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山口小夜の不思議遊戯

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2006年06月22日
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 雨の中、靴音が近づいてくる。
 「なにしているの?」
 落ち着いた紺色のバーバリー・チェックの傘の下から、匂うばかりの東洋美人顔が覗き込んできたとき、不二豊は覚悟を決めた。

 やるっきゃないでしょ。

 気のきいたナンパトークは自信ナシだが、この時のために練り上げた脚本はスタンバイOKだ。
 「すいません、通り道ふさいで。ちょっと失くしものを探していて」
 二時間待機した暗がりで、豊はゆらっと立ち上がる。
 視線が合った瞬間、なぜだかピトンと粘着質の触手に捕獲された気がした。やはり危険なターゲットなのか。
 絶世の美女、アインシュタイン級の頭脳だといっても、相手はある種の変質者。とんでもない曲者なのかもしれない。

 呑まれるな。一度引き受けた仕事だ。
 もう引き返せない──。

 ───

 「盗聴器が二ヶ所、盗撮用のカメラは部屋のエアコンの中に。おれが・・・じゃなかった。私が発見したかぎりは──ですね」

 これが前日のことだ。
 豊はロウテーブルに行儀悪く脚を上げて、調査レポートを読み上げていた。
 「教授はストーキングされてます。たぶん毎晩」
 「そんなことは知っている」
 相手は眉をひそめて、実年齢よりはずいぶんと若く──十代にも見えるこの日本人の留学生を睨んだ。
 「ストーカーの正体が“あいつ”だというのも知っている。いまだにわたしの同僚で、なにくわぬ顔で研究室に来る」
 「そして最近まで、あなたの研究助手もしていた・・・・あなたに確たる理由もなく冷たく助手の枠を外されたのを恨んでいる、と」
 「だからってしつこく脅迫状を送りつけたり、無言電話かけたり、留守中に忍び込んでわたしの トランクスを5ミリ角に切り刻んでいいというわけじゃない! 留学早々に、しかも他学部の教授からの頼まれごとだからといって、いいかげんに思っているんじゃないだろうねッ!?」

 だんっ!
 苛立った教授は、テーブルを叩いた。

 「学生たるもの、師には絶対服従のはずだ! これが中華伝統の思想だ」
 そんなこと仰るならば、他の学生に鞍替えすればいいようなものだ。なにしろ豊が留学のためにここ北京に居を移してから、ひと月ちょっと。生活の安定もへったくれもないが、はなから留学生に対する教授たちの依頼事項は多い。留学生が引っ張りだこというのは、天安門事件以来、一般学生が信用ならぬという、大学構内が不穏な証拠なのだろうが。

 「まあ、いい。とにかく、だ」
 依頼人は髪を撫で上げ、留学生楼にある豊の部屋をじろりと見渡した。
 あまり、いい感じのするヤツじゃない。
 王志軍とかいう名で、眼鏡をかけた五十代半ばの男だ。北京大学でも優秀な教授らしい。そりゃインテリだろうけど、傲慢でおまけにケチっぽい。
 豊がストーカーの立場だったら、こんな野郎には付きまとわない。
 「・・・・とにかく、きみはまだ留学して日が浅いから、面も割れていない。ゆえに、わたしはこの件においてきみに白羽の矢を立てたのだ。なんとかきみが動いて、さっさと馬鹿な行為をやめさせてくれ。わたしの身のまわりのごたごたが大学にバレないうちに」
 「わかりましたって!」

 自分が被害者であるのに、大学にバレたくないというのが相当アヤシイ。
 なんか脛にキズ持ってるっての、自分でもわかってんじゃねーの、コイツ。





                 次回は●冷たいカルテ●です。
                 弟くん、国際電話でもいきなり怒られてます(笑)。


 本日の日記------------------------------------------------------

 皆さま、ご心配いただき、ありがとうございます。
 鬼の霍乱の症状は、おかげさまでだんだんに持ち直してきました。
 ただし、咳は後もうちょっと、というところです。どうか皆さまもくれぐれも体調にはお気をつけください。

 『趣味ではなく芸であること』
 病身なのに、なぜ更新を始めるのか──疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
 作品を公開している私にとって、文章を書くということは‘趣味’ではなく‘芸’です。‘芸’なので、なにを措いても「文章を書くこと」が生活の大部分を占めることになります。
 また、一日書かないと、それまでのペースを取り戻すのに三日かかるので、取りかかった作品は完成するまでペースを落さずに書き続けます。毎日書かないと、頭の中で物語が張りをなくすのです。世間では「肩に力の入らない文章がよろしい」とされていますが、この「余分な力の抜けた」状態とは、私にとっては「全力を尽くしている」状態と紙一重です。全力疾走をしていないと、「力を抜いている」状態が掴めないからです。
 それはそれとしても、ブログは私にとってまさにアイドリングです。ここで書き続けることをやめてしまうと、おそらくは三校が到着した後、指が固まってしまって思うさま書けなくなっていると思うのです。本番を書くとき、すぐに設定を切り替えて書き始められるのは、ブログで指慣らしをしているおかげです。三校を待つあいだ、芸が錆び付かないよう、やはりこうして書き続けることに致します。どうか皆さま、よろしくお付き合いいただければとお願い申し上げます。
 今回、しずさんがしゃべりまくります。舞台は豊の留学先の北京ですが、そこにしずさんが持ち込んだ大ネタが絡んでまいります。まずは次回更新、お楽しみに!

 さて、病身の私に滋養をつけさせるために、オットがみょ~なクスリを買ってきたのです。見たこともない品物で、なんだかアヤシイ感じがしたので、
 「症状をどんなふうに説明したの?」と聞いたら、
 「徹夜明けのホストが死にそうなほど疲れている時に飲む栄養剤を下さい」って言ったら、その漢方薬局の奥の間から出てきたモノらしい・・・。
 二錠で2800円って、○○アグラの姉妹品のように高いです。

 話は変わりますが、アルファポリスの編集部からオットに用事があったらしく、メールでやりとりをしたようです。その後、編集者から「ご主人様、すごく愉快な方のようで(笑)」とのメールが・・・。オットよ、編集者になにを言ったんだ(不安)。

 それはともかく、中田よ、FWに入ってくれーっ!!!
 私、さほどのサッカーファンではありませんが、それでも高校生の時、体育委員を歴任していた折、「マタイ」「マルコ」「ルカ」「ヨハネ」の四大福音史家の名前を冠したグループリーグを開催した覚えがあります。「女子がボールを蹴るとは何事」とおかんむりだったシスターが、よくこの名前を許してくれたもんだ・・・・今でもナゾではあります。

 微熱ゆえ、少々話題がとっちらかっていることが否めませんが、次回はおそらく三校到着のメドが立ったご報告がてら、『現代幼稚園事情』についてお話させていただければと思います。
 ほんと、びっくりするくらいに便利な世の中になりました。


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  ちょっと貼ってみました。どこにすっ飛ぶのか・・・。よろしくお願い致します☆





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最終更新日  2006年06月22日 12時20分46秒
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