだろう、刺身の盛り合わせを小皿に取り分けて「はい、これ」「どうぞ」とみんなに手渡し始めた。
きれいに盛りつけられていた刺身が、三切れ、四切れ、ぺちゃっと小皿に取り分けられたとたん、ものすごく貧相になって、おいしくなさそうに見えてしまった。
手渡されたやつらも一様に暗い顔をしていた。

そんなことがあった。もう随分昔の話だ。でも、妙にはっきり覚えているのは、それぐらい印象的な出来事だったということだ。
忠告しておこう。みんなも、やり過ぎには気をつけたほうがいい。