久しぶり
夕方電話があり、「はい双葉です。」と応答すると「その声は福島先生ですね。お久しぶりです。」と…。名乗られた苗字にピンと来ない。それでも、顔を見ればわかるだろうと「暇してるからおいでよ。」と言う。電話を切った後も考え続ける。「こうすけか!」コウスケは、進路を考えるとはという話をするときに今でもよく話題に挙げる生徒の一人だ。自分の好きなことから入り、好きなことができる大学を選び、大学の格なんてものを飛び越えてマツダ本社に採用された。マツダに入った時に連絡を受けて以来だから、10年ぶり以上になる。結婚して子どもが2人、今でも趣味としてバイクレースに出てるんだそうだ。あのF1大好き、メカ大好き小僧が立派になった。アメリカに2年の赴任を命じられたそうで、そのビザをとるための帰省ついでに前々から寄ろう寄ろうと思いながらも、足が遠ざかっていた塾の門をくぐったということらしい。昔話と今の話で2時間ほど話した。当時のまい先生の裏話も少し聞けて、心がほんの少し暖かくなった。昔の塾生と話しているとやはり思う。こいつの子どもなら教えたいなと。しかし、そう思う生徒ほど松阪にはいないことが多い。それが、田舎の塾の宿命といえば宿命。三重に日本を代表する教育機関も企業もない以上、力をつけた生徒は県外に旅立っていく。だから塾で講師になってほしい、親子2代にわたって付き合いたいと思う生徒ほど近くにいなくなる可能性が高くなる。