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カテゴリ:文学・芸術(絵画・音楽・演劇)
著者の中村 吉広氏は1958年、福島県いわき市に生まれ、東洋大学哲学科を卒業しました。在学中、欧州文化の理解のためにイスラエルのキブツへ行くなど行動派です。その後、海外放浪を続け、帰国後、塾講師、塾経営などを経て、日本語教師免許を取得しました。チベット仏教の研究を進めるうちに、中国・青海省チャプチャの青海民族師範専科学校に語学留学します。2001年から日本語講師に就任。2002年3月、帰国しました。 本書は著者のチベット体験を克明に書いたものです。著者は、チベット語と日本語が両方とも膠着語(ヨーロッパ言語のように語形変化によらず、「てにをは」等の助詞によって言葉をつなぐ言語)であることを生かした教育方法で驚くほどの効果を挙げます。生徒たちは会話中心の発想だったのですが、著者の文章・文法中心の教育が成功したのです。最後に生徒たちは夏目漱石「坊ちゃん」の半分をチベット語に翻訳することに成功します。4年間の生徒と著者、チベット人教師と著者との心温まる熱い交流が書かれています。生徒たちの日本語学習は、チベット人としてのアイデンティティーを確かめるのにも役立ったようです。 その他、言語・文化・宗教・発想について日本とチベットの比較が述べられています: チベット語は文語と口語に別れ、文語は書き方が確立していますが、口語は地域によって異なりさらに書き方も確立していないようです。さらに漢化政策により中国語がメインとなり、チベット語は廃れ行く運命にあるようです。 日本の仏教は日本独特でアニミズム的なところがありますが、チベットの仏教はインドの仏教と近く、たとえば動物を擬人化するような発想はまったくないのです。 改革開放政策といっても、経済的合理性を無視したノルマ主義が蔓延しており、かならずしもうまくいっていません。教員を育成しすぎて、大学を卒業しても教師の職を見つけることが出来ない人が多いようです。 現在著者は「旅限無(りょげむ)」なるブログを開設しています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 6, 2006 09:14:12 PM
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