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──見てんか、見てんか。これがあんたぁのまぶた刺した、にっくきはちの針だがな。
みくまりがまじめな顔をして、手にしたそれを小夜の目の前にちらつかせた。 皆も集まってきて、みくまりがご丁寧にも採集しておいてくれた毒針を、しげしげと眺めた。 登校の朝である。 ──あッ、オタマジャクシだが! 今度は向こうの方で、めっかちが突然声を上げて道ばたの水たまりをのぞきこんだ。 ──あほ言うな。この時期に・・・。 子供たちがそっちにも駆け寄り、登校の列が乱れた。 そうやってつぎつぎに集落の家をまわり、分校に通っている仲間を誘い出すと、田んぼのあぜや牛舎の横手だとかにまずたむろって、登校するまでの時間をたっぷり遊ぶ。 そしていいかげん遊びつかれたころ、 ──おーい、たいがいにせんと遅れるだぞ。 と武人の声がかかる。 ふたたびランドセルをカタカタ鳴らしながら、山道を下り始める。 回廊のようなまがりくねった道を、約2キロほど歩いて分校に着く。 道すがら、山菜採りをする村の人に、 ──おはようさーん。 皆で大きな声であいさつする。 ──向こうに蛇いちご、ようけなっとっただよ。 とのおばさんの報告に、またして皆で山に分け入っていちご採りに熱中。 時にはまむしをつかんで来る子もいる。 そのころになると、学校をめざしてそれぞれ同じくらい離れた集落の子供たちが、山道に姿を見せはじめる。 他の集落と合流すると、子供たちはお互い黙り込んでしまう。 ちょうど他人と出くわしたエレベーターの中の心理のようなものだ。 そしてこの沈黙は、学校の門を入って、集落単位の集団登校の輪が解かれるまでつづく。 本日の日記ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 本人が四日分の本文を書き残して旅行中なので、更新の手続きを代打でしている者です。 まだまだ不慣れで、小夜子姉貴のようにはいきませんが、どうぞどうぞあたたかくお見守りくださいませ! 実は、私、一度小夜子姉貴に鳥取へ連れて行っていただいたことがあります。そのときの風景と人々の温かさは素敵な思い出になっています。鳥取が大好きになりました。 この物語を読むとそういう体に染み込んだ感覚が思い出されるんですよぉ。 明日は、●小夜の学校について●です。どうぞ、タイムスリップしにいらして下さいね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年09月15日 18時47分33秒
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